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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第1章 砂の王国編 ー国の夜明けを待つ者達ー
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夜明け

多くの戦いと犠牲を生み起こした、王国奪還作戦の夜は、終わりを迎えた。それは、ほとんどの国民が知らないところで起こった、大きな変革だった。



「終わったんだな」


シンは、眠った状態で倒れていたダリアを見つけ、背中に背負ってザバン城壁内への帰路へついていた。


ダリアの寝顔はとても穏やかで、先程まで見せていたあの禍々しい表情はどこにもなかった。


「……日の出だ」


元王国軍の兵士の一人は、砂漠の向こうから昇る紅い太陽を指さした。それはザバンを照らす光となって、未来に導いているようだった。


「帰って祝杯だな!」


カルマはどことなく疲れきった面々に喝を入れるようにして、そう大声で言った。反乱軍たちは疲れた顔を見せながらも、笑い合った。そして、自分たちの勝利を噛み締めていた。





「それで、これからどうするつもりだ」


日の出までのお祝いムードとは一変して、カルマはミルと真面目な話をしていた。


「王家に対する反乱、結局は成功に終わったようだが、国民たちはとっくに王家の存在に依存しているぞ。お前にはその後のプランはあるんだろうな?」


ミルはカルマをじっと見つめる。その目で見られたカルマは申し訳なさそうに頭を搔く。


「すまんバンダレイ、新政権の樹立を手伝っては貰えんか?」


その言葉を聞いてミルは深いため息をついた。反乱は成功したとはいえ、心の底から納得していない自分がいるためだ。


「……お前は昔からいつもそうだ。考え無しに誰かのために行動してしまう。……全く、尻拭いをする人間の身にもなれよ」


「……恩に着る!」


2人の男は、若き日のことを思い起こしていた。





反乱の翌日、サルノー王家によって国民に対するいくつかの宣言文が出された。



1.ザバン王国は、国民から選ばれた議員によるザバン国議会を設置し、この設置後にザバン王国からザバン共和国へその名前を改める。



2.上記の規定に伴い、王家としてのサルノー家の地位を剥奪する。



3.議会の監視員としてカルマ・ロリックとミル・バンダレイの両名を置き、自治の安定に努める。



4.従来の王国軍を一度解体し、新たに兵士を募集する。これにはザバン全国民が対象であるため、現在の身分、出生等によらず、公平な判断を行う。また、王国軍隊長として、キーン・アンデルセンを指名する。



5.現在の高い税率や関税を一度廃止し、適当なものへと変更する。




ザバン国民にはこの宣言文と同時に、現サルノー王家側が、反乱軍によって倒されたこと。ネオン鉱石によってアゴンや一部の国民を隷属関係に置こうとしたことなどが暴露された。


その結果、サルノー家はザバンに残ることを禁じる国民の総意としての決定が出され、サルノー家は少しの資金を持って国外へと追放されることが決まった。



奇しくも、初代サルノー王と同じような状況になってしまったバビクス・サルノーの行方を知っている者は、いないようである。





「よう、目が覚めたか。寝坊助」


俺が目を覚ました時そこには、キーンさんがいた。あとからカルマさんに聞いた話だと、王国軍隊長としての勤務の合間を縫って俺の看病をしていてくれたらしい。



結局俺は、今回の王国奪還作戦で、訓練の成果を出せずにアンバーセンにやられてしまった。俺はまた、大事なものを守れないところだった。



それに、俺の中にあるもう一つの存在が俺に代わってアンバーセンと戦っている時、正確に言うと俺には意識があった。


まるで、ラグドゥルと名乗ったあの存在が、力の使い方を()()()()()()()()ような感覚を抱いていた。


「まだまだ足りないか……」


キーンさんが城に戻り、一人になった部屋で俺はそう呟いた。しかし、俺のいる部屋にはもう一人の客人がいた事に、俺は気が付かなかった。



「お前もそう思うか」


「……?うわああぁっ!」


俺は自分の視界の外からしたその声に、思わず変な声が出てしまった。声の主は、シンだった。



「なんだよそんなに驚いて。病人の見舞いに来ちゃ悪いか?」


シンは多少不貞腐れたような顔をする。シンなりに出来ることを考えてここにいてくれるのは嬉しいが、驚きが先に出てしまった。



「まあいい。これがここに来た理由はもう一つある。俺は、この国を出る。その事を伝えに来たんだ」


「……え?」


シンの言葉は、俺にとって意外なものだった。国に変革が起きたとはいえ、シンはこの国のことや、スラムの事を気にかけているのではないか、と思っていたからだ。


「スラムの事は、大丈夫なのか?」


「ああ、その件はキーンに任せてきた。それに、ジジイもスラムの二の舞が起きないようにちゃんと見ててくれるってさ」


シンの顔が、少しだけ緩んだ気がした。今まで張り詰めていた何かが、解けたようだった。



「それに、この国を出るのは、俺自身がもっと強くなって帰ってくるためだ。見捨てるわけじゃねぇよ」


シンは、決意に満ちていた。


「それに、世界連邦には俺も因縁がある。でも、お前が戦ってたあの女みたいな奴に、俺はまだ適わねぇ。だから、外の世界をもっと知りに行く」


そしてシンは、俺の目の前に拳を突き出した。顎をクイッとさせて、同じことをしろと言わんばかりの表情をする。



「お前の旅に、俺も連れてけ。強くなるためなら、どこへでもついてってやるよ」


「ありがとう、シン」


俺はシンの拳に、自分の拳を合わせた。初めての、同年代の友とも言える存在ができた瞬間だった。







ーザバン郊外ー


「聞いてないぞ、あんな化け物がいるなんて……」


アンバーセンは、身体中に傷を作りながらも、ザバンの砂漠を歩いていた。ラグドゥルによって与えられた攻撃は、その痛みを忘れさせることは無いらしい。


「しくじった……!このままでは、またあいつらに……!」






「あいつらに、何だい?」



アンバーセンの背後には、男と女の、二人の人間が立っていた。どちらも、首のない天使の姿を描いた聖騎士団のエンブレムを胸に付けている。


「酷いやられっぷりね、アンバーセン。執行人としての面子も丸つぶれじゃないかしら」


「……バルミューダっ!」


バルミューダと呼ばれた女は、アンバーセンを蔑むような笑い方を見せる。しかし、アンバーセンがそれに反抗できないのは、体の疲労もさることながら、執行人としての序列のためだった。



「そんな態度だから、あなたはいつまでも十位以内に入れないのよ?いい加減目上の人間の言うことを聞き入れる心を持ちなさい」


「うるさいなっ!」



アンバーセンは、茶化しを続けるバルミューダの体を手で押し飛ばした。バルミューダはそれに、わざとらしい演技をして転ける。


「いったぁいっ。ねえ、イバン、許していいの?アンバーセンのこと」


イバンと呼ばれた男は、無表情のままアンバーセンを見つめた。その目には感情を見出すことが出来ない程だった。


「……執行人に、弱き者は要らない。……世界を正しく導く者に、甘えは要らない。……自分の身の振り方を考えておくことだな、ネルト・アンバーセン」



そう言ってイバンは、何やら詠唱を始め、地面には魔法陣が浮かび上がる。


「イバンったら優しいのね、こんな奴でもまだ見捨てないなんて」


「全ては()()()のためだ。こんな雑魚でも、兵力にはなるらしい」




ザバン郊外にあった三人の執行人の姿は、魔法陣と共に、跡形も無く消え去った。

作者のぜいろです!


改めまして、砂の王国編完結です!次話から、新しい章に入るので、ここからの話にもご期待ください!


現在挿絵に使うイラストを何人かの絵師さんに依頼中です!ダリアとシンのイメージ画を作ってもらっています!そちらも是非楽しみにしていてください!



評価、ブクマ、いいね等、良かったらお願いします!


ぜいろでした。

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