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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第2章 霧の王国編 ー霧龍の民と自我無き神獣ー
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魔獣討伐作戦 -7 神拳

ーシン、ガゼル組ー



「クソッ!全然近づけてくれねぇな……」


シンとガゼルは、子供のような姿をした、イギーと名乗る魔獣と相対していた。


「……地面を自在に変形させ攻撃する。それだけでなく割れた地面の欠片さえも飛ばしてくる……。念動力のような力か」



西方聖騎士団の一人、ガゼルは相手の能力を冷静に分析していた。



「ご名答〜」


イギーは地面をせり上げ、高みの見物を決め込んでいた。



「僕の力は生まれつきのものでね。加護ではないけど、自分の周りの物を自由に操れるのさ。その範囲はざっと150メートルってとこかな」



そう言ってイギーは自分の周りに尖った土片を漂わせる。




ビュンッ!ズドンッ!




高速で打ち出される土片達は、シンとガゼルへと降りかかる。シンは自身に速度特化(スピードシフト)を付与し、それを躱す。


ガゼルは剣を振るい、自分の方へと向かってくる土片をひとつ残らず破壊した。



「へぇ、凄いね」


イギーはパチパチと軽い拍手をし、ガゼルの方を見る。


「もしかして君って聖騎士?」


「……だったらなんだ」


「昔に殺したことがあってさ。あの時の感覚は今思い出しても興奮するなあ」



そう言ってイギーはケタケタと笑う。




「確か、諜報部隊の人間とか言ってたかな?僕の周りで色々嗅ぎ回ってたからウザったくてさ」



そのイギーの言葉に、ガゼルは反応する。



「……2年前、私の同胞が魔獣に殺害される事件があった。一人で調査に赴き、見つかった時には(はりつけ)のようにして惨殺されていた。……お前がやったのか……?」



ガゼルは冷静さを装いながらも、イギーに尋ねる。



「あ、それ僕だぁ!何か妙な能力を手から出てたからさ、手を壁に固定したら動けなくなったみたいで、面白かったなあ」



イギーは高所で笑い転げる。その様子を見て、シンは怒りの表情を見せるが、それ以上にガゼルは激昂していた。



「……そうか、お前がやったんだな」



その言葉には、ガゼルの怒りと悲しみが孕まれているようだった。シンは身の毛のよだつような感覚に陥り、それがガゼルの放つ圧によるものだと分かった。



「……シン、と言ったか。こいつの相手は私に一任して欲しい」



先程までシンとコミュニケーションをとることすら躊躇っていたガゼルは、シンに向かってそう言った。




ガゼルの意図を汲み取ったのか、シンの側へとシーフ・バードが飛んできた。



「あいつの想いも分かってやってくれ。ガゼルは元々聖騎士団に配属される前に世界連邦の諜報員として活動してたんだ。その時の上司に当たる人間が、あの魔獣が殺したと言った人間なんだよ」


シーフ・バードは、ガゼルの過去を真面目に語る。シンは元よりガゼルの態度を見てから邪魔するつもりは無かったが、それを聞いて剣を下ろす。



「分かったよ……」



そしてシンはガゼルに向かって手を向ける。



速度特化(スピードシフト)50%

攻撃特化(アタックシフト)50%


ガゼルは拳を握り、自分の中に力が溢れてくるのを感じる。



「……お前の加護は自分の力を強化するものだと思っていたが……」



「基本はな。俺の『特化の加護』は、合計の上限が100%って決まってる。自分以外に特化をかけるのは自分の能力をあげる幅が下がるってデメリットがあるから普通は使わないけどな」


シンは続ける。


「それに、普通の人間は特化の上昇幅に身体がついて行かねぇ。だけど、聖騎士のあんたなら耐えられるだろ?」



そう言ってシンはガゼルの方を見る。ガゼルは小さく頷いた。


「感謝する」


「ああ」


2人の戦士は、感覚を共有した。





「なんか感動シーンみたいになってること悪いけどさぁ」



それを断ち切るようにしてイギーはガゼルの方を見る。


「君達は結局僕に近づくことすら出来てないよね?どうやって攻撃するつもり?」



それは、現実的な問題としてシンとガゼルに突き付けられていたものだった。


イギーが放つ土片を避けながら、高所にいるイギーの元へと辿り着くことは、物理的に不可能と言った方がいいものだった。





「……すぐにそこから下ろしてやる」



ガゼルは構えていた剣を腰に差し、素手へと変えた。



「え、武器も持たずに戦うつもり?」


ガゼルの行動にポカンとしているイギーに対して、ガゼルはそれを無視するようにして言う。




「……俺には加護が無い」



「は……?」


イギーとシンは重ねるようにしてそう言った。




「俺はただ一つ、この身だけで聖騎士団の準筆頭騎士まで上り詰めた」


ガゼルは右手を後ろに引き、それに左手を合わせるような姿勢をとる。力をためているようなポーズだ。




神拳 ー 一賦(いちぶ)



ガゼルは右手を思い切り突き出し、イギーのいるせり上がった土の塔のような物へと拳を振り抜いた。




ドォンッ



振り抜いた拳に遅れるようにして、音が後から着いてきた。そしてそれによってとてつもない風圧が辺りを支配する。



「うわっ!」



その風は、はるか遠くに居たはずのイギーの元へと届き、塔の上に居られないほどのものとなってイギーを襲う。




「……隙が出来たな」



ガゼルはシンの速度特化(スピードシフト)のおかげもあって、イギーの居る塔の麓へとたどり着いていた。



「落ちろ」



神拳 ー 双来(そうらい)



ガゼルは両手で塔へと思い切り拳をぶつけた。その衝撃は塔を駆け巡り、巨大な亀裂を作った。



「クソオオッ!」



イギーは念動力を働かせ、塔が崩れないように保とうとする。



塔の崩壊はピタリと止まり、イギーはホットする。しかし、その背後には怒りを纏った聖騎士が立っていた。


「もう一度言おう。隙を見せたな、魔獣」




神拳 ー 参常(さんじょう)



イギーの腹部に、ガゼルの強烈なアッパーが突き刺さる。その衝撃は地上で待機しているシンとシーフ・バードにも見えるほど、空気を震わせていた。






イギーによる支えを失った土の塔は、壊れていく。参常を放ったガゼルは、崩れる塔と共に地面へと落ちていった。



「……大丈夫かよ」


「すまん、力が入らない」



シンは空中で、落ちてくるガゼルの体を受け止めた。そのまま崩れていく土の塊を足場にして、シンとガゼルは地上へと降り立った。




「……仇は取りました、シアさん」


ガゼルはシンにだけ聞こえるようにそう呟き、意識を失った。

作者のぜいろです!



最近プライベートが忙しく、投稿が久しぶりとなります!魔獣討伐作戦も残りわずかとなりますので、是非今後の展開にご期待ください!




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