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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第1章 砂の王国編 ー国の夜明けを待つ者達ー
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ザバンという国

昔、この国は貧乏な国だった。


一番初めにこの国を造ったのは、今の王家である、サルノー家の祖先だった。彼らはもともと、五大帝国の一つ、サドムに仕える家柄の一つであり、とある戦争の功績が認められて、この領地を賜った。


領地を賜ったと言えば聞こえはいいものの、初めて初代サルノー王がこの地を踏みしめた時、そこには資源と呼べるものが何も無かった。


見渡す限りの広大な砂漠と、点在しているだけのかすかなオアシス、砂漠に生きる植物や生物がわずかばかりいる程度だった。


帝国サドムは、今のザバンに当たる地域をどのようにするべきかで悩んでいたと、後世のサルノー王は後々耳にする。そこで、武勲を与えると言う名目で、サルノー家に白刃の矢がたったのだ。



領地を開拓しようにも、ザバンの領土には本当に何も無い。初代サルノー王はその日暮らしが出来ればいいほどの質素な生活を送り、その住まいもオアシスの中にポツンと作られた木造の家があるだけだった。


初代サルノー王は、憤慨した。帝国の為に今まで身を粉にして仕えてきた自分を、サドムの帝王は裏切ったのだ、と。


資源もなければ領民すらいない。そのような国は、国ではない。サルノー王は途方に暮れた。



しかしある日、初代サルノー王の家臣が砂漠を捜索している時に、流砂に巻き込まれるという事件があった。その家臣のことを初代サルノー王は酷く心配したが、程なくして帰還を果たす。そして、その手には見たことも無い鉱物が握りしめられていた。


「王よ、これが我らの国を救うのです!」


ザバンの砂漠は、一見すると砂の集まりだが、所々に地盤が固くなっている部分があり、砂岩のようになったそこには、砂漠が吸収して溜め込んだ純粋な雨水が集まっていた。


長い年月をかけて結晶と化したその水は、なんとも言えない輝きと、凄まじい硬度を誇っていた。


これが現代の世にも伝わる「サルノー結晶」であり、貴族の服にあしらわれる宝石としてや、優秀な騎士団員が持つ武器の原材料ともなっている。


このサルノー結晶によって、サルノー家は現代に至るまで巨万の富を蓄えた。それが現在の王国の繁栄にも繋がっており、その噂を聞いた人々や行商人が、サドムへの途中で寄るためや、結晶の採掘業に汗を流すために集まってくる。



しかし、光がある所に必ず闇はある。


サルノー王家は、結晶の取引を完全に国有化し、結晶の採掘作業にも自身の家臣を作業調として命じた。個人的に結晶を取ろうとする者は厳しく罰し、王家の懐は温まるばかりだった。


その上、交通の要所としてザバンを行き交う人々が増えたことに気がついた現代の国王、バビクス・サルノーは、非常に高い税率を定めることを国内外に知らしめた。


とはいえ、ザバンを通る道が一番安全ということを知っていた行商人も多く、ザバンに訪れる人が減った訳ではなかった。


問題だったのは、その高い税率が一般の国民をも圧迫していたことと、王家の事業に税金が使われ、一般の人々の暮らしは悪化していく一方だったということである。



ダリアがザバンに入ってから見た、華やかな街並みや楽しそうに酒を飲み交わす人々は、王国軍の人間や一部の上流階級の住む建物ばかりで、国の城壁に近い方にはスラム街のようなものも形成されているらしい。



現サルノー王に対して意義を唱えるために、王国軍として王に仕えたカルマは王国軍を辞めることを伝え、義賊としての蜃気楼(ミラージュ)を作った。その時にちょうど出会ったのが、ザバンに不法入国していた4年前のシンとの出会いだった。


「俺には、家族がいねぇ。だから、家を貸してくれ。その分の仕事は、何でもする」


シンという男は昔、今のような悪人ではなかった。むしろ、カルマにその事を伝えた後、シンは大の大人でも音を上げる様な作業や、蜃気楼(ミラージュ)としての活動を行うための厳しい訓練にも弱音一つ吐かずに耐えた。


そんなある日、カルマの自宅に王国軍が押し入り、反逆罪の罪で囚われそうになったことがあった。シンがやって来てから半年ほどたった時だった。


「カルマ・ロリック、貴様を国家反逆罪の罪で城に連行する!」


「落ちぶれたもんだなぁ、王国軍も……」


しかし、王国軍に従って城へと向かおうとしたのを止めたのが、他ならぬシンだった。



「なんでジジイが捕まらなきゃならねぇ!くだらねえことしてるのはお前らの方だろうが!」


シンは、サドムからの亡命者で、ザバンでカルマと出会う前に、既に加護を受け取っていた。幸か不幸かその強さによって、シンは王国軍を退けてしまった。


「貴様が最近噂されている()()()()!その顔と名前、必ず王に報告させてもらう!」


王国軍は一旦退いた。しかし、カルマへの追及に合わせて、そこにシンまで加わってしまっただけだった。



「俺はあんたに、合わせる顔がねえ」


シンは、正座の状態で強く地面に頭をたたきつけた。シンがカルマに謝ったのは、初めての事だった。





「それから、あいつは今のようになってしまった。根は真っ直ぐな子なんだ。ただ、儂に迷惑をかけまい、儂のことを王国軍に追わせまいと思うがあまり、非道な道に生き急いでいるだけかもしれん……」


カルマさんにとってその話は、話すのも躊躇われる辛い話のようだ。


「あいつは、人から奪った金を自分のものにした事など一度もない。恵まれないスラム街の子供たちに新鮮な食べ物を買い与えたり、本や書物はそのまま教育に使えるようにと渡している……。君が、この国に入る前にあいつと会っていることは知っている。だが、あいつは、そんなやつではないんだ……」


カルマさんに同調するように、俺の周囲にいる男達も口を詰まらせていた。元王国軍というのは、現在の王政に耐えかねて反乱の意志を持った同士として、カルマさんについてきたということだろう。



「君に、お願いがある」


カルマさんの真っ直ぐな瞳は、俺の目を見つめていた。その目だけで、彼が何を言わんとしているかは、察しがついた。


「あいつを、シンを、そしてこの国を、救うための手伝いをして欲しい。この国は腐っている。目先の金に目がくらんで、一番守るべき国民の姿が見えていない。君が現れたことは、運命だと思わざるを得ないんだ。ゴーシュが連絡をよこしてきたのなんて10年以上なかったことだから……」


カルマさんの必死な思い、そして周りにいる元王国軍の男達の目は、ダリアだけを見つめていた。




俺は、どうするべきなんだ。


贖罪なんてことは考えていない。


ここで人を救っても、俺の罪が無くなるわけじゃない。


でも、それでも、俺は……。




「俺に、何が出来ますか」

作者のぜいろです!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。現在進行している、「砂の王国編」ですが、何となく構造が見えてきたでしょうか?


金に目が眩んだ王国と、それに反旗を翻す人々、そこに巻き込まれるダリアは、どんな道を辿るのか?


そんな話になっています!


シンの第一印象については嫌悪感を覚えた方もいらっしゃるかもしれませんが、彼はとっても「良い奴」です。それは、この先の話を読んでいただけたら分かると思います……。


作者の中ではある程度、ザバンでの話について構想が出来ておりますので、後はそれを文章にしていくだけ……(←イマココ)



是非是非、これからの展開にご期待ください!


そして評価、ブックマーク、感想等あったら創作意欲に拍車がかかりますので、是非応援してください!


ぜいろでした。

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