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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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魔導王朝フォルリンクレー

目を開けた時そこは、まさしく「異世界」と呼ぶにふさわしい街並みを俺達に向けていた。




獣王国エルドバの内部に在り、その友好国として技術提供を行っている、魔導王朝フォルリンクレー。安定した土地での技術発展は凄まじく、五大帝国に並ぶほどの生活水準を誇るその国は、世界連邦に近年加盟が認められたものの、国としてのネームバリューは未だに広がっていない。


そこには、「魔法」と呼ばれる技術が生活の端々にまで浸透しており、暮らす者達の生活を豊かに彩っている。





「ここが、フォルリンクレー……」


その景色は、まさに圧巻だった。エルドバとは異なり、街全体が先進国並みの発展を遂げており、至る所に技術力の高さが垣間見える。


そして驚くことに、人と機械が共存しているのだ。道行く人はその半分程で、他はそこら中に怪しげな機械が並べられている。


「入国ノ手続キヲ、オ願イシマス」


転送装置の横に設置された機械は、キエルさんに対してそう語りかけた。キエルさんはそれに従って持っていた襟章を機械の中央部にかざす。


「確認。エルドバ近衛騎士キエル様。ドウゾ……」


機械の検査は無事に通ったのか、俺達もフォルリンクレーへと足を踏み入れることが出来た。


「同じエルドバの領土とは思えないですね」


「無理もありません。フォルリンクレーの技術力は多くの大国が欲しているのですから」


キエルさんは俺達にそう説明してくれた。それはもちろんそうだろう。人間を遠くの地にワープさせることが出来る技術など、聞いたことも無いのだから。


「じゃあなんで技術とやらを提供しないんだ?エルドバに渡す分があるなら、それこそ五大帝国とかに売っちまえば随分金になるだろう」


シンは急に現実的な話をし始めたが、それは確かにそうだ。これだけの技術なのだから、経済的な意味でも技術提供を惜しむ理由はあまりないように感じる。


「我々エルドバもそう提言しているのですが、フォルリンクレーの上層部はその事に対して乗り気では無いようなのです。詳しい事は私達にも伝えられていませんが……」


大国が欲する技術を有しながらも、それを渡そうとしない理由……。エルドバにもそれを隠しているのには、何か訳があるのだろうか。


「ともかく、私が王から達せられた任務は、皆さんをこの地に送り届けることです。私の名前とこの襟章を使えば、ある程度融通をきかせてくれる事でしょう。私の襟章には替えがありますので、是非お持ちください」


そう言ってキエルさんは俺に、エルドバとフォルリンクレーの紋様が刻まれた襟章を渡してくれた。そしてキエルさんとキャッツさんは、そのまま転送装置を使ってエルドバへと戻って行ったのだった。





「……さて、どうするよ。フォルリンクレーに来たは良いが、これからの事何も決めてなかったからな」


「そうだね。少なくとも俺達は俺達のやるべき事、古代悪魔の因縁に蹴りをつける事が目標になるだろうけど……」


「でも、ダリアさんみたいに古代悪魔を有している人が居るとして、どうやって探せば良いんでしょう……?」


俺達3人は揃って頭を悩ませた。俺の中に眠るラグドゥルの敵、ハロー・ヘイ・ショウラーの依代を探したいところではあるが、いかんせん情報が無さすぎる……。




その時、俺達から少し離れた広場でワッと人々の歓声が上がる声がした。


「テトラ様だ!『七色の魔女』の内のお一人がいらっしゃってるぞ!」


「ハクア様も一緒だ!二人の七色の魔女に出会えるなんて、今日はツイてるなぁ!」


人々は、「テトラ」と「ハクア」という二人の人物に対して歓声を届けているようだった。




「なんでしょうか?行ってみますか?」


「んまあ、やることも特にねぇしな」


そう言ってシンとフィスタは声の聞こえる方へと向かって歩き出す。俺もそれについて行こうと足を踏み出すその瞬間、背後に冷たい気配を感じた。





「あら、いらっしゃい」




俺は咄嗟に後ろを振り返ったが、そこには誰の姿もなかった。先程までと同じ様に機械が転送装置の前に居座っているだけで、変化は無かった。


「おいダリア、行かねぇのか?」


「……あ、ああ。今行く」


俺は僅かな疑問を残し、広場の方へと向かった。













ー魔女の塔、研究室ー


「何だよ、またこんなとこに引きこもってんのか」


黒色の髪色をした女は、不躾に部屋の扉を開け、ズカズカと入り込んでくる。




「あ、……うん」


「返事は良いからよ。それより、クラリア様に言われた仕事、ちゃんとやってんだろうな?」


「……もう少しで、完成する。……ダスクも、手伝ってくれる?」


ダスクと呼ばれた女に、白衣を着た緑髪の女はそう尋ねた。


「あいにく、私は暇じゃないんでね。グリム、あんたと同じ様にクラリア様から勅令を受けてんのさ」


「……じゃあなんでここに?」


グリムと呼ばれた女はキョトンとした顔を浮かべる。ダスクはその無垢な表情に多少イラつきながらも話を続けた。




「生誕祭までには必ず間に合わせろっていう、クラリア様からの伝言を伝えに来たことが一つ。んで、もう一つは……」


そこまで言ってダスクはグリムと視線を合わせるためにその場にかがみ、右手でグリムの顎を握りこんだ。


「私側につけよ。テトラの思想には飽き飽きしてんだ、俺は」


そう言ってダスクは右手に力を込める。それを受けてグリムは苦悶の表情を浮かべる。




「……貴方の仲間になるのは構わない。だけど……」


その瞬間、ダスクの四肢に研究室内の植物が勢い良く巻き付き、その動きを封じ込めた。先程までとは違い、形勢が逆転する。


「貴方の考えには、私は賛同しない。少なくとも私は、今のエルドバとフォルリンクレーの在り方が好き」


「……調子に乗ってんじゃねえぞ、グリムぅ!」


ダスクは身動きが上手く取れないながらも、無理やり腕に力を込め、自身を捕らえていた植物から脱出する。


「交渉は、決裂だな。所詮お前もあいつらと同じ、弱い人間だったって事だ」


「……どういう意味?」


ダスクの言葉に対し、グリムは眉をひそめる。納得が行っていないという様子だった。


「不満ある現状を変えるだけの力を持っていながら、それを実行に移さねえのは臆病者だって言ってんだよ、雑魚」


そう言ってダスクはグリムを睨みつける。


「お前らの意思は関係ねえ。知ってんだろ?七人の意思はクラリア様の意思、クラリア様の意思は七人の意思だってさ」


「……他の三人は貴方についたっていうの?」


ダスクはニヤリと笑い、グリムに近づく。


「これからお前も、()()()()()()()




ダスクがそう言葉を発した瞬間、グリムの視界は黒一色に染まり、やがて周囲の音も聞こえなくなった。






「あぁ、これで、4()()()()()


ダスクは抜け殻のように成り果てたグリムに吐き捨てるようにして、そう言った。

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