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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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リスの獣人 パウエ

獣王国エルドバは、道行く人々が2つの種類に分かれている。


普通の身なりをして仕事をしたり、物を売ったり、子供達がその辺を走り回っている様子が一つ。


もう一つは、キャッツさんやオウロさん、トーグルさんのように騎士と呼ぶにふさわしい身なりをした屈強な者達だ。


「そういえば気になったんですけど」


フィスタは辺りをキョロキョロとして言う。


「大人の方たちは動物に近い見た目をしてますけど、子供達は人間の姿に近いですね」


そう言われてみると確かに、エルドバの子供達は動物の名残を耳や尻尾、鼻等のみに残しているのに対して、大人達は完全に動物の見た目へと変貌している。


「成長期に色々あるんだろ」


「そんな簡単な話なんですかねぇ」


そう言ってよそ見をしているフィスタに、一人の女の子がぶつかった。


「……いてっ!」


女の子はその小さな手で持っていた籠をその場に落とすと、中からいくつものリンゴが周囲に散らばっていく。


「はわわわわわっ……!ごめんなさい、私がよそ見をしてたばかりに!」


フィスタは大慌てで辺りに散らばったリンゴを拾い集めると、女の子と一緒に籠の中にそれを戻していった。


「ありがとう、おねえちゃん!」


その女の子は、リスのような耳と尻尾を生やした、緑のワンピースが映える可愛らしい女の子だった。


「ケガは、ないですか……?」


自分の責任だと感じているのか、フィスタは顔を青くして女の子の体に異変が無いか調べて回る。


「しっぽがちょっといたいけど、リンゴたべたらなおるよ!」


そう言って女の子は、籠を前に差し出してきた。


「シンさん、ダリアさん……」


フィスタは困惑の表情で俺たちの方を見つめる。まあ、大事そうに拾い集めていたのも、俺達の方に差し出してきているのも、そういうことだろう。


「買ってあげよう。気づかなかった俺達にも非はあるしね」


「リンゴ全部ちょうだい!」


「食いすぎだバカ野郎!」


女の子からリンゴを全て買おうとしたフィスタに、シンは思いっきりツッコんだ。


「なんですか、この子に迷惑をかけたのは私達ですよ!」


「俺達、じゃなくてお前だろうが!」


「仲間だって言いましたよね、シンさん!」


2人がそう言い争っていると、その間に挟まれた女の子は今にも泣き出しそうな表情になる。


「ケンカは、ダメだよ……。おかあさんも言ってたもん」


「あ、シンさんが泣かした!怖かったねえ」


そう言ってフィスタは、女の子を抱き寄せ頭を優しく撫でる。


「全部買ってあげようよ、シン」


「ったくお前まで……。次はねえからな、ガキ」


シンはそう言って厳しい言葉をかけたが、女の子は気にしていないという様子で言った。


「おにいちゃんたちもありがとう!」


その笑顔を見ると、リンゴを全て買ってもお釣りが来るくらいの暖かい気持ちになったのだった。






「美味しいですね、このリンゴ」


俺達は木陰に入って女の子が売ってくれたリンゴを丸かじりしていた。


「でしょ!うちのにわにできてるんだよ!」


「それを売ってるんですか?偉いですね、こんなに小さいのにー」


フィスタは半ば合法的にもふもふを楽しんでいるようで、女の子の頭にとどまらず耳まで撫で回しているようだ。


「お名前、なんて言うの?」


「わたしはパウエ!おとうさんがつけてくれたなまえだって、おかあさんがいってた!」


そう言ってパウエちゃんはフィスタからプレゼントされたリンゴをその小さな口で頑張って食べている。


「にしても、ガキがリンゴを売り捌かねぇといけねえとは、どんな家庭事情だよ」


さっきまでリンゴを買うのに反対していたシンだが、いつの間にか2つ目を食べ始めている。


「……」


シンの言葉に対して、パウエちゃんはリンゴを食べるのをやめ、俯いてしまった。


「どうしたの、パウエちゃん……?」


フィスタはそれを心配するように顔を覗き込む。


「おとうさんは、おしごとにいっちゃったの……。フォルなんとかってくにに。だから、わたしがいいこにしてなきゃかえってこられないんだって」


その言葉に、俺は違和感を覚える。パウエちゃんが言っている国とは、十中八九フォルリンクレーの事だろうが、そこに仕事に行っているという彼女の父親。


友好国ならば互いに仕事上の交易があるのは理解出来るが、それならば何故その詳細を家族にも伝えていないのだろうか。


「フォルリンクレー……」


俺のその独り言に、シンは反応する。


「やっぱり怪しいんだよな、魔導王朝ってのは。まあこれだけ栄えてる国に対して面と向かってそれを言うのは反感を買うだけだろうがよ。そもそもそれだけ技術力があって、獣王国に自分を売り込むってのがそもそもおかしい」


シンのその言葉に対して、フィスタは首を傾げる。


「なんでおかしいんですか?」


「お前が魔導王朝の立場になってみろ。そもそも商売相手を選ぶなら獣王国なんてすっ飛ばして、五大帝国なんかに交渉を持ちかけた方が利益は莫大に入ってくるだろ。友好国とは言ってるが、少なくとも対等なんかじゃねえ。今の時点では、エルドバがフォルリンクレーに依存してるようにしか俺は見えないけどな」


そのシンの説明に、フィスタは納得したようだ。確かに、自分達の領土が欲しいという気持ちがあったとしても、大国との交渉次第でそれを成す事は可能だったはずだ。





「まあ、ただの勘だけどな。フォルリンクレーがエルドバに手を差し伸べただけのお人好しって可能性も捨てきれない訳じゃない」


そう言ってシンは食べていたリンゴを口に詰めると、下を向いているパウエちゃんの傍に近寄った。


「お前がいい子にしてたら親父はすぐに帰ってくるさ。ただ、リンゴを売るだけが良い事をするって事じゃないからな。まずはお母さんのお手伝いでもしてろ」


シンらしからぬその発言に、俺とフィスタは内心驚いたが、パウエちゃんにはその言葉が響いたようだった。


「ほんと?」


「それを本当にするのは、お前の行いだけだ」


「……わかった!」


「よし」


そう言ってシンは立ち上がり、パウエちゃんに背を向けた。


「行くぞ。そのガキのためにも、俺達はもっとこの国について知るべきだろ」


その目は、いつになく真剣なものだった。俺とフィスタはパウエちゃんにリンゴのお礼をして、その場を後にした。




「珍しいですね、シンさんが誰かを気遣うなんて……」


少なくともシンとは喧嘩ばかりしているフィスタは、シンに対してそう言った。


「さあな。ただ、親が居ない間の寂しさってのが少しだけ分かるってだけだよ」


シンは誰かを思い出しているような、遠い目をしていたのだった。

読んでくださった皆様、こんにちは又はこんばんは。作者のぜいろです!


今回は前回に引き続き、ダリアの仲間の1人である「シン」というキャラクターについて裏設定のような話をしていきたいと思います!


水の帝国編の序盤でも触れたのですが、シンは元々サドム辺境伯の子供です。ただし、正妻との子供ではないために同じ息子同士でも正妻の子供とはかなり差別的な扱いを受けていました。


なので、自分のことを平等に愛してくれたガガリアンのことを本当の父のように慕っていた訳ですね。


ちなみに、シンとダリアが出会ったのはサドムではなくザバン(砂の国)な訳ですが、そこまでに至る経緯について、以下に簡単に書きたいと思います。



シン(9歳時)……巨大な戦争勃発

シン(10歳時)……精霊の神殿へ。ガガリアンとの別れ

シン(11~17歳時)……聖騎士見習い〜聖騎士へ

シン(17歳時)……サドムで重大事件を引き起こす。ミスティアを経由し、ザバンへ亡命。カルマとの出会い。


ざっとこんな感じですかね。シンの作中での含みのある言い方から、彼が聖騎士であった時期が存在したのは何となく分かる方も多いかと思いますが、改めてここで作者から言わせてもらうと、彼は「聖騎士でした」

。ただ、サドムで起こした事件のせいで聖騎士では居られなくなった、という感じですね。


この後のシンについては本編でも語っている通り、亡命から2年後に盗賊団の首領として王国奪還を掲げていたタイミングで主人公であるダリアと出会うことになる訳です。



この作品ではダリアの悲惨な過去に目を向けられがちですが、シンも中々大変な過去を送っています。まあそれは他の仲間にも……。



これ以上は言うのをやめておきます!



というわけで今回はシンについての深掘りパート2をお送りしました!次回はシンについての説明あとがき最終回、「特化の加護」大説明会を行います!


是非是非次回もご覧ください!




ぜひ、ブクマ、いいね、評価等よろしくお願いします!作者の励みになります!作者のぜいろでした。

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