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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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獣王国 エルドバ

「た、大使殺し……?」


そのあまりに現実味の無い言葉に、俺は言葉を詰まらせる。


「エルドバに行かれるならば、その()()()についても知っておくべきでしょう」


そう言ってキャッツさんは、無知な俺達のために説明をしてくれた。


「私達エルドバは、獣王国という名前の通り、武力においては他の国よりも秀でた者が多い反面、生活技術等の発展が遅く、近年まで低いレベルの生活水準をキープしていました。今から10年前、『魔女』を名乗る一人の人間が現れてから、私達の文明は大きく発展したのです」


キャッツさんは、先程見せてくれた襟の裏側を見せてくれる。そこには、エルドバの国旗と思われる獅子を象ったエンブレムと、その隣に並ぶようにして杖の紋様が刻まれていた。


「彼女の功績は大きく、主に『魔導具』と呼ばれる誰にでも使える画期的な技術は、私達の生活を豊かにしていったのです」


「魔導具……?」


その言葉にシンは眉をひそめる。


「お察しの通りです。先程の盗賊が身につけていた金属器具。あれこそが我々に光と影をもたらしたものなのです」


そう言うと、キャッツさんは自身の着ている服の袖をめくって見せる。


「かく言う私も同じようなものをつけています。ただ、先程の爆発を引き起こしたような危険な物では無く、離れていても持ち主同士で通信が出来るという便利な物です」


キャッツさんは袖を元に戻し、俺たちの顔を見渡す。


「盗賊に横流しされてしまうというケースはあるものの、それ以上に私達エルドバがこれらの魔導具によって得た恩恵は計り知れないものがあります。シルバー様が現在幽閉されているのは、その友好国からの大使を殺したことによる、両国の関係悪化の防止に他なりません」


大使殺し、という罪がエルドバにとって大きな痛手となった事情は理解出来た。友好国との関係を維持するためにも、大義名分上幽閉という選択を取るしか無かったのだろう。





「友好国の名は『魔導王朝フォルリンクレー』。エルドバに魔導具を提供することを条件に、その領土はエルドバ国内に置かれています」


「そんな国があるんですね……!」


フィスタはその国に興味津々といった様子だ。確かに、誰でも分け隔てなく利用出来る便利具を手に入れられるというメリットは、どのような国においても価値があるものだろう。


「他国の中に存在する国は、現世界においてフォルリンクレーのみです。彼らは、エルドバ内に存在しながら自分達でその統治を行っているのです」


「王朝ってことは、王がいるのかよ」


こういう話には興味のなさそうなシンも、キャッツさんに疑問を投げかける。


「ええ、先程話した『魔女』を名乗る者。現フォルリンクレー国王にして、国民から大魔女と呼ばれている、クラリア・アナーキー様がそれにあたる存在と言えるでしょう」


「へえ……。てかそもそも気になってたんだがよ、魔法ってのは『加護』とは違うのか?ここに居る俺達は少なくとも、魔法なんてものに頼らなくてもそれぞれに特殊な力を持ってるが」


シンが気になっていたのはどうやら「魔法」というもの自体に関することのようだ。確かに言われてみれば、何も無いところから爆発を引き起こすという芸当は、加護によるものだと考えるなら自然だが、誰にでも出来ているという時点でそれは有り得ないだろう。



「それについての詮索は、両国で禁止されているのが現状です。フォルリンクレー側にとっても魔法の存在は自国の利益を守るためにも必要なものですから……」


キャッツさんは何やら思うところが有りそうな、そんな感情を含んだ表情をしながらも、俺達の前ではそう答えた。


「まあ、あんたらが気にしてないならそれでいいんだけどな。ただ、どうもきな臭いと思ってよ」


そう言ってシンは話に興味をなくしたのか、そのまま目を瞑って俺達に話しかけないようにさせた。



「質問に答えられず申し訳ありません」


キャッツさんは罰の悪そうな顔で俺達の方を見たが、俺とフィスタはそれを全力で否定する。


「いやいやいや!キャッツさんは何も悪くないですよ!むしろ態度が悪いのはこっちの方で!」


そう言ってフィスタはシンの足を蹴る。だが、シンはそれに反応することさえ無い。


「それなら良いのですが。エルドバへの客人に対して無礼を働いたかと……」


「大丈夫ですよ。いつもこんな調子なので……」


シンは誰に対しても基本的に媚びを売らないし、敬語も使わない。それは会った時からずっとそうだし、ハピナスさんの前でもそうだった。きっとシンはそういう図太い神経でも持ち合わせているのだろう。



「エルドバまでは少しかかります。まだ夜は明けませんので、警備は我々に任せてお休みになってください」


「すみません、気を遣ってもらって」


「エルドバの騎士ですから。お易い御用です」


そう言ってキャッツさんはニッコリと笑い、俺達はその言葉に従って馬車の中でゆっくりと目を閉じた。馬車が地面を蹴る音、時折窓から入ってくる風が心地よい夜だ。















「おはようございます」


翌朝、目が覚めてすぐにキャッツさんがとんでもない至近距離にいたのは、人生でも五本の指に入るほど驚く出来事だった。


「随分気持ちよさそうに寝られていたので、起こすのに少々躊躇ってしまいました」


そう言ってキャッツさんはフィスタとシンの居る方を見る。フィスタは寝相が悪くシンの頬を殴るような構図になっており、シンの眉は怒っている時のようにシワがよっている。



「シン、フィスタ起きて!」


そう言って2人を起こすと、顔を擦りながら2人は眠そうな目を開ける。


「……もうエルドバれすかぁ?」


「……腹、減ったな」


この2人は、どこに行ってもきっとこの調子なのだろう。そう思って俺は諦めることにした。





「皆さん、ようこそエルドバへ。既に門は通っておりますので、安心して外へ出てください」


そう言ってキャッツさんは、俺達を外に案内してくれる。そこに広がっていたのは、今まで見てきた国とは違う、緑に溢れた豊かな国の姿だった。



街中にそびえる巨大な木々、綺麗に整備された水路に、歩く人々の個性的な見た目が目を引く、そんな光景だった。


そこはサドムとはまた違った栄え方をしており、人々の笑顔が印象的だった。


「へえ、騎士以外にも強そうな奴はいるもんだな……」


「皆さんもふもふしたい見た目をしてます……!」


2人の価値基準が、強さ・もふもふ度という事が簡単に分かる旅となってしまったようだ。


「皆さん急な話で申し訳無いのですが、昨日の一件についてエルドバ国内で改めて聴取の方を実施したいという伝達を受けておりますので、それぞれの目的等おありでしょうが、一度護衛団本部まで足を運んでいただけると幸いです」


そう言ってキャッツさんは、護衛団本部の場所が書かれた地図のようなものを渡してくれる。キャッツさんはそれと合わせて、コンパスのようなものを俺に渡した。


「これは一度登録した場所を示し続ける魔導具になります。これに従って行っていただければ、迷わずに辿り着けるかと」


「キャッツさんは何か御用ですか?」


「私は夜の警備にあたっているので、昼の者と交代して参ります。こういう部分は獣としての習性が残っていて厄介なものですね」


キャッツさんはそう言って、去り際に「お気をつけて」とだけ言葉を残して、魔導具が指し示す方とは反対に歩いていった。



「とりあえず行ってみるか、護衛団本部とやらに」


そう言うシンの目は、興奮を隠しきれないようだった。


「シン、誰にでも喧嘩売っちゃダメだよ……」


「当たり前だ。俺を誰だと思ってる」


この言葉は、後に簡単に裏切られることになるのだった。

皆様こんにちは、又はこんばんは。作者のぜいろです!


前回の話から少し長めにあとがきを書こうというモチベーションで動いています。なので今回からは、過去に書いた章について何故その話を書こうと思ったかなどを綴って行けたらと思います。



今回はダリアの旅の仲間であり、ザバンで出会ったシンについてです。


元々この小説を連載する前に、この小説に登場人物や設定が似たものを投稿していた時期がありました(30話くらいでなんか違うとなって、勝手に打ち切ったやつです)。


そこで主人公が一番最初に出会う設定にしていたのも、シンに近い容姿をしているキャラクターだったんですね。今思えばあの時から薄紫色の髪と褐色の肌のキャラについては小説で出したいと思っていたのかもしれません。


この特徴を聞いて察しの良い方なら分かると思いますが、「鉄血のオルフェンズ」に出てくるオルガ・イツカなんですね、ほとんど。


昔アニメで見てた時にカッコイイと思って、そのまま影響されたのかもしれません。今考えると髪の色くらいは変えるべきだったかもしれませんが、性格的な面や生い立ちなどは結構変えてるので許容範囲(だと信じたい)です。




今回はこんな感じで、シンというキャラが生まれた背景についてあとがきさせてもらいました!次回のあとがきでは、シンについての背景をもう少し深掘りたいと思います!




それでは是非ブクマ、いいね、感想等お待ちしております!作者のぜいろでした!

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