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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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堅角のリュド vs シン・ネオラルド

護衛団本部の入口付近では、二人の戦いを察知してか通りすがりの人々が足を止めて、人だかりが出来ていた。


「サドムからの客人が護衛騎士と戦うらしいぞ」


「相手はリュド様か……。気の毒だが、人間には無理だろうな」


そのような、エルドバの人々の声が周囲から聞こえてくる。


「君達の仲間のことだが、彼に免じて君達にまで責任を追求するような真似はしないと誓おう」


そう言うのは、ワシの獣人の騎士だった。


「私の名前はキエル。エルドバ護衛騎士位階(ランク)5位『賢鷲のキエル』だ。そして今戦おうとしているのが位階(ランク)4位の『堅角のリュド』。隣に居るのは位階(ランク)6位の『豪腕のドーフ』だ」


「うほっ」


そう言ってドーフと呼ばれたゴリラの獣人の騎士は手を挙げた。よろしく、とでも言っているのだろうか。


「しかし意外だったな。リュドがあんな見え見えの挑発に乗るとは……。普段は冷静な奴なんだがな」


「ここ最近、張り詰められているご様子ではあるかと……。特に()()()()()()()()……」


「うほ……」


そう言ってシルバーとい名前を口にしたのは、トルーグさんだった。


「ああ、聞いているよ。ここまで来て()()()()()()()()()()、あいつは……」


そう言ってキエルさんは頭を抱えた。シルバー……。キャッツさんも名前を出していた、この国における罪人の名前だ。ただ、他人事な気がしないのは、俺も同じような境遇にいるからかもしれない。


「シルバーさんって、この国でどんな風に思われてるんですか……?」


フィスタは恐る恐るキエルさんにそのことを尋ねた。


「ああ、皆さんも知っていましたか……。国民は良くは思っていないでしょうね、友好国の人間を殺したという罪は軽いものではありませんから。ただ、私は同時期に護衛騎士になった身として、簡単にその縁を切る訳にも行かないものです」


そう言ってキエルさんは苦笑いした。そういう絆の形もあるものだと、俺は納得した。


「とりあえずは目の前の事を見守りましょう。リュドに勝てる相手が居るとは思いませんがね」


そのキエルさんの目は、リュドさんのことを信頼している目だった。同じ騎士として、仲間を誇りに思っているようにも見えた。


俺も、シンのことを信頼して目の前の戦いを見守らなければならない。共に旅をする、仲間として。








「始めようか、旅の者」


「俺にはシンって名前があるんだよ」


「はははっ!そうか。なら私のことも名前で呼んでもらおう。エルドバ護衛騎士位階(ランク)4位のリュドだ」


「ご丁寧にどうも」


速度特化(スピードシフト)20%

攻撃特化(アタックシフト)20%


シンは目を赤色と青色に光らせ、開戦の合図を告げるようにして、リュドに近づいた。


その体格差を覆すようにリュドの足元に入ったシンは、リュドの顎の下から打ち上げるようにしてアッパーを見舞う。


ドオオオオンッ!


その瞬間、拳による風圧で周囲に風が巻き起こる。リュドの巨体は一瞬だけ地面を離れたが、その目はシンを捉え続けていた。


「終わりか?」


「まだだよ!」


リュドの腹部、肩、頬、背中、脚。シンは全方位から無数の打撃を絶え間なくリュドに与え続ける。その衝撃で、辺りには爆音のような衝撃音が鳴り響き続ける。



パシッ



その連打の最中、突然音は静止した。リュドの腹部めがけて放たれたシンの一撃を、リュドは片手で受け止めていた。


「スピードもパワーも中々。人間にしては、な」


その言葉の後、リュドは真っ直ぐにその拳を自身の真下にいるシンに向かって振り下ろした。



バキッ



まるで薄氷を割るようにして、リュドの拳はいとも簡単に地面を打ち砕き、その衝撃は地震のようにして周囲の人々に振動を伝えていく。


シンはそれをすんでのところで躱していたように見えたが、拳のかすった頬からはシンの赤色の血が辺りに飛び散っていた。


(ただの振り下ろしでこれかよ……!)


シンはリュドの腹部を蹴り飛ばし、掴まれていた手を無理矢理離させた。リュドは何事も無かったのように涼しい顔をしており、方やシンは頬から血が垂れていた。


「よく避けたじゃないか」


そう言ってリュドはシンを見据える。息を切らしているシンとは対照的に、リュドは全くもってスタミナを消費している気配すらない。


「お前のパンチなんて()()()に比べたら屁でもねえよ」


そう言ってシンはダリアの方を見る。ダリアの中に眠るもう1つの人格、古代悪魔ラグドゥル。その者の攻撃を直に受けたシンだからこそ、目の前のリュド程度に臆している場合ではなかった。


「ダリア、フィスタ。俺の新しい力、見せてやるよ」


武器特化(ウェポンシフト)40%


シンの瞳が紫色に光ったかと思うと、シンは腰に挿してある剣を抜き取り、リュドに向かって構える。


「武器を出したな」


そう言ってリュドもそれに応えるようにして自身の剣を鞘から抜く。しかし、リュドにとって想定外のことが起こる。


「俺の武器は、()()()()()


まるでシンが言うタイミングに合わせてか、シンの剣は光を帯び始め、その形を変えていく。


「おい、なんだその武器は」


リュドが驚くのも無理は無かった。少なくともリュドが生きてきた中では見たことがないであろうその武器の名前は……。






「メリケンサックだよ」


そう言ってシンは不敵に笑う。シンの両手の拳には拳の突起に合わせるようにして尖った金属具が装着されていた。


「……」


リュドは自信を露わにするシンに対して、失笑で返した。


「ふっ……、笑わせるなよ。誇りある騎士である私に対して、そのようなチンケなおもちゃで対抗しようというのか」


そう言うとリュドは、その場に思い切り脚を踏みおろし、地面を再び粉々に砕いてみせる。


「笑わせるな」


その目は、完全に先程までのいたぶるような目とは違い、仕留めにかかるかのような決意の表れが見て取れた。


「笑ってられる余裕があればの話だけどな」


シンはそれでも真剣さを失わない。シンもまた、正面からリュドに対して立ち向かう姿勢を見せていた。


「ならば打ち砕いてくれる」


そう言ってリュドは、躊躇いもなく手に持った剣を振り下ろした。先程の拳のように、風を巻き起こしながら、地面さえ貫こうとする勢いだった。




バキイィンッ!





その、物が壊れる音は、あまりにも突然に響き渡った。持ち手の近く、根元から完全に折られた剣を握るリュドと、不敵に笑うシンがそこには立っていた。


「今ここで、俺は俺を越えていく」


シンの目には、まるでスナイパーが付けるスコープのような照準の跡が浮かび上がっていた。

皆様こんにちは、こんばんは。作者のぜいろです!今回も楽しいあとがきの時間がやって参りました!




今回ピックアップするのは、シンと同じくダリアと旅を共にするミスティアの「龍の巫女」、フィスタ・アンドレアについてです!


そもそもここで彼女に関して大きな事を言ってしまうと、実は当初の構想では、フィスタというキャラクターは登場予定だったんですが、ダリアの仲間にする予定ではありませんでした(いきなりのぶっ込み)。


霧の王国ミスティアでの話は書こうと思ってましたし、聖獣アルケミオンに仕える龍の巫女達の構想ももちろんしていたのですが、とある事情がありましてフィスタを仲間に入れるルートへと変更するという創作サイドの決定があったんですね……。


理由は至ってシンプルなのですが、「男ばっかりじゃね?」というものです……。この小説をTwitterの朗読会の方に取り上げて頂いた際、小説の方はザバンでのストーリーを展開していたのですが、そこでとある方が一言。




「内容は面白いけど、読んでもらえないのはヒロインが居ないからですかね」



完全にうっかりしていました。




そもそも自分は小説を書く際に、(少年誌の読み過ぎで)カッコイイ男のキャラが好きなのでついついそう言うキャラばっかり出してしまってたんですね。


これはザバン(砂の王国)編を読んでいただければ分かると思うのですが、なんと聖騎筆頭執行人のアンバーセン以外全員男という事態が発生していました。


これを受けて、霧の王国で登場予定だった「龍の巫女」の一人を仲間入りさせることが作者の心の中では決まった、という流れになっております……。





フィスタというキャラがダリアの仲間になったのは実はこんな制作サイドの裏話があるんですね!ただ、自分自身フィスタに関しては書いてて凄い楽しいキャラですし、ダリアやシンとの掛け合いにもアクセントになる部分が多いので、女性キャラの重要性というものを再認識した話にもなります!



というわけでフィスタについての裏設定に関して書いてきた今回のあとがきでした!次回は、フィスタの素性、加護について説明していきたいと思います!




ぜひ、いいね、ブクマ、評価、感想等お待ちしております!先日レビューを頂き、PV数がとんでもない事(当社比)となったので、作者としてはウハウハです!


それでは、次回のお話でお会いしましょう!

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