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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第1章 砂の王国編 ー国の夜明けを待つ者達ー
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王国奪還作戦 -8 結末

自身の腕を掴まれたアンバーセンは、それを振りほどこうとした。しかし、ダリアに乗り移ったかのような人格は、それを離しはしなかった。


「よくもまあ、こんなに傷だらけにしてくれたものだ」


「……痛いな!」


自身の体についた傷を眺めて油断しているダリアの姿をしたものの様子を見て、アンバーセンはレイピアを彼の者の腕に突き刺し、距離をとった。



「そう急ぐんじゃない、女。私はただ、この傷の報復をしたいだけなのだ」


ダリアの姿をした者は、自身の傷跡に黒色の何かを集合させる。ほんの数秒でその黒い物質は弾け飛び、傷は全くなくなってしまっていた。



「……冗談だろ?」


アンバーセンは、ダリアには見せなかったひきつった顔を見せた。無理もない。自分がつけた傷を全て回復されたのだから。


「冗談ではない、我が主はまだ不完全。この程度の芸当もできないヒヨっ子ですからね」


そう言ってダリアに乗り移った者は、胸の当たりを抑える。アンバーセンは目の前の状況に理解が追いついていなかった。




「何者だ、お前は……」


アンバーセンは気力を振り絞ってそう言った。その者が発する殺意と得体の知れない何かに、アンバーセンは押されていた。


「……何者、ですか。そうですねぇ……」


ダリアに乗り移った者は、少し考えるような仕草を見せ、アンバーセンに向き直る。


「この者の中に刻まれた()()とでも言いましょうか」


「意味が分からないな。ダリア・ローレンスと、今のお前は同一人物なのか?」


「そうでもあり、そんなことはありません。運命共同体、という言い方が近しいかもしれませんねぇ」


乗り移った者は、終始アンバーセンに対して浮ついた態度をとる。所詮その程度としか、アンバーセンのことを見ていなかった。



「おっと、もしかして名前でも聞いてました?これは失敬。主に仕える我が名は、()()()()()と申します」


「……お前、その名前は……」




驚きを隠せないアンバーセンに向かって、ラグドゥルはアンバーセンの理解の範疇を越えた速度で近づき、耳元で話しかけた。


「お喋りが過ぎましたかね?」





そう言って、ラグドゥルはアンバーセンの腹部を思い切り蹴りあげる。アンバーセンはすんでのところで手でその直撃は防いだが、威力を殺すことは出来なかった。


その蹴りは、アンバーセンが人生で受けてきた攻撃で一二を争う威力であったためだった。




アンバーセンは広い空洞の天井のような部分に衝突したが、その勢いは止まらない。そのまま天井を突きぬけて、アンバーセンは採掘場の外まで飛ばされた。


「追いかけますかね」



ラグドゥルは、背中に黒い翼を生やし、アンバーセンの後を追って採掘場を抜け出した。







「ダリア……」


シンの見つめる先には、禍々しい気配に包まれたダリアと、血を吐き、腹部を抑えるアンバーセンの姿があった。


「それに、世界連邦の役人……!?なんでこんなところにいるんだ」


疑問が押し寄せるシンに答えを教えたのは、いきなり現れたカルマだった。


「奴がこの国と各地の為政者たちを繋げていた、黒幕だ」


「黒幕……?」


「バンダレイから聞き出した。あの女の策略によってネオン鉱石は海外へとばら撒かれ、サルノー結晶を越え富をもたらしたとな」


カルマの満身創痍といった姿にシンはそれを心配しつつも、目下にいるダリアの方に関心は寄せられる。


「それに、あいつまでおかしくなっちまったみたいじゃねえかよ」


不安そうにダリアを見つめるシンに、カルマは知っていることを打ち明ける。


「あいつをここに来るまで鍛えていた儂の古い友人から、あの状態のことは聞いている。なんでも、加護が自立してダリアの体を動かしているようだ」


「……そんなこと、あるのかよ」


「ありえない話ではない。事実、あそこにいるダリアから感じる気配は、本人の物よりもっと禍々しい」


カルマの目が、その話が冗談ではないと言う事実をシンに伝えていた。








「……私は、執行人だぞ。罪人に私を殺して良い道理はこの世には存在しないんだよ……」


「はあ、そうですか」


怒りに震えるアンバーセンに対して、ラグドゥルは冷静な返答を返した。というより、ラグドゥルは先程のアンバーセンの反応等から、自分より圧倒的に格下だということを既に理解していた。


「だから、お前に私の全てをぶつけるんだよ……!」



超過重力(メガトン・コア)!!!



「さっきの威力の数十倍だ!生身で喰らえば無事では済まないがな……!」


アンバーセンはレイピアにその重力の力を乗せ、空中を駆け出した。アンバーセンは無重力のような状態を自身の体に付与することで、滞空を可能にしていたのだ。



パシッ


アンバーセンの全力をもって突き刺したレイピアは、ラグドゥルの人差し指と中指によって、簡単に挟まれていた。


「もういいですか?あなたとの遊びはどうやらつまらなさそうだ……」


ラグドゥルの目は、まるで使い古した玩具に向ける子供の目のような冷たさがあった。アンバーセンはその圧に気圧され、足がすくんだ。


「はあ、私達が居ないこの()()()()()()、加護は随分と衰退したようですね」


そして掴んだレイピアを、アンバーセン事更に空中へとラグドゥルは放り投げた。


その勢いは、先程地下空洞からアンバーセンを地上へと引きずり出したものと同じか、それ以上のものだった。アンバーセンは、人生における最大の衝撃を更新した。




永遠を知る追従者(ジュピター)



ラグドゥルは、勢いを止めることが出来ないアンバーセンに対して、自身の手から出した不気味な形をした犬をもって、狙いを定めた。


「さようなら、また強くなってどこかで」


ラグドゥルは犬のような黒い影を体の周りから無数発射する。その犬の影達は、一心不乱にアンバーセンの方へと空中を走っていく。




「クソっ!なんで止まらないんだよ……!」


焦るアンバーセンの足元に、何かが噛み付いた感触がした。目をやるとそこには、黒色の物体に体を覆われた、犬がいた。


「え……?」





ドゴオオオオオン!




アンバーセンに引っ付いた犬達は、巨大な爆発をもって、ラグドゥルに応えた。その爆発は、ザバンの新しい日々を照らしているかのように見えた。




「終わりましたよ、我が主(マスター)よ」


そう言ってラグドゥルは、地面へと降り立つ。そっと静かに胸をさすり、そのまま目を閉じた。


「久しぶりに力を使ったからか、少々疲れましたね……」


そのまま、ラグドゥルは眠りについた。彼女は、ダリアにその意識の主導権を渡した。




ザバン国民にとって長い夜が、終わろうとしていた。

作者のぜいろです!


長きに渡った砂の王国編も、次回の投稿で終わりになります!


様々な伏線を残した砂の王国編でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?


次次回の投稿からは、新しい章に入ります!ここまで見てくださった方も、これからの方も、是非ご期待ください!


また、絵師の方に挿絵の依頼中ですので、そちらの方も楽しみに待っていてください!



是非、評価、ブクマ、いいね等お待ちしております!




ぜいろでした。

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