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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
序章 アラポネラの神林編 ー漆黒に嗤うー
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アラポネラの神林 -2 闇の使者

神林の守り主であるアラポネラという神獣に、ゴーシュさんの立ち会いのもと神林を使うことを許された俺は、ゴーシュさんによって自分の「加護」について知ることから始めていた。


「昔戦場で出会った加護を持つものたちは皆、精霊の神殿で後天的に加護を受け取っている。五大英雄の末裔たちのような()()を除いて、それが普通のはずだが、どうやら君には先天的に加護が備わっているらしい」


ゴーシュさんは俺がわかりやすいように、この世界の地図を紙に書いて教えてくれた。


この世界は、五大帝国という5つの巨大な王国と、その間を埋めるようにして多くの国が地形をなしているらしい。


五大帝国は、かつての大戦を終戦へと導いた「英雄」達によって建国された国らしい。





世界地図中央に位置する最も巨大な国、炎の帝国『アルカラ』


世界地図北部に位置する山々に囲まれた国、雷の帝国『ハルファラム』


世界地図西部に位置する海と共に生きる国、水の帝国『サドム』


世界地図南部に位置する研究と発明の国、光の帝国『オルバラン』


世界地図東部に位置する聖獣を従える国、風の帝国『リカネル』





俺とゴーシュさんが今いるアラポネラの神林は、アルカラとサドムの間程にあり、どの国からも占有を受けない非占領地域、つまり禁域として扱われている。


ここで言う禁域とは、誰かによって侵されることの無い固有の土地を意味するらしいが、単にその危険度から侵入を禁止された場所との意味合いもあるらしい。




まあ、アラポネラの威圧感を知っていればそうなるのも当然のことである。



ゴーシュさんの言っている、加護を受け取れる場所、「精霊の神殿」は、ここから西にある五大帝国の1つ、サドムによって管理されている場所のようで、彼らの協力がなければそこに入ることが許されない、まさに()()だそうだ。



「まあ、とにもかくにも君自身が加護のことを知らなければ、いずれまた人を殺してしまうかもしれない。戦場で加護に自我を奪われ、殺戮兵器と化した人間を私はたくさん見てきたからね」


加護を受け取ることが出来る人間は一定数いるようだが、その制御方法や扱い方を知らなければ、自分さえ傷つけてしまうものになる、ということだ。その事は同じ街の人間を殺してしまった俺が一番よく分かっている。




「君は、自分の力について何か知っていることはないかい?」


ゴーシュさんに尋ねられた俺は、意識を失っている間、そして多くの人を殺してしまったと思われる前に聞いた()について話し始めた。





「脳に直接、話しかけられるような声が聞こえることがあるんです。そこで聞いた言葉の中に、()()使()()という気になるものはありましたけど…。それ以外はあまり覚えていないんです」



俺のその言葉を聞いた瞬間、ゴーシュさんの顔が一瞬曇ったように見えたが、すぐにいつものゴーシュさんの顔に戻った。



「闇、か……。それがもしかしたら君の加護なのかもしれないな。なに、自分の影を操ったり、夜の間に身体能力がある加護などを使う者はいた。君もそれに近いものがあるのかもしれないな」



ゴーシュさんの知っている、闇に関連しそうな加護を持っていた人達の話を聞き、俺は加護の使い方についてある程度学ぶことが出来た。



「先程言った話と矛盾するようだが、私が聞いた話では、加護という力はどうも、自分の身を加護に預けるようなイメージらしい。加護にも自我があり、それと対話することでイメージを具現化する、と言った方が分かりやすいだろうか。君が聞いた()というのも、もしかしたら加護の自我なのかもしれない」


ゴーシュさんが今まで聞いたことのある加護についての情報を頼りに、俺は自分の加護と対話することを試みることになった。




「心配はいらない。君は街の人々を殺してしまった力を解放するのが怖いかもしれないが、戦場で鍛えられた私もやわではないし、何よりこの森にはアラポネラがいる。君が私を傷つけようとするならば彼が私や森を守ってくれるはずだ。ただ、君は多少無事では済まないかもしれないがね」


ゴーシュさんは俺とある程度距離をとり、加護が暴走した時に備えて装備を整えた。ゴーシュさんが戦場でつけていた装備そのままらしい。



「では、やってみようか」


ゴーシュさんの言葉を合図に、俺はその場に横たわり、そっと目を閉じた。


「後のことは、お願いします……」





闇の使者よ


私の話を聞く気になったか


この時をどれほど待ちわびたことか


世界を手にする時も遠くはない


一つだけ訂正しておこう


()()()()()()ものと我を同じにするな


もう一度言おう


貴方は選ばれたのだ


主に対し我が力を貸すのは当たり前のこと


忘れるな


力を()()()()その日まで







「さて……」


ダリアが目を閉じて数分経ったが、未だに動きはない。加護と対話する場面を見てきたわけではないため、私もいくらか緊張していた。





「闇の使者か……。なぜ彼がその名前を知っている……。まさか本当に……?」




そんなことを口にした途端、ゴーシュは全身の毛が逆立つような寒気に襲われた。


アラポネラが発するような圧ではない。もっとなにか、別のものだった。





突然、そこに眠っているようにも見えるダリアの体を、背中の方から出てきた黒い触手のようなものがゆっくりと締め付けていく。


痣のような、刺青のような、黒い物体がダリアの身体中に広がっていくのが分かった。そしてその物体が広がるほど、体が感じる寒気は増していく。



その気配に気がついたのか、先程姿を消したはずのアラポネラがすぐ側まで寄ってきていた。



「油断するなよ、アラポネラ。()()はもう、先程のダリアとは別のなにかだ」


アラポネラは穏やかな目から一変して、森への侵入者を見るかのような、捕食者の目へとその形を変えた。目の色は赤く充血してしまっている。




目を閉じて横になっていたはずのダリアだったものは、ゆっくりと立ち上がった。体中を黒い物体が覆い尽くし、顔以外は隠れてしまっていた。




「……随分と、早い目覚めだな」





ダリアの形をしたものは、突然口を開いた。声は、何人もの人間が話しているような重なり合った不気味な声であった。



「私の主に手を出さないで頂こう」




ダリアは目を開き、ゴーシュを見つめた。その目は、先程までの綺麗なオッドアイではなく、瞳孔が黄色く光った、別の人間のような見た目をしていた。

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