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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第3章 水の帝国編 序章 ー顕現する過去の禁忌ー
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シンの過去 -2 重ねる面影

「おはよう!二人とも早起きだな!」


ガガリアンさんと迎える朝は、随分と早いものだった。オノンの召使いのような仕事をしていた時にも勿論オノンよりも早く起きようとは心掛けていたが、その非ではない。


「おはようございます」


「……」


寝ぼけた目を擦るオノンに対して、俺は背筋を伸ばし、憧れのシャリオット家の人と同じ家で過ごせることを幸運に思っていた。


「お、シンは早くても大丈夫そうだな。オノンは少し早起きは苦手か?」


そう言ってガガリアンさんは、朝食の準備がなされた部屋へと俺達を案内する。


そこにあったのは簡単なパンと付け合せだけの質素な食事。俺には見慣れたものだが、ある程度裕福な生活を送っていたオノンには耐えられないかもしれない。



「さあ、飯にしよう」





朝食を食べながら、ガガリアンさんは俺とオノンに尋ねる。


「お前達って何歳なんだ?ハーシュ殿からは息子って事と、まだ幼いってことしか聞いてなくてな」


ガガリアンさんはパンを口いっぱいに詰め込み、俺達と目を合わせる。



「俺は、今年で10歳になります」


「……僕も同じ」


目の前の食事が進まないオノンは少し不貞腐れながらもそう答えた。



「そうかそうか!シャリオット家にも同じくらいの俺の甥っ子が居てなぁ。最近は会ってないが、これが可愛いんだ」


ガガリアンさんはそう言って、本棚のような場所から写真を取り出してくれる。そこには、腕を失っていないガガリアンさんと、ガガリアンさんと同じ綺麗なブロンドの女性、その腕に抱えられた子供が写っていた。



「ここに写ってるのは俺の妹のアイシャ。そしてその息子で、俺の甥でもあるソニーユだ」


そこに写る子供は確かに幼く、5~6歳くらいに見えた。



「こんな体になってから、アイシャにもソニーユにも会えてない。俺は、シャリオットから追い出された立場だからな……」



そう言ってガガリアンさんは少し悲しそうな顔をした。写真を持つ手は少し震えているようにも見える。



「だから、俺はお前らのことを引き取れて嬉しいんだ。まるで息子でも出来たみたいでな」


ガガリアンさんは照れ隠しをするように再びパンを頬張る。少し涙目になっているのは気のせいだろうか。









「そうか、シンは聖騎士になりたいんだな」


「はい」


「おいおい、そんなにかしこまらなくても良いんだぞ?だから、敬語は無しだ」


俺は、ガガリアンさんに毎日のように剣の稽古をつけてもらっていた。右腕を失い前線から引いたとはいえ、そこら辺の子供にやられるような剣の腕では無いようで、俺は簡単に倒され続けていた。



「……聖騎士になりたいなら、()()()()殿()に行かないとな」



いつものように剣の稽古をしながら、聖騎士になりたいという俺の夢に対して、ガガリアンさんはそう答えてくれた。


「精霊の神殿?」



「ああ、サドムが管理している禁域で、この世で唯一後天的に『加護』を受け取ることが出来る場所……。聖騎士になるには、加護を持っていることが条件の一つだからな」



ガガリアンさんは木刀を下ろし、その場に座り込んだ。



「この世には『選ばれた者』とそうでない者がいる。精霊の加護を受け取れる人間は限られている。シンもこの国の皇帝様のことは知ってるだろう?」


「……ラハン家?」


「そうだ。今の世界を創った五人の英雄、俗に言う五大英雄の1人、エルゴール・ラハン様は、この世に『加護』という概念を作ったお方だ。彼女は精霊との交流を通じて加護を後天的に人間に与える術を生み出したんだ」



エルゴール・ラハン。水を司る先天的な加護の持ち主。五大英雄の一人として数えられ、サドムを建国した初代水帝である。



その名前こそ聞いたことはあれど、『加護』という力、そして精霊の神殿については何も知らなかった。



「行ってみるか、精霊の神殿へ」


「……いいの?」


「ああ、精霊の神殿は禁域だが、来る者を拒む場所じゃない。ただ、水帝の矛と盾であるシャリオット家とムタファ家によって厳重に管理されてるってだけだ。追い出された身とはいえ、伝手が無いわけじゃない」



そう言ってガガリアンさんは笑ってくれた。







ーサドム王都、ビュケルー


「何で僕まで着いてこなきゃいけないんだよ」


俺とガガリアンさんに連れてこられるようにしてサドムの王都、ビュケルへと訪れたオノンは、長旅に不満が溜まっているようだった。


「はははっ!精霊の神殿は誰にでも加護を与えてくれる可能性があるからな。あそこで待っているのは、『選ばれた者』かどうかの選別だけ。だから、オノンも行って損は無い」


「……分かったよ」


オノンはやはり気が進まないようだが、面倒を見てくれているガガリアンさんの頼みとあっては断れないのか、着いてきてくれた。




「さあ、行こうか。精霊の神殿の入口へはビュケルの港から行ける」


ガガリアンさんに連れられて、俺とオノンは精霊の神殿へと向かうのだった。

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