マジビンタ
読んで戴けたら、倖せです。(* ´ ▽ ` *)ノ
愛してるゲームは二人が向かい合って片方が愛してると言い、先に照れた方が負けというお手軽ゲームである。
夕霧が突然叫ぶ。
「最初はグー、じゃんけんぽん! 」
反射的に暁人はパーを出してしまった。
夕霧はチョキを出している。
「じゃあ、アタシ先攻ね」
急に真顔になり夕霧は暁人の目を見つめる。
「ちょっ、待って········」
暁人は腰に巻いていた毛布をたくしあげた。
夕霧が暁人を指差して笑う。
「あー、アキトもう照れてるう
アキトの負けえ! 」
暁人は身体をしならせた。
「オレ、これすっげえ、よえーのよ!
店のお客に時々やらされるんだけど、オレ連敗ゼロ勝なの! 」
「やったあ、連勝間違いなし!!
やろうやろう! 」
夕霧は勢い良く上に上げた手を上下させて気合いを入れた。
暁人は頭を抱え込んだ。
「解ったあ、お手柔らかにね」
暁人は気を引き締める為、腕を前後させて、頬を両手で叩いた。
「っしゃあ、どっからでも掛かって来い! 」
夕霧に向き直ると夕霧はニコニコしてこちらを見ている。
「じゃあ、行くね·······」
夕霧は潤んだ瞳で暁人を見詰め言った。
「愛してる··········」
真顔で心を籠めるようにして言う夕霧にドギマギしてしまい、暁人は後ろにひっくり返る。
「ダメだーーーあ········
めっちゃ、照れるう! 」
夕霧が胸を当てころころわらっている。
「アキト、本当に弱いんだねえ
これは良いもの見れたかも········」
「ひとごとだと思ってえ! 」
起き上がった暁人はむくれっ面をしていた。
そんな暁人の前に正座して座り直した夕霧は顔を輝かせている。
「アキトの番だよお」
「やるのお········? 」
暁人は恨めしそうに言った。
「アタシにだけ言わせるなんてずるいーい」
暁人は、にやけそうになる顔をまた両手で叩いて気合いを入れた。
このゲームの肝はやはり真面目に愛してると言わなければならない処である。
暁人は綺麗な二重の夕霧の目を見詰め、覚悟を決めて言った。
「愛してる·····················」
夕霧の顔がだんだん歪んで、大きく見開かれた目から大粒の涙が溢れ出した。
驚いたのは暁人である。
「え?
あ?
オレ、なんか間違えた? 」
夕霧は俯いて首を横に振り、子供のように手のひらや甲で溢れる涙を頻りに拭っている。
「どっか痛くなった? 」
暁人が心配して顔を覗き込むと夕霧は手を涙でびちゃびちゃにしながら、健気にも笑顔を作って暁人に向けた。
「ごめんね、言い出したのアタシなのに·········
アキトに愛してるって言って貰えたら、どんなに倖せな気持ちになるだろうって思ったのお
でも、嘘の言葉はやっぱり嘘だから、余計に哀しくなってぇ···········」
そう言い終えると夕霧は堪え切れず咽び泣いた。
細い肩を小刻みに震わせて手で頻りに涙を拭い、震える声で泣いている夕霧を見ていると、暁人は胸がきゅうっと痛んで、思わず夕霧を抱き寄せていた。
夕霧は暁人の胸で堰を切ったように声を上げて泣き出した。
「アタシのバカあ、どうして男になんか生まれて来たのお··········」
暁人は慰める言葉も思い付けず、どうすることもできなくて、ひたすら夕霧の背中を撫でる事しかできなかった。
暫くそうしていると、自然と落ち着きを取り戻し、泣き声は次第に止んで行った。
「ティッシュ················」
夕霧はしゃくりあげながら鼻声で言う。
暁人は慌ててティッシュの箱に手を伸ばし、夕霧の顔の傍に持って行く。
夕霧は俯いたまま一枚取るとチーンと可愛い音を立てて鼻をかんだ。
「夕霧············」
夕霧は目を伏せたまま顔を上げる。
「嘘で言ったんじゃないよ············」
夕霧は視点を暁人に定め、小首を傾げて暁人の次の言葉を待った。
暁人は夕霧の背中に回した手に力を込める。
「ずっと夕霧のこと、気になってたんだ
ずっと夕霧が好きだった·············」
夕霧は大きく目を見開いて暁人の目を見詰めていたが、次第にその目は険しくなって行った。
夕霧の手が大きな弧を描いて、暁人の頬をひっぱたいた。
「ひどい、アキト!
どうしてそんな酷い嘘言うの?!
そんなの嘘に決まってるよ!
好きならどうしてアタシはずっとアキトの傍に居させて貰えなかったの!?
どうしてアタシはアキトをいつも待ってなきゃならなかったの?! 」
夕霧の勢いに押されて暁人は二の句が継げない。
目で見て夕霧が酷く興奮していのが解るくらい、呼吸が乱れて肩が上下していた。
「好きって言ったらアタシが解放するって思ったの?
アタシは、身体が男なんだよ!
そんな安易に好きになれないって、アタシにだって解る!
好きって言われてそのまま信じ込むほど、アタシそこまで単純に生きてない!
酷いよ、アキト·············
アキトがそんな酷い事できる人だとは思わなかったよ!! 」
夕霧は呼び止める間も無いほど素早く部屋を出て行ってしまった。
急にひっぱたかれて、驚いて硬直していた暁人だったが一人取り残され、呆然とたたかれた頬を手で撫でた。
読んで戴き有り難うございます。(*- -)(*_ _)ペコリ
いよいよ明日で完結です。
この作品はずーっと中々書けない状態が続いて、苦手意識がめちゃめちゃあった作品で、でもお蔵入りには絶対したくなかったので、なんとか書き上げたと言う作品なんですよお。
取り敢えず書き上げられて、投稿できて良かったですう。
うちの旦那180センチ身長あって、娘たちはそこに似てくれたので、二人とも脚が長いんですよお。
この間娘の自転車借りたのですが、爪先しか着きませんでした。
チキショー、どうせちんちくりんだよ!
と、一人でふて腐れながら自転車こいでました。笑