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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
序章 アラポネラの神林編 ー漆黒に嗤うー
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アラポネラの神林 -1 神獣の守り人

自身が生まれ育った街の住人を殺害してしまったダリアは、その責任に追われ街から逃げ出す。何日も歩いてたどり着いた先で、彼は狩人をしているゴーシュという人物に出会う。


世界連邦からの犯人の追求はすぐそこまで迫っていた。

大規模な派遣隊が消失したアラポネラの神林。その数日前、ダリアはゴーシュと共にアラポネラの神林内を歩いていた。


「この森はアラポネラの神林という。世間では禁域と呼ばれていて、普通の人間には入ることさえできない。ダリア、君がこの森に入ることが出来たのも、君の中にある()()が原因だろうな」


ゴーシュは何かを考えているような、神妙な顔をしながら俺に話しかける。


「俺にもよく分かってないんです……。でも、この力が原因で同じ街の人を殺してしまったんだと思います……」


「いや、その話をするつもりは無かったんだよ。ただ、君の力は君自身が1番よく知っておくべきだ。そのために、私も勿論協力しよう」


ゴーシュさんは悲しむ俺の背中を優しくさすってくれた。ゴーシュさんの優しさに俺はもう充分救われている。


「君の力はこの世界で言うところの()()という力に当たるはずだ。私は昔、傭兵をしていた。色々な戦場で戦争に巻き込まれる時に、加護という尋常ならざる力を持つ者たちが戦場を蹂躙していた」



加護とは、この世界の一部の人間だけに与えられる特別な力であり、多くの為政者はこれを有している事が多いという。


「この世界の礎を築いたとされる()()()()と呼ばれる英雄達は、皆この加護を有していたとされている。彼らが1番初めに加護を受け取ったと言われているんだよ」


俺は、生まれてこの方、加護という言葉さえ聞いたことが無かった。俺が育ったアーバの街は田舎の方であり、そのような力に触れる機会すら無かったようである。


「ただ、本来は隣国にある五大帝国の1つ、()()()にある『精霊の神殿』に行かなければ加護は受け取れないものなんだ」


ゴーシュさんは再び神妙な顔になって何かを考え込んでいた。俺の存在はやはり、この世界でも異質な者なのだろうか。





「さあ、ついたぞ」


俺は今日、ゴーシュさんに連れられてアラポネラの神林の中のとある場所に来ていた。詳しい話は聞いていないが、見せたいものがあるらしい。


「アラポネラの神林が、普通の人間には入ることが出来ないのは、そもそも見つけることすら困難なことが1つ、そして凶暴な生物が多く棲みついていることが1つ。最も重要な要素がこれだ」





ゴーシュさんの示す先には、巨大な()()がいた。俺はその生物が発するあまりの威圧感と、その場の空気が凍りつくような寒気から動けなくなった。




神林に差し込む太陽の光を体全体で受け止めている()()は、人間が信仰しているところの、まるで神でも見ているようだった。


「この森を守る()()アラポネラだ。この森の名前はそのまま、こいつからついている」




その生物は、巨大な蛇の形をしていた。鱗のような皮膚は、その一つ一つが光を浴びて虹色の光沢を放っており、美しい青色の瞳は全てを見透かされているようだった。



何よりその大きさは、森の中でも一際大きい大木をぐるりと1周しても足りないほど長く、口を開こうものなら人間が束になっても飲み込まれてしまいそうなほど大きい気配がした。



「この森に悪意や敵意を持って近づく者は、アラポネラによって粛清を受ける。この森は資源こそ豊富だが、それを乱獲するようなタチの悪い人間は、アラポネラによって亡き者にされる」



ゴーシュさんは、先程俺に見せてくれたような優しい笑顔とは異なり、崇拝しているような、畏れているような、そんな表情でアラポネラを見つめていた。



「私はもう長い間、アラポネラの面倒を見ている。だから私には敵意を向けずに彼はいてくれる。だから、この森で君を見つけた時、何か他の人間とは違うのではないかと思ったんだ」



俺はただ、アラポネラに圧倒されてその場を動くことが出来なかった。だが、ゴーシュさんの言葉に対して頷く事が辛うじて出来た。





ゴーシュさんはアラポネラに近づき、彼の頭を撫でながら言った。


「彼を救うために、この森を使うことを許しておくれ。君が守るこの森を傷つけることはしない。ただ、少しの恵と力を私たちに分けてくれ」



アラポネラはゴーシュさんの話を理解しているようだった。静かに瞳を閉じると、瞬きの間に森の景色に同化して消えてしまった。一瞬の出来事だった。






「……ふぅ、とりあえず了承は取れたみたいだな。アラポネラも君を歓迎していることだろう」


ゴーシュさんは表情を崩して笑いながら言ってくれたが、俺の方はと言うと、まだ緊張が取れていなかった。



「いずれ、君を巡って世界連邦が動き出す。君が起こした罪は消えない。ただ、君がこの先一人で生きていく為の知識と、力をつけるべきだ」


ゴーシュさんはここまで背負ってきた大きいリュックを地面に置いて言った。


「元傭兵という立場だ。君よりも加護のことについては知っているし、歳をとったとは言え鍛えていない子供に負けるような鍛え方はしていないつもりだよ」


ゴーシュさんは羽織っていた上着を脱ぎ、装備のよう物を身に付け始めた。確かに年齢と体が完全に見合っていない。


「世界連邦の派遣隊が来るまで1週間といったところだろうか。それまでに君に私が教えられることは全て教える。この森は必ず君を育ててくれるからね」


ゴーシュさんはニッコリと笑った。


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