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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第2章 霧の王国編 ー霧龍の民と自我無き神獣ー
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魔獣討伐作戦 -9 本当の強さ

「どうした、さっきまでの威勢はどこに行った?」


ファワンシーは、ダリアの身体から溢れる邪悪な殺気に押されていた。自分が相対した、どのような敵よりも明確な殺意と、純粋な悪意がファワンシーに取り憑いているようだった。



「くっ……!」


ファワンシーは切られた自分の足を握りしめ、元々自分の足があった場所に押し付ける。



ファワンシーの足は鎧ごと元通りになっており、剣をダリアの方へと再び構えた。



不死族(アンデッド)の類か、懲りもせずにこの世にまだ居たとはな」


ダリアの姿をしたラグドゥルはファワンシーに対してそう呟いた。ファワンシーはそれが当たっていた事に対して驚いたのか、剣を構える手が震えているようにも見える。


「何者だ、お前は……!」




ファワンシーは先程までとは別人のようにして自分に対峙するラグドゥルへとそう疑問を投げかけた。ラグドゥルはフッと笑い、口を開いた。



「強者」





ファワンシーは気が付くと、その頭だけが切り取られ、遥か上空へと連れ去らていた。



「な、何だ今のは……!」



ファワンシーは決して、油断などしていなかった。それどころか、どこから攻撃が来てもいいように、注意の導線を辺りに巡らせて居たはずだった。



「別に?随分とトロいもんだからお前の首を切り取ってここまで来たんだが?」


ファワンシーの理解の範疇を越えた事象が、そこでは起こっていた。



目の前にいる少年の姿をした悪魔は、ファワンシーの極限の注意を易々とくぐり抜け、ありえない事をやってのけたのだ。



「ただ、不死族(アンデッド)はやはりしぶといな……。」



ラグドゥルは、ファワンシーの首を空中へと投げ、そこに向かって手を構える。



「消し飛ばしても、死なないのか?」


ラグドゥルは手の内側に黒い痣を集め、それを凝縮させる。強大なエネルギーを孕んだその塊は、黒い雷のようなものを纏っていた。



黒砲(プルート)




ラグドゥルがそう呟いた瞬間、黒く禍々しいレーザーのようなエネルギー弾が発射された。その威力は、近くにある巨大な生物の骨と思われる物を、触れた瞬間に塵にする程だった。





「グォオオオッ……!」




黒い光の中で、一つの生命が消え行く音がした。








首が取られた身体だけのファワンシーは、動くことも無くそこに立っていた。


「やはり不死族(アンデッド)(コア)を壊すに限る。まあ、脳にあるかは賭けだったが」



そう言ってラグドゥルはファワンシーの身体に触れた。ラグドゥルが触れた部分から、ファワンシーの身体がボロボロと崩れ落ちて行く。



「亡き者よ、本当の強者はその強さを見せびらかさない。それに気がつく前に戦いが終わるものだ」



塵となったファワンシーに向かって、ラグドゥルはそう呟いた。






「まあ、今回は1人で戦えた方ですかね、主よ。ただ、こんな敵に苦戦するとはまだまだのようですね。早く精霊の神殿へと赴いて頂かなければ」



そう言ってラグドゥルは胸に手を当て、意識を同化させる。





闇の使者よ、戻って来られよ






俺が目を開けるとそこには、ファワンシーの姿は無かった。いつものように、気がついたら戦闘が終わっている。しかし今回は、もう一つの()()が戦い方を見せてくれたような気がする。



まるで夢のように、淡く記憶が残っているのだ。



「……カイさんっ!」


俺は近くに倒れているカイさんを起こし、意識がまだ完全には失われていないことを確認する。


「聞こえますか、カイさん!」


「……あぁ、大丈夫っす」



そう言ってカイさんは、弱々しく親指を立てた。








「……なんでそんなに余裕そうなんだよ」


イギーとの戦闘を終えたシンとガゼルは、フィスタ、シスタナシア、ノエルの3名との合流を果たしていた。モンローはメイナ王女に現状を報告するために、国境付近へと戻っている。


シンがそう言ったのは、ノエルがあまりに涼しい顔をしているからだった。


「その程度の魔獣だったということだ。マービアの湖で苦労したらしいが、私にはよく分からん」


「おいおい聖騎士様よぉ、喧嘩売ってんのか?」


今にも一触即発な2人を止めるようにして、フィスタとシスタナシアが間に入った。



「お二人共、魔獣は倒されたかもしれませんが、私達の目的はまだ果たされてはおりません。リーシュタッド家の方々を救出しなくては」


「フィスタの言う通りですよ、ノエル様。感情を表に出されるなんてノエル様らしくありません!」



女性陣のフォローもあってか、2人が剣を交えることはなく収まりそうだった。



「それで、人質がいる場所の目処はたってんのか?このだだっ広い禁域の中を歩いて回るのは骨が折れるぞ?」



シンの言葉に対して、ノエルが返す。


「姫様、メイナ王女は元より人質が囚われている場所をいくつか候補地に絞っている。その中でも最も有力なのが、()()()()()()()()()()()



その言葉に対して、他の4人は言葉を詰まらせる。最初から分かっていた事実、そして最も危惧していた事態。



「知っているだろうが、神獣は何も聖獣が進化した姿()()()()。神の使いとして崇められ、人には制御出来ない生物。だからこそ私達は神獣の居る場所を聖域では無く、『禁域』と呼ぶ」



「ジュカテブラは、聖獣ではないのですか?」


フィスタが真っ当な質問を投げかける。気になって然るべき事だろう。


「厳密に言えば、違う。他の神獣はいずれも、聖獣か魔獣が神の加護を受けて神獣へとなった身。それに対してジュカテブラは、かつて神だった『堕神』の成れの果てだ。そして神からその身分を堕とされる時に、その『自我』を奪われた。魔獣達にとって利用しやすい禁域となったのはそのためだろうな」



ノエルの言葉で、聖騎士団のように情報網がある訳では無いフィスタとシンは納得した。魔獣達が神獣に疎まれることなく、この場所をアジトにできたのは、理由があったのだ。




「自我を持たぬ神獣故に、人が居ても襲うことは無いだろう。逆に言えば、命令一つで人質を皆殺しにしてしまう危険さも孕んでいるだろうがな」



そう言ってノエルは、ジュカテブラの遺跡群の最奥の地の方向を向く。



「早急に行かねばならないだろう。王妃のような犠牲者が居ないとも限らない」



その言葉に、他の面々は緊張を走らせた。







「ん、あれは……?」


ジュカテブラの遺跡群最奥の地を目指す途中で、シンは空を翔る人間を見つけた。その影は徐々にシン達に近づき、地上へと降り立った。


「ごめん、カイさんを連れて行ってたら遅くなっちゃって」


「無事だったんだな、ダリア」


久しぶりの旅友との再開に、シンは笑顔を見せた。



「人手は多い方がいい。今まで以上の敵が待っていないとも言いきれないからな」



ノエルは脳裏に微かによぎった、仮面の男のことを思い出していた。



(あの男、一体何者だ……?)



ダリア、シン、フィスタ、シスタナシア、ガゼル、ノエルの6名は数分後、最奥の地へとたどり着いた。

作者のぜいろです!

今回のお話で魔獣討伐作戦については区切りとなります!ただ、ミスティアを巡る話についてはまだ続きますので、今後の展開にご期待ください!




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