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だから、私は結婚したくない

作者: idle

気持ちをまとめたくて小説を書きました。


東京から、従兄弟が帰省した。

2年ぶりの再会で、家族総出で、帰省を祝った。


従兄弟は、まだ小学生で、

その頃の2年は私達が思った以上の成長をもたらしていた。


それは、身体が大きくなったという物ではない、


精神……心の話だ。




2年という月日は、

高校生である私にとっても、重要な意味を持っている筈だった。


私も従兄弟同様に成長している、と思っていた。



だが、それは、幻想でしかなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


年末の帰省は、2泊3日という短い時間であったが、

双方、共に楽しめた時間であった。


只、母にとっては、不満が残る結果であったようだ。


従兄弟家族の前では、

不満のある態度を見せることは少なかったが、

従兄弟と会う時間を極力減らそうとしていた。


兄が受験生であったのだ。


感染症を警戒していた母にとっては、

東京からの帰省は、止めて欲しかったようだった。


その一方で、

祖父母の「従兄弟の無事を確認したい」という気持ちも

分かるので、強く反対出来ずにいた。


そんな中での帰省であった。



帰省は、何事もなく終わった。


双方の無事も確認でき、

また、久しぶりの交流を楽しむことが出来た。


家は、田舎にあり、周りから帰省について

どうこう言われるのを警戒していた親達だったが、


さすがに、帰省中に

真っ向から文句をつけてくる不躾な人は、いなかった。



私にとって事件と呼ぶべき事が起こったのは、

従兄弟が東京に戻った翌日、1月2日の事だった。


その日、母は実家に帰ろうと計画していた。


父の実家は、家の隣にあり、

頻繁にやり取りをしていたが、


母の実家は、少し離れた場所にあり、

何かしらの機会がないと、訪れなかった。


年末年始ということで、母も帰省しようとしていた。


兄は、先に言った通り受験生で、

忙しく過ごしているため誘われなかった。


が、私は特に用事もないため帰省しようと言われた。


私の間違った価値観が、遺憾なく発揮されたのは、このときであった。


私は、この誘いを断ったのだ。


私とて、来年に、受験が控えており

休憩できる時間は、貴重であったのだ。


だが、それにしろ

この時の反応は、最悪であっただろう。




私は、母の提案を無下に断った。

何の気遣いも見せることなく、

母の心情を汲み取るでもなく、

唯々、断っただけだった。



その時の母の気持ちは、如何程の物だっただろうか。


母方の祖父は、もう既に亡くなっており、

実家には、年老いた母と妹のみ。


しかし、家族である私達は、実家に行くでもなく、

何をするでもなく、

只「ゆっくりしたい」というだけで、滅多に行きもしない実家への帰省を無くそうとしている。

昨日まで、父方の叔父を歓待していたというのに。


母は、悲しかったのだろうか、苦しかったのだるうか。

私には、今となっても分からないが、


只一つ云えることは、

その時の私達家族は、歪で、家族とすら言えないような状況であった。



家族と言えないような有様の私たちだが、

実のところ、それ程、家族仲は悪く無い。


今回に関しては、埋め立てて、

もはや隠した私たちですら忘れてしまった地雷を踏み抜いてしまった。

それだけの事だった。


そしてそれは、父にとっても同様であった。

教育熱心な母は、常々厳しかった


それは、自分のためか、私たち兄弟のためか。

今でも理解できないが、

客観的に見て、母が、教育熱心であることは疑いようのない事だった。


そして、幼い私たちは、母程、勉学を重要視していなかった。


単純に周りに流されていただけであるが、

それでも、勉学をしたくないという思いだけは、一人前であり、

それは、母が熱心になれば成るほどであった。


儘ならない事だ。


しかして、その厳しさは増していった。


それに音を上げたのは父であったが


父が何故、あの時音を上げ

そして、母方の実家に離婚の相談に行ったのかは分からない。


離婚という口実で、実家と話がしたかったのか、

本当に離婚したい程、追い詰められていたのか

父にも何かやましい事でもあったのか、


今となってはもう、掘り返すべきでは無い事であり、

真実がどう、とあれこれ考えるべきではないため、

何も知らないふりを貫き鄧してきた。


しかし、父がそれ以降、母方の実家に寄り付かなくなった事を考えると、


いくらかは本気であったのだろう。



そして、もう9年近く埋め立ててきた、この問題は、


今回爆発するに至った。


愚かしい事に踏み抜いたのは、私であった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


誰しもの家族には秘密があるのだろう。


それの善悪はまた別の話であるが、現実問題そうなっている。

少なくとも、私たち家族は


そして、その秘密を白日のものに曝け出してしまった。


「秘密が無くなりいいではないか。」

と思う人に対しては、一言述べたい。


「そうしてみなさい」と

そうできる覚悟があるのなら。





家族とは何であろうか、

恋人は何が違うのだろうか。

それこそ、赤の他人と何が違うのだろうか。


私にはまだ理解ができない。




ただ、今回の事で学んだことがある。


結局、私達は

“家族”という皮を被った“他人”の集合体でしかなかった、という事だ。



子供と親の関係は、夫婦の仲よりも

断然、深い物なんだと

幼い私は、考えてきたが、


...そうではなかった。


子供と親の関係は、

夫婦仲に、大きく批准している。


私達の家族の仲は

そう特段、拗れているとは、感じない。


親が、どのように出会い、結婚したかなど知らないが、

信用出来ない関係になっている現状を見て、


“他人”である事から、抜け出せなかった

と、子供ながらに、容易に想像がついた。


そして、それは子供にも影響したのだと。



家族は、一心同体に見えて

絶妙なバランスの上に成り立っている。



私は、それを考え、見抜けても、

成り立たせることは出来ない。


子供だから

と言い訳するつもりもないが、


私はまだ、“お目出度い子供”でしかない。


そこから、抜け出て初めて、

幸せな結婚が送れる。


幸せな結婚というものを送ってみたいと

夢想するが故に、



私はまだ、結婚したくない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いい述懐してました。 [一言] 家族って難しいですよね...。 繋がりの濃い共同体だからこそ、それぞれ立場があって身近だからこその感情とかあるし。 面倒くさいですけど、拗れそうになった時と…
[良い点] 家族と他人は血が繋がっているかどうかの違いだけで、関係性だけで言えば他人が家族以上の繋がりになることはありうる。ただの夫婦であれば冷え切ることもあるし、兄弟同士が殺し合うことある。
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