ワインオセロ
読んで戴けたら嬉しいです。(* ´ ▽ ` *)ノ
ワインオセロはこの場合、小さなカップにロゼワインと白ワインを入れて、オセロの要領で駒に見立て、例えば夕霧がロゼで白に挟まれると挟まれた数だけカップのロゼワインを夕霧飲み干さなければならないと云うものである。
初めの内、二人はゲームに集中していたが、ゲームが進むに連れて酔いが回って陽気になって行った。
ゲームは互角に進んで、三十分でワインを一本飲み干そうとしていた。
普段から仕事で飲み慣れている暁人はワイン一本空けたくらいではびくともしない。
しかし問題は夕霧だった。
暁人の考えではゲームの決着が着く頃には、夕霧はヘベレケになっている予定だった。
だが夕霧はヘベレケどころかケロリとしている。
『なんでこいつ、こんな平気なの? 』
暁人の脳裏に夕べの記憶が甦る。
「あああーーーーーっ!!
思い出した! 」
急に暁人が大声を上げるので、戦術を夢中になって考えていた夕霧は飛び上がって驚いた。
暁人は思い切り夕霧を指差した。
「夕べオレん家でテキーラ、瓶一本、水みたいに飲み切ってたよね! 」
夕霧はまたもきょとんとしている。
「なんでそんなに強いんだよ? 」
夕霧は自信無げに言う。
「血·······筋········? 」
「どおゆう血筋だよ! 」
と、暁人は突っ込む。
「アタシぃ、二丁目でホステスしてたんだもん」
暁人は腕を組んだ。
「なるほど、それで飲み慣れてるって訳だ」
「アタシぃ、どうしても男の服着て普通のリーマンするのが嫌だったから、就職探してる時家飛び出したんだ
本当のアタシになる為に」
夕霧があまりに真顔で話すので暁人も真面目に言った。
「それで二丁目には本当の自分は居た? 」
夕霧が俯いてしまったので、飲み屋街で生き抜こうとすればそれなりに嫌な経験もするだろうと察して、暁人は黙ってオセロの次の手を打った。
夕霧はそれ以上訊こうとしない暁人の優しさに微笑んだ。
「アキト優しいんだね」
「どうだか·········」
暁人は肩を竦めて笑った。
「んもう、アキトいい男過ぎ!
鼻と額に絆創膏貼ってても、それが決まっちゃうくらいにはいい男! 」
夕霧はぴょんぴょんと身体を跳ねさせながら言うと「そうお?」と暁人はまたその気になって、頭を掻いてデレた。
バカップル決定、あばたもえくぼとはよく言ったものである。
結局、ワインを飲み干してもゲームの決着は付かず、二人は世間話をしながら、おのおの好きな酒を飲み始めた。
「ねえ、ただ飲むのもつまんないからどっちが強いか飲み比べしない? 」
「え、アキト大丈夫?
アタシぃ、強いよお」
『やっぱり、蟒蛇だったんだ』
暁人は丸めていた背中を伸ばし言った。
「へえ、言うじゃん
現役ホスト舐めんなよお」
そう言いながら暁人は目を輝かせテキーラをグラスに注いで夕霧に渡し、もうひとつ注いで差し出した。
夕霧も目の色が変わる。
「解った!
全然負ける気がしないけど」
そう言って夕霧は差し出されたグラスに自分のグラスを軽くぶつけた。
暁人が飲んでいる時は夕霧が囃し立て、夕霧が飲んでいる時は暁人が囃し立て、ノリはすっかり宴会だった。
二人は勢いに乗って次々缶や瓶を空けて行き順調にべろんべろんになって行った。
暁人が言う。
「ゆうりりぃ、オカマにしておくのはぁ勿体ない飲みっぷりらなあ」
既に呂律がおかしい。
身体をゆらゆらさせながら、夕霧が言う。
「アキトこそぉ、アタシに太刀打ちできるなんて、中々らよお
これでもぉ現役で働いてた時はぁ、誰もアタシに敵う人いにゃかったんらからあ」
「よぉし、相手にとって不足はなーい!
その前に出してくる」
ふらふらとたちあがった暁人は既に足腰が頼りなく、夕霧は見ていられなくて、のろのろと立ち上がり暁人の身体を支えた。
「らあいじょおぶう、アキトぉ? 」
「なんのお、まらまらあ! 」
暁人が両手を勢い良く上げると二人ともバランスを崩しひっくり返った。
「ってえーーぇっ!
なんて日らよお、全くう
夕霧には投げ飛ばされるはさあ、顔面は打つしい、ひっくり返るしい」
「あははははあ、ごめんなひゃーい」
起き上がろうと手を床についた暁人は胃の中の物が逆流して込み上げてきた。
慌てて四つん這いのままトイレに駆け込んだ。
「あれえ、アキトはやーい」
よろよろと夕霧がトイレに辿り着く頃、暁人は便器に顔を突っ込み、げえげえと吐いてる真っ最中だった。
「あらーぁ············」
夕霧はその場に跪くと暁人の背中をさすった。
「らあいじょうぶう、アキトぉ? 」
暫く暁人の背中をさすっていた夕霧だが、やがて力尽きて暁人の背中を枕に寝落ちした。
既に暁人も便器にしがみつき力尽きている。
この姿を見て誰が暁人をイケメンホストと思うだろう。
なんともイケメンの残念な光景である。
つわものが夢の後、ハート模様のピンクの絨毯の上には食べて飲んだ酒瓶やお総菜の容器が散乱していた。
ベッドだけがすんと空のまま朝を迎えて行く。
読んで戴き有り難うございます。(*- -)(*_ _)ペコリ
今、昔描いたマンガを小説にしているんですけど、歳をとったなあと実感しました。
ギャグが昔は軽快でした。
マンガ読むの苦手だけど、読まなきゃダメかなあ。
銀魂でもよみたいなあ。
ネーム死ぬほど多いらしいのですが、ギャグ素晴らしいですもんね。
年齢、最大の敵かもしれないです。