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ピンクな夜に囁いて  作者: 楓 海
3/12

ドア

 読んで戴けたら、嬉しいです。( ´ ▽ ` )ノ

 夕霧が食事を作っている間、暁人は部屋から出る方法を考えあぐねた。


 待ち伏せて夕霧を力ずくで押さえ脱出するのは危険極まりない。


 また壁に貼り付く事になる。


「黒帯って反則だろーーー·······」


 暁人は頭を抱え込む。


 時間は刻々と過ぎて、出勤時間は迫って来る。


 暫くそうしていると、何処かに部屋を出るヒントは無いものかと再び部屋を見回した。


 そして目の前に広がる壁一面の鏡に目を留めた。


「この鏡、何かでぶっ壊したら凄い音出るんじゃないか? 」


 そしてドアを見た。


 暁人の思い付きはこうである。


 鏡が割れる音に驚いた夕霧は慌ててこの部屋に飛び込んで来る。


 ドアの横で待ち伏せて、ドアが閉まる前に部屋を出る。


 お(あつら)え向きにテーブルの傍に椅子が置いてある。


 暁人は二脚ある椅子の一つを持ち上げ、鏡に近付き頭上に掲げた。


 思い切り投げつけようとするが、直前で動作が止まる。


 脳裏に、床に散らばるご飯を拾う夕霧のしょぼくれた背中が浮かんだ。


『オレがここを出て行ったら、すげえしょぼくれるんだろうな·········』


 暁人は激しく頭を振り、気を取り直して再び椅子を振り上げた。


 しかし、畳1畳分も有りそうな鏡が4枚。


 鏡を見ている内に結局椅子を床に置いてしまった。


『こんなデカイ鏡割ったら、高そう···········』


 暁人は椅子の背凭れに伏して自分の貧乏性を呪った。


 一晩で百万単位の売り上げを叩き出すホストと云う職業にありながら、セコい暁人だった。


 ここだけの話だが、暁人はホストと云う仕事で大物になることは無いだろう事は想像に難くない。


「オレは、セコいんじゃない

 オレはエコロジストで、地球資源問題に正しく向き合っているんだ」


 と、訳の解らない持論に満足して頷いた。


「アキト、何してるの? 」


 暁人は突然掛けられた声に酷く驚いて飛び上がった。


 声の方に振り返るとそこにはピラフとスープをトレイに載せて突っ立っている夕霧が居た。


 夕霧はテーブルに食事を並べながら、無表情で言った。


「その鏡、防弾になってるから、ちょっとやそっとじゃ壊れないんだよ」


 暁人の心に一陣の風が吹き抜ける。


 鏡を壊そうとした自分が虚しかった。


「それはご親切にどうも·········」


 暁人は拳を握り締め思った。


『がんばれ、オレ! 』


 そんな暁人の心情を知ってか知らずか、夕霧は嬉々としてテーブルに着き言った。


「ねえ、早く食べよう」


 暁人は夕霧が男であるのを思い出した。


 暁人は慌てて言った。


「早く食べようって、一緒にい? 」


 夕霧が不安気に言う。


「アタシと食べるのは嫌なの? 」


「嫌じゃ無いけど無理」


 夕霧は眉間に深い皺を寄せる。


「どうしてえ? 」


「オカマとは食べられないよ」


「差別、さべーーーつ!!

 トランスジェンダーバカにしてると、いつか大きなバチが当たるんだからあ」


 暁人は話がややこしくなる前に白状した。


「前にオカマに犯されそうになって以来、オカマの傍に寄っただけでジンマシンが出るんだ」


 夕霧の顔が曇り、目にいっぱい涙を溜めて言った。


「アタシがアキトにそんな酷い事すると思うの? 」


『いや、監禁は酷い事にならないの?

 さっき投げ飛ばしたよね? 』


 と、思ったが言える雰囲気では無かった。


「アキトはアタシが嫌いになっちゃったの?

 だって昨日はジンマシンなんて出なかったでしょう? 」


 夕霧は涙を零し、指先で頻りに拭っている。


 暁人は狼狽する。


『どうしよー、泣かしちゃったよお』


 暁人は夕霧を制するように手のひらを立てて言った。


「泣くな!

 お願いだから泣かないで! 」


 夕霧は咽びながら泣くのを止め、哀しそうにテーブルの上を見詰める。


 居たたまれなくなった暁人は言った。


「解った!

 解ったから!

 い、一緒に食べるから········」


 殆どやけくそである。


 横を向いてにんまり笑う夕霧の顔を暁人は知らない。


 暁人は、テーブルの前にずらそうとして椅子を持ち上げるが、肩の痛みを感じて落としてしまう。


 それを見た夕霧は慌てて暁人の背後に回って、首と背中が赤く腫れているのを見付けた。


 夕霧に投げ飛ばされてできた怪我だった。


「たあいへん!

 真っ赤っか!

 手当てしなくちゃ! 」


 夕霧は飛ぶようにして部屋を出て行く。


「誰のせいだよお···········」


 暁人は再び時計を見る。


 午後6時を回っていた。


 暁人は更に焦った。


 店長の、怒りの大魔神の様な顔が目に浮かぶ。


 暁人は思わず震え上がった。


『早く何とかしないと·······マイナス200度の冷酷な瞳で凍らされる········』


「しゃーない、今度こそ··········」


 仕方なく暁人は、夕霧が部屋に入って来た隙を狙って閉まる前にドアを掴み脱出、という企てを再び実行することにした。


 暁人はドアの傍で夕霧が来るのを待った。


 やがてパタパタと言う夕霧の軽快な足音が近付いて来る。


「遅くなってごめんね!

 なかなか湿布が見付けられなかったの! 」


 と言うセリフと共に思い切り開かれたドアは、傍で体勢を低くしてスタンバっていた暁人の顔面を真正面から勢い良く直撃した。


「アビョエッ!! 」


 顔面に衝撃を受けた暁人はそのまま後ろにひっくり返った。


 暁人の人語を無視した奇妙な悲鳴に振り返った夕霧が悲鳴を上げた。


「きやーーーーっ!!

 アキト、大丈夫う!! 」


 ひっくり返った暁人は顔面を押さえ、おおよそ人とは思えない叫び声を発しながら、足をばたつかせた。


「アゲラリヘガモゲリーーーーっ!!!! 」


 もはや人間の人知を越えた叫びだった。





 

 読んで戴き有り難うございます。m(_ _)m


 今日は寝不足で買い物に出掛けて、帰って夕食終わってからあの世に旅立ってました。笑

 買い物に行かなければならなくて、後書きが遅くなってしまいました。


 またのろけていいですかね。

 昨日、Dexcoreの新曲の話をしたのですが、その新曲に架神くんの舌打ちが収録されてるんですよお。

 舌打ちがこんなカッコいい奴、初めて見ました。(///∇///)

 そのカッコいい架神くん、楽器一通り演奏できるみたいです。

 カバーの動画よくあげてるのですが、クレジットがオール架神くんでした。

 本当にロックに命かけてるんだなあ、と嬉しくなりました。

 架神くんと同じ名古屋出身の先輩バンド、lynch.の葉月くんもギターは勿論ベースからドラムまで弾けるんですよね。

 名古屋のロック好きはめちゃくちゃ気合いが入ってるんでしょうか。

 名古屋、どんな街なんだろー❔

 喫茶店やカフェが多いとか聞いたことありますが、Dexcoreもlynch.もめちゃ良質なロックバンドで、そんな良質なロッカーを排出している街、凄く気になります。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど……名古屋のあの特異性はロックだからなんですね(´艸`*)理解しました(笑) 人はちょっと……変わってますけど、良い街でしたよ~。
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