魔獣討伐作戦 -2 対峙
ーダリア&カイ組ー
俺は、ミスティア王国兵士長補佐のカイさんと共に、ジュカテブラの遺跡群、中央左ルートへと進んでいた。
「ダリアさんはザバン革命の関係者っスよね!」
カイさんは俺よりも少し年上の女性だ。だが、この年齢で兵士長補佐をやっているのは、それ相応の実力があるということだろう。
薄緑色の髪の毛がふわりと揺れる。可愛らしい容姿をしているのに兵士をやっているとは驚きだ。
「一応、そうですね……。俺は途中で気絶しちゃったので、あんまり覚えてないんですけど」
「凄いッスね!ザバンでの悪政はミスティアまで聞こえてましたけど、他の国からは干渉しにくかったから、助かったっス!改めて感謝するっス!」
カイさんは俺の手を握って大きく上下に振る。女性とはいえ、カイさんは俺よりも背が高く、完全に俺が振り回される構図になる。
その時、目の前に黒いオーラを身にまとった犬のような生物が現れた。1匹ではなく、多数でだ。
「来たっスね……。こいつらは狙ってる魔獣じゃなくて下位の魔物っス。ただ、牙には腐食攻撃があるので注意するっス!」
カイさんは犬の魔物に対して切り込んでいく。俺もそれを補助できるように、武器を取り出す。
闇纏 ー黒剣&黒脚ー
俺より先に魔物と相対していたカイさんは、三匹の魔物に囲まれながらも、その攻撃を避け、カウンターを叩き込んでいた。
俺の前にも同じ数の犬の魔物がおり、牙をチラつかせて唸っている。
「ガゥッ!」
左にいた魔物が飛びかかって来て、それに合わせるようにして中央と右にいた魔物も俺へと向かってくる。
俺は牙に気をつけながら、最初に飛びかかって来た魔物を顎の下から黒脚で蹴りあげる。魔物はキャウンッ、という悲鳴をあげて空中へと飛ばされる。
真ん中と右から来ていた魔物と距離をとるため一度後ろへ下がり、黒剣を構える。
「……俺に力を貸せ、黒剣っ!」
俺が手にしていた黒剣は、黒い禍々しいオーラをその本体から放ち始める。
その気配を察してか、魔物達は身震いし、その場に立ち止まる。俺を威嚇するような、そんな姿勢へと変わる。
「俺もこの技の加減は出来ないからな、死にたくないなら上手く避けろよ……!」
闇技 死を纏う大剣
俺の手にする黒剣は、更に禍々しいオーラを纏った大剣へと変化する。俺はそれを後方へと振りかぶり、思い切り魔物へと向かって振り下ろした。
ピカッ……ドドオオオオンッ!
一瞬、夜の荒野にその場を包み込む程の黒い光が瞬いた。そして、とてつもない暴風が辺りを支配する。
「……ふうっ」
黒剣と黒脚を解放し、俺は元に戻った。たかが下位の魔物に、とも思ったが、戦闘に備えて体を起こすことは重要だ。
「す、凄いっスね!」
近くにいたカイさんが、俺の方へと歩いてきた。その顔は宝物を見つけた子供のようになっている。
「まだまだ慣れてないけどね……。出し惜しみするのはやめるって決めたからさ」
「流石っス!」
「ほう、魔犬程度は処理できる実力はあるようですね……」
その時、何も無い空間から見覚えのある姿をした魔獣が現れた。
その魔獣は、パチパチと拍手をしながら近づいてくる。俺とカイさんは剣を構え戦闘態勢をとるが、その魔獣は余裕そうな空気を醸し出している。
「強き者よ……。我と戦い、武勇を示せ……。我が名はファワンシー……。力に取り憑かれた亡霊だ」
ファワンシーと名乗った魔獣は、またも何も無い空間から巨大な剣を取り出した。
「カイさん、ここからが正念場です」
「っスね……」
俺とカイさんは、気合いを入れ直し、目の前の魔獣に相対した。
ーフィスタ、シスタナシア組ー
「龍の巫女の服って可愛いよね……」
「そうですかね?昔から受け継がれてきた『巫女服』というものらしいです」
フィスタとシスタナシアは、最右翼の道を進んでいた。シスタナシアはフィスタの巫女服に興味津々のようで、「この服を着ればノエル様も……」などとブツブツ呟いている。
「シスタナシアさんは、西方聖騎士団の準筆頭騎士なんですよね!まだお若いのに凄いです!」
シスタナシアとの二人の時間が、シスタナシアの独り言によって気まずくなったフィスタは、場を濁すようにそう言った。
「私は西方聖騎士団に入隊した時から、ノエル様と任務を共にさせてもらっているからね。私自身の力だけじゃないけど」
そう言いながらも、シスタナシアはどこか嬉しそうな表情をする。聖騎士の乙女のような顔に、フィスタは内心、可愛いらしい人だなと思っていた。
「ノエルさんって、筆頭騎士ですよね……?やはりお強いのでしょうか?」
「それはもちろん。今から10年前に起こった五大帝国への反乱を名目とした大戦で、初陣だったノエル様は一つの戦場を蹂躙したことで知られているからな!私はその姿に憧れて聖騎士になることを目指したものだ」
シスタナシアはまるで自分の事のように胸を張った。それだけノエルの存在は彼女にとって大きいのだろう。
「それよりもフィスタ。貴方、先天的な加護の持ち主らしいじゃない。龍の巫女にしておくには勿体ない」
シスタナシアは、聖騎士団へとフィスタのことを勧誘しているのか、キラキラした目でフィスタを見つめていた。
「この力は、霧龍様から賜ったものだと思っていますから。霧龍様の為に使うと決めているのです」
「ふーん。まあ、無理にとは言わないけどさ」
シスタナシアは、フィスタの思っているよりも純粋で正直な人だった。聖騎士団にもこういう人がいるのだとフィスタは改めて思った。
「加護の力は使いこなせるの?」
「幼い頃から加護と共にありましたので、一応は……。龍の巫女が連れていかれた時に私は何も出来ませんでしたが……」
シスタナシアは、フィスタにとってまずい質問をしてしまったと悟ったのか、目に見えてあたふたし始めた。
「いやいや!私も聖騎士をやっていて救えなかった人も沢山いるから!その人達の思いも乗せて、私は今ここにいるからね!」
シスタナシアの精一杯の励ましに、フィスタはつい笑ってしまった。聖騎士とは厳格で高麗なイメージがあったからか、シスタナシアの様子はそれとは随分違っていた。
「シスタナシアさんは、優しいんですね」
「それはまあ……ね!」
シスタナシアが頭を掻いて照れくさそうにしていると、彼女の雰囲気が突然変わった。
「……居る」
シスタナシアが見つめる先には、あぐらをかいてその場に鎮座する、魔獣の姿があった。ワニのような顔をしているが、体の構造的には二足歩行の生物のようだった。
「待ちくたびれたぞ、我の相手よ。女子二人とは、随分と運がいいものよ」
その魔獣は重い腰をあげるようにゆっくりと立ち上がり、その体の全貌を現す。立った魔獣の背は、フィスタの倍近くあるようだった。
「我はレイポス。自我のない魔物から力を得て魔獣へと成った者……。はっきりとは覚えていないが、女の血肉は甘美な匂いがするのだな……」
レイポスと名乗った魔獣は、顔を火照らせ、口からヨダレを垂らしていた。その口元から零れ落ちた涎は、地面へと落ち、その場の土を溶かしていく。
「あの魔獣の口、気をつけてね。何か強い酸でも持ってるみたいだから」
先程までの浮かれたシスタナシアさんの姿はそこには無く、冷静な目をした高潔な女性がそこは立っていた。
「お前は残念だ。他のものを相手にしていればもっと楽に死ねただろうに」
シスタナシアさんの体の周りの空気が歪み、彼女が発しているオーラのようなものが目に見えるようだった。
「西方聖騎士団準筆頭騎士、シスタナシア・フレンツの名において、貴様を討伐する」
「出来るものなら、な」
レイポスは不敵な笑みを浮かべた。
作者のぜいろです!
霧の王国編、今話と次話ではそれぞれのペアと敵対する魔獣の紹介のような形になります!それぞれの相性や特徴を踏まえて敵同士にしていますので、注目してみてください!
是非、いいね、ブクマ、感想等お待ちしております!
ぜいろでした。




