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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第3章 水の帝国編 序章 ー顕現する過去の禁忌ー
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番人の少女

「待ちくたびれたわ、お前ら」


目の前の少女はそう俺達に呟く。読んでいた本をパタンと閉じ、雨など降っていないのに鮮やかなフリルに装飾された傘をさした。






エルゴール城 早朝


突然俺とシンの部屋へと押しかけてきたハピナスさんに連れられて、俺達は朝食をとるための部屋へと案内された。


「美味しいっ!」


目の前に準備された豪華な朝食を、フィスタは満面の笑みで次々に完食していく。


「おい、食べ過ぎだぞ」


「はっへ、ほんはひはふんへふほ(だって、こんなにあるんですよ)?」


止めようとするシンの忠告も聞かずに、フィスタはハムスターのように口パンパンに食事を詰め込んでいる。



「フィスタちゃん、ゆっくり食べないとダメよ?」



その様子を微笑ましく見守っていたハピナスさんからの一言でらフィスタは時が止まったかのように硬直した。





「それはそうとして、貴方達には精霊の神殿に行って貰うわけだけど、そのためには1つ壁を越えてもらわなきゃ行けないわ」


ハピナスさんは優雅にコーヒーを飲みながらそう言った。


「壁……ですか」


「とは言ってもそんなに難しいものじゃないわ。シンちゃんは知ってるだろうけど、精霊の神殿に行くためには『番人』の許可が必要なの」


「番人って言ったら、あのガタイのいいおっさんじゃないのか?」


事情を知っているであろうシンは、ハピナスさんの言葉に反応した。


「シンちゃんが居た頃とはサドムの情勢も変わっているの。八騎聖(ウィット・シュバリエ)の一人、オルゴー・ムタファは確かに精霊の神殿の番人の前任者。私の言うこともよく聞いてくれたわ」


ハピナスさんはコーヒーの入ったマグカップを置いて、俺たちの方を見つめる。



「3年前、精霊の神殿に侵入者があったわ。番人であるオルゴーは、その責任を取って番人としての仕事を自ら退いた。今はその後継者である八騎聖(ウィット・シュバリエ)がその役目を引き継いでいるわ」





「彼女は少し、気難しい人だから」









現在 精霊の神殿行き 波止場前



「どんだけ待たせりゃ気が済むんや、お前ら」


目の前の少女は!とても容姿には似つかない言葉遣いで俺達を睨みつける。


「わー、可愛いお洋服ですね!」


フィスタはその眼差しを意に介さないかのように、ほんわかとした雰囲気のまま彼女に話しかける。


「な、なんやぁ!うちはそんな事言われても喜ばんわ!」


そう叫ぶ少女の顔が少し赤らんでいるのは気の所為だろうか。




「んんっ!気を取り直して、うちはサドムを守る西方聖騎士団筆頭騎士、八騎聖(ウィット・シュバリエ)の一人のベル・スニーカーや!」


目の前の(ゴスロリチックな)少女は、腰に手を当てて俺達に指を指す決めポーズのようなものをとった。


「お前みたいなちっこいのが、筆頭騎士?ノエルと同等だって?」


大方の予想通り、シンはベルちゃんに対して食ってかかる。ノエルさんという圧倒的な筆頭騎士の強さを見ているからこそ、その違和感に言及せざるを得なかったのだろう。


「ああ?文句あるんか?なんやったらここでシバいてもええんやぞ、ガキ」


「言ってくれるじゃねえか、チンチクリン」


「チ……!うちはお前らより年上やぁっ!」





ベルちゃん、いやベルさんの一言で、波止場には静寂が訪れた。


「……え?」


「……え?じゃないわぁっ!水帝様に会ったなら分かるやろ、見た目と年齢が同じやと思うなよ!」


ベルさんの見た目と年齢についての話は、そこから10分ほど続いた。





「はぁ、はぁっ……。とにかく、や。サドムっちゅう国は昔から精霊の神殿という場所を神格化して来たんや。どこぞの馬の骨とも知らんやつをすぐに連れてく訳には行かんのや!」


ベルさんは俺達にそう強く言った。


「……じゃあどうすりゃいいんだよ」


1歩も引こうとしないベルさんに対して、シンは呆れたようにして尋ねる。


「それは勿論うちを倒して……」





「ベル」





そこに現れたのは、ベルさんと全く同じ見た目をした女の子だった。少し違うところがあるとすれば、ベルさんがツインテールのような髪型をしているのに対して、現れた少女は長く綺麗な銀髪を真っ直ぐ下ろしていた。



「あ、姉貴っ……!」


「何してるの、貴方」


突然現れた少女は、ベルさんに詰め寄り壁まで追いつめている。


「いや、違うんだよ姉貴っ!こいつらがいきなり精霊の神殿に行くとか言い始めてよ!」


「水帝様からの伝言を忘れたのかしら、ベル」


「……あ」



何かに気がついたような顔をしたベルさんは、低い身長を更に縮こませて、姉と呼ぶ少女の後ろに隠れた。


「いや、聞いてたんは聞いてたんよ。ただその、ド忘れ、っていうか……。ははは」


ベルさんはあからさまに俺達と目を合わせないようにしている。下手くそな口笛も相まって、焦っているのが見え見えだ。



「妹が申し訳ありません、ダリア様、シン様、フィスタ様。私はベルと共に精霊の神殿の番人を務めております、ゼル・スニーカーと申します」


そう言って銀髪ロングの少女は深々とお辞儀をした。


「だ、大丈夫ですよ。シンも冗談であんなこと言っただけなので……」


「いや、俺は本気だった」


なぜそこで意地を張る……。


「私達に敬語など不要です。水帝様の客人ですし、それに私達は八騎聖(ウィット・シュバリエ)とはいえ、まだ子供ですので」


「子供……?」


「おい、詳しく聞かせろや」


シンは今にも噴火しそうな勢いでベルのことを睨みつける。額には血管が浮きでて今にでも手を出してしまいそうだ。




シンの怒りがある程度落ち着いたところで、ベルさん改めベルちゃんは話し始めた。


「水帝様の客人とはいえ、ただで精霊の神殿に通す訳にはいかんのや。お前らも知ってるかもだが、あそこは()()加護を受け取る場所に過ぎないからな」


「本来……?」


「せや。サドムの聖騎士を含め、世界の上層部は精霊の神殿のもう一つの意味を知っとる」


「勿体ぶらねぇでさっさと教えろ」


「せっかちやな、ちゃんと教えたるわ。精霊の神殿は、加護を持つ者と持たぬ者では行く理由に違いが生まれるんや。精霊の神殿は一部ではこう呼ばれとる」






「恩寵と忘却の神殿ってな」

作者のぜいろです!


双子っていいですよね

同じ血を受け継いでて、見た目が同じようになる(一卵性の場合)って


可愛いとなおよしです

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