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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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「死」を司る悪魔 ラグドゥル・フォン・ソロキオット

バルダンさんがめくったページには、手書きによって綴られた文字が並んでいた。その文字は痛々しく、血濡れているようにすら見えた。










エルドバにはかつて、武器も持たぬ文明の民たちが暮らしていた。彼らは人の言葉を操るものの、その姿は獣そのものであり、その見た目故に虐げられることもしばしばであった。


彼らに転機が訪れたのは、一人の少年がその国を来訪したことに始まった。


彼は孤児であり、たまたま歩いていた先にエルドバがあったと話し、服や体はボロボロの身なりをしていた。


エルドバの国民達は彼を気遣い、自分達に出来る限りの介抱をした。





それこそが、エルドバにとって将来まで語り継がれることになる「最悪の悲劇」を招くとも知らずに……。





エルドバの国民達が助けたこの少年は、名を「ハロー・ヘイ・ショウラー」と言い、後に古代悪魔と呼ばれる彼は、まだこの時その本性を隠していたのだった。


少年は自身の回復がなされたと判断するや否や、エルドバに考えうる限りの破壊と惨殺の限りを尽くした。


勿論エルドバの国民達もただ黙ってやられた訳では無い。有り余り、迫害の対象ともされた自分達の獣の如き力を用いて、これに抵抗したのだった。





しかし、少年の力はそれを遥かに凌駕していた。少年が通った跡には死体すら残らず、彼はただ自分の愉悦と快楽のためだけにエルドバの国民を殺して回ったのだ。


国が潰える事も覚悟したエルドバ国民の前に現れたのが、後にエルドバにとって「英雄」と崇められることになる「ラグドゥル・フォン・ソロキオット」だった。


彼女は国の面影すら残さない荒地にその足を踏み入れると、その時の国民に、少年を追っている旨を伝えた。


彼女はエルドバまで破壊を尽くした少年を追ってやってきたのだった。




少年と彼女が邂逅するのにそう時間はかからなかった。少年は彼女に嫌悪を示し、彼女もまた少年に殺意の目を向けた。


彼女と少年の戦いは、昼夜休まることなく三日三晩続いた。暴虐の化身とも思われる程の少年を、それでも彼女は御してみせたのだった。


少年は彼女によってその命を終わらされ、彼女はエルドバにとってかけがえのない恩人となったのだった。


当時の初代エルドバ国王は彼女と対等な契約を結び、彼女はその名前で、その命が尽きるまでエルドバを守り続けたのだった。


エルドバ国民にとっては、世界で「悪魔」と呼ばれた彼女ですらも、崇拝の対象となるほどその恩義を感じていたのだった。











そこまで俺達に伝えて、バルダンさんは本を閉じた。俺の知らないことばかりで、驚くことの方が多かった。


「彼女が悪魔と呼ばれた過去は確かに存在する。しかし、私達にとっては救国の英雄に他ならないのだ。エルドバ国王にそれは代々受け継がれ、いつ彼女が再びこの地に訪れたとしてもそれを迎え入れる準備を進めてきたのだ」


サドムで今後の行先にエルドバを勧められた理由が分かった気がする。ハピナスさんはこの事実を恐らく知っていたのだ。そうでなければ悪政を敷かれた土地に案内するはずもない。


「古代悪魔と呼ばれた者達の意志は現代に尚根付いている。君の中に眠るラグドゥル様が目覚められたのも、きっとなにか理由があるのだ」


バルダンさんの真剣な眼差しを見て、俺はその言わんとしていることが理解出来た。


「他の古代悪魔の復活……」


「そう考えるのが自然だろう」


そう言ってバルダンさんは本棚にしまってある本を取りだし、それを開いて見せた。そこには、過去数百年間にわたって記されてきたであろう、ラグドゥル()()の悪魔の所業が記されていた。


「他の古代悪魔、特にシビルモアとアーキンは高い頻度で依代を見つけ、その度に世界に災いをもたらしてきた。しかし依代との合致が上手くいかなかったのか、その度に時の五大英雄や十帝達に滅ぼされてきたのだ」


しかし、そこには不気味なまでにラグドゥルとハローの名前が記されていなかった。


「恐らくだがハローは永い時の間、完全に適合する依代が産まれてくるのを待っていた。それ故にラグドゥル様も動きを見せなかったのだろう。今までのエルドバ国王が彼女と出会うことが無かったのも無理はない。しかし、ここにきてラグドゥルを名乗る人格を持つ君が現れたのだ。古代悪魔最悪の禁忌『ハロー・ヘイ・ショウラー』が現代に産まれ落ちたと考えるべきだろう」


最悪の禁忌……。他の古代悪魔を差し押さえそう言わしめるだけのことをした少年。もしかしたら俺が彼の依代になっていてもおかしくないと考えるとゾッとする。


「君がいずれハローを迎え撃つことになった時は、私達エルドバの民が必ず君の味方をすると約束しよう。まあただ、君は今世界から追われる身だ。我々は良いとしても、他の国の人々が皆君を受け入れてくれるとは限らない」


そう言ってバルダンさんは難しそうな顔をする。エルドバ国王にだけ代々伝えられてきた救国の歴史から味方をしたいという気持ちは伝わってくるのだが、それはあくまでその歴史を知る者だからこその意見だ。


世間一般から見れば、俺は大量虐殺を行った人間。過去の古代悪魔達と同じような見られ方をされても仕方ない。


「だからこそ私は水帝様に、君がこの国に留まるを ことを勧めたのだ。しかし水帝様は、君がここに辿り着くまでに救った2つの国のことを私に話した。国同士の情報の伝達は早い。ザバン革命のことも、ミスティア王家失踪の件も知ってはいたが、まさか君がその中心に居たとは……」


そう言ってバルダンさんはその大きな手で俺の手を優しく握った。


「だから決めた。私は君のゆく道を止めることをしない。君が今まで多くの壁を乗り越えてきたように、これからの未来も君が拓いていくべきものだ」








バルダンさんに連れられて、俺達は謁見した場所に戻ってきた。あまりに多くのこと、特に過去の事実とこれから起こる可能性のある未来を知れたのは、俺にとって大きいものがあった。


「君達は旅をしていると言ったな」


バルダンさんは俺達が来た時のように大きな椅子に座り、俺とフィスタにそう話しかけた。


「ダリア君、君が世界で追われる身であることは重々承知している。君さえ良ければ、私はこの国にどれだけ滞在してくれても思っている」


「……それは、出来ません」


バルダンさんからの言葉に俺は少したじろいだが、そう返答した。


「俺はまだ、自分の罪を清算しきれていないんです。少なくとも事件の真相が分かるまでは、俺はこの身を奉仕に捧げます。ザバンやミスティア、今までの国で起こってきた事に俺が立ち会っていたことも含めて、運命だと思いたいんです」


「そうか……。君は、強いな」


バルダンさんは優しく微笑むと、椅子から立ち上がり俺達の前から離れていこうとした。


「決意を決めた者にこれ以上の話は無粋だろうな。キエル、せめてフォルリンクレーまで送ってやることだ。あの国の技術力は見ておいてそんをするものでは無い」


「承りました」


そう言って、バルダンさんは更に奥の間へと消えていった。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!作者のぜいろです。


毎度恒例のあとがきのお時間です……。ここを見てくださってる方が居ると信じて勝手にやっていきます!




今回お話するのは「飢餓」を司る悪魔、ハロー・ヘイ・ショウラーです。

彼は幼い少年をしていた、ラグドゥルと同じ時代の人間です。ラグドゥルと同じ様に彼も普通の人間でしたが、生きていた時代の罪過によって悪魔と呼ばれるに至りました。


飢餓、という異名がついたのは彼自身が血に飢えていた戦闘狂であったことに由来します。

本編で少し彼の過去については登場しましたが、ラグドゥルに追われる身となる程の罪を犯し続け、各地を血の海に染めて行ったという凶悪犯でした。


その過去から、彼に恐怖した人間達によって古代悪魔の名前を冠されるという結末に至ったのです。



ラグドゥルと同じ様に今後のストーリーにも大きく関わってくる(そもそも古代悪魔全員がしっかり関わってくる)予定ですので、再登場のタイミングを楽しみにお待ちください!


それでは今回はこの辺で。次回は、3人目の古代悪魔「戦争」を司る悪魔 シビルモア・ド・オーネッツについて少し説明したいと思います!

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