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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第3章 水の帝国編 序章 ー顕現する過去の禁忌ー
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シンの過去 -5 ソニーユ・シャリオット

「……加護の受け取りに成功したのは、君だけのようだな」


オルゴーさんは、ブツブツと文句を言っているオノンを差し置いて、俺にそう言った。


「……君はこれから聖騎士となる道を歩むことになるだろう。風の帝国リカネルの学院が、君を待っている」


オルゴーさんはそれだけ俺に伝えて、足早に精霊の神殿を離れた。オルゴーさんによれば、この場所は長居すると危険らしい。神の意思によるものか、ただ人智を超えた不可解な現象か、それは誰にも分からないらしい。




「……ビュケルの港に戻ろう。……船を出してくれ」


オルゴーさんはここまで連れてきてくれた船の操舵手に向かってそう言うと、精霊の神殿から離れるようにして船はサドム本土へと戻りはじめた。



「あの、オルゴーさん」


「……どうした?」



俺は少し躊躇いながらも、オルゴーさんに淡い意識の中で見た()()()()()()()について尋ねた。



「……サドムでの古い言い伝えに、こういう話がある。……『加護』は、()()()()()。……そしてその自我によって、加護を与えられた主人を守るために、その力を貸すのだと」


オルゴーさんの話によって、俺はあの何も無い世界で話した内容が理解出来ていくようだった。










ーサドム首都、ビュケルー



「おい、なんだこの騒ぎは!」


その日ビュケルには、爆音が響き渡った。そして燃え盛る炎の中に、2人の人影を見た。崩れていく家屋の中心で、膝をつく影とその首元に剣を当てる影。



「だ、誰かそこに居るのか!?」


街の人間はそう尋ねた。しかし、炎の向こう側から返事が返ってくることは無かった。




ザシュッ



数多の騒音にかき消され、その音を聞いた者はいなかった。ただ、膝をついていた影が力無くその場に倒れ込んだ、その様子だけは見て取れた。



「……さようなら、()()()()



もう1つの影は、どこか虚ろげだった。











ー数時間後、ビュケルの港ー



「オルゴーさん、大変です!」


俺達が精霊の神殿から戻り港に着いた時、数人の騎士達と思われる人々が、オルゴーさんの帰りを待っていたようにして船の方へと走り寄ってきた。


「……どうした」


「ビュケル中心部で巨大な爆発があり、被害者も出ています!」


その騎士からの報告に、オルゴーさんは驚きを隠せない表情をしていた。



「……首謀者は?……捕まったのか?」


「それが……」





「西方聖騎士団の聖騎士の一人、ソニーユ・シャリオットです」





俺は、その名前を知っている。


かつてガガリアンさんが俺に見せてくれた家族の写真、そこに写る少年、ガガリアンさんの甥にあたる少年の名前は、『ソイーユ』だ。


俺は突然の出来事に、思考停止していた。



「……被害者は、居るのか?」


オルゴーさんのその言葉に、絶望的な返事が返ってくる。



「一名その場に死亡者がおり、現場に到着したファンドさんによって、救国の英雄『ガガリアン・シャリオット』殿であるとの……。報告を受けました」






そこから先は、記憶が曖昧でよく覚えていない。ただ、死体が大きく焼けていることから、子供には刺激が強く会わせることが出来ないということ。


そして、首に提げていたネックレスが、身元を証明する唯一の物だったという話を、俺とオノンはファンドさんから聞いた。


正直、あまりの突然の別れ、そして衝撃の大きさに俺の体はついていけなかった。





そしてもう1つ、大きなニュースが流れた。雷の帝国ファルハラムと風の帝国リカネルの世界を二分する大戦にある程度の終止符が打たれ、終戦協定に移行するというものだった。



オノンは戦地から無事に帰ってきたハーシュ辺境伯、つまりは俺の父にもあたる人物との再会を果たし、家へと戻って行った。


俺も同行するか尋ねられたが、ガガリアンさんとの約束、受け取った加護への宿命のため、オノンとは別れることを決めた。




ただ、俺の聖騎士への道を邪魔してきたのも、何の因果か、あの男だった。









ー西方聖騎士団本部、統帥室ー



「……ソニーユは、まだ見つからんのか」


「はい……。現在西方聖騎士団の聖騎士、約100名を動員して捜索にあたっておりますが、手掛かりさえ掴むことができません……」



統帥室に居たのは、この事件の指揮を執るファンド・シャリオットだった。



「お前にとっても血縁者だろう、あいつは」



現統帥のボルザーク・ムタファは、目の前にいるファンドに対してそう諭す。



「……ムタファはこの件には深くは関わらん。シャリオットの内々で処理するよう努めよ」


ボルザークの言葉に対して、ファンドは沈黙をもって答えた。




「それと、新しい『()()()』が居るようだな。お前の知り合いか?」


「いえ、私ではなくガガリアンが面倒を見ていた子供です。……リカネルの学院とは既に話はつけてあります」



ボルザークは手を顔の前で組み、神妙な面持ちを浮かべた。




「……名前は?」


ファンドは一呼吸置いてから答えた。




「シン・ネオラルドです」










ービュケル郊外ー


俺は、空の星を見上げながら、草原の丘に寝転んでいた。ここはビュケルの中心部から大きく外れた所にあり、人気などまるでない。


「……ガガリアンさん」


俺が加護を受け取っている間に、ガガリアンさんに何があったのかは分からない。そして、甥と言っていたソイーユという男が、何の理由でガガリアンさんを殺したかは分からない。




「涼しい、夜だね」




その男は、気がつけば俺の後ろに立っていた。



ガガリアンさんに良く似た面持ちに、あの写真で見た光景をはっきりと覚えていた、いや、嫌でも思い出した俺は、目の前にいる男がソニーユ・シャリオットであるということを理解していた。


ガガリアンさんと同じ、金色の透き通った髪に緑の綺麗な色をした目は、彼がガガリアンさんの血縁者だろうという事実を嫌でも伝えてきていた。



「……何の用だ」


「ははっ、初めましてなのに随分と当たりが強いんだね」


ソニーユは俺の隣に座り込み、同じように空を見上げた。




「君は、僕のことを知ってそうな顔をしてるね」


「……」


ソニーユの問いかけに、俺は何も返さなかった。その事が逆に、ソニーユには自分のことを知っているという確信に至った理由になったのだろう。



「……僕には僕の、正義があるんだ。水帝の矛としてのシャリオット家、その威厳や威信を損なう訳には行かないんだ。()()()()()()()()……」


「……それが理由かよ」


俺の言葉を聞いて、ソニーユは話すのをやめた。そして俺の方を見て言う。




「君は、この世界のことをまだ、()()()()()()んだよ。まあ、僕も同じだけど」


ソニーユの言葉の意味が、俺にはよく分からなかった。だが、ソニーユからは何の説明もなされていない。




「……それがガガリアンさんを殺す理由になるのかよ!」



俺は気が付けば、ソニーユの首元を掴み、草原に押し倒すような形になっていた。




「……僕を、殺すかい?」


ソニーユの瞳は、それでも曇りのない真っ直ぐな色をしていた。

作者のぜいろです!


今回登場した、ガガリアンの甥にあたる人物、ソニーユ・シャリオットは過去編以外でも登場する予定がありますので、ぜひご期待ください!

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