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虐げられた追放王女は、転生した伝説の魔女でした ~迎えに来られても困ります。従僕とのお昼寝を邪魔しないでください~  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜第5部5章〜

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216 崩壊

「!」


 そのとき、クラウディアとノアは殆ど同時に、とある存在の接近に気が付いた。


(……来るわね)


 しかし、クラウディアが動こうとする前に、ノアに体を横抱きにされる。

 そのまま立ち上がったノアの首に腕を回しながら、言い聞かせるように口にした。


「ノア。私を転移させるつもりなら、それは不要よ」

「承知しております」


 意外な返事が返ってきて、首を傾げる。

 するとノアは、クラウディアを聖堂の壇上へと連れながら、こう続けるのだ。


「あなたがそう仰ると分かっていたからこそ、俺が全てを終わらせてからではなく、いまこの時に目覚めていただきました」

「……ふふっ」


 ノアの魔法で現れた椅子に、ゆっくりと下ろされる。


「やっぱりお前は、私の良い子ね」

「お褒めに預かり、光栄です」


 クラウディアの前に跪いたノアは、死者の装束である白いドレスの裾に触れ、よく馴染んでいる魔法を使った。

 艶やかに織られた生地のドレスが、鮮やかな赤のドレスに変化してゆく。


「母さまがずっと恐れていたのは、ライナルトの魔法によって私が奪われること。現時点では、問題なさそうだわ」

「断言は出来ません。引き続き、警戒をする必要があります」


 素足のつまさきも、ドレスと揃いの靴へと変わる。ノアの魔法によって作り出された衣服は、クラウディアにとって心地の良いものだ。


(……この後に、何よりも私が警戒するべきは、私のことではないわ)


 気配はどんどん近付いている。


「ノア。内緒話よ」


 クラウディアはノアの手を引いて、その耳元に声を落とした。


「――――姫さま」

「出来る?」


 微笑んでそう尋ねると、ノアはゆっくりと瞬きをしたあとに、クラウディアの傍から立ち上がった。


「もちろんです」

「では、私のノア」


 林檎や血のように赤い、真紅のドレスに身を包んだクラウディアは、微笑んで告げた。


「お前がどれほど美しいわんちゃんに成長したのか、見せてちょうだい」

「……姫さまの、お命じになるままに」


 その直後だった。


「――――……」


 聖堂を覆う結界に、何かが接触した気配がする。

 ここに張られた結界は、ノアの魔力によるものだ。クラウディアを守るための透明な殻を、外側から砕こうとする者があった。


 魔法によって生み出された剣が、ノアの手に握られる。

 殻に亀裂が入ったのは、聖堂の入り口にあたる扉の場所だ。強固で分厚い強力な結界が、深い憤りに似た魔力の迸りによって、破壊されようとしているのだった。


(闇魔法の力。黒曜石の瞳を持つ魔術師の、最も得意とする魔法……)


 雪の中を思わせる静寂が、ひとときだけ聖堂を支配する。

 それから一拍を置き、まるで硝子の砕けるような音が、聖堂の中へと響き渡った。


「…………」


 無理やりに壊された結界の破片が、聖堂へと降り注ぐ。空中にきらきらと瞬きながら落ちるそれは、美しいものにも見えながら、一種の禍々しさを纏っているのだ。


 床にぶつかると不快な音を立て、地響きと共にクラウディアの鼓膜を揺るがした。

 そんな破片の雨の中、扉を押し開いた青年が、聖堂にゆっくりと踏み込んでくる。


(……戦場の空気は、久し振りね)


 豪奢な椅子の肘掛けに手を置き、クラウディアは彼を見据えた。


(ノアの結界が、この聖堂を清らかに保ってくれていたのだわ。結界の外、いまのこの国に満ちる空気は、五百年前の戦いと同じ……)


 けれども前世の戦争と違うのは、こうして敵対する相手が、見知らぬ兵士ではないという点だ。


「……ようやく、目覚めたのか」


 姿を見せた青年を、ノアが睨み付けたのがよく分かった。

 けれども彼のまなざしは、真っ直ぐこちらに向けられている。黒曜石の色をしたその瞳は、やはり同じだ。


「迎えに来たぞ。アーデルハイト」

「……ジークハルト」


 先ほどまで見ていた夢の中で、目覚めたときにあった出来事を思い出す。

 棺の中で目覚めたクラウディアは、ノアと同じ姿をした『レオンハルト』に出会った。いまのジークハルトはそれと同じ、静かな憤りと支配の意志を込めたまなざしで、クラウディアを射抜いている。


(こちらの世界のジークハルトは、夢の中のレオンハルトとよく似ている。だけど、それ以上に……)


 狂気の感情を滲ませた奥に、クラウディアのよく知る気配があった。


(――ライナルトと、同じ魔力)


 前世の最初の弟子であり、『アーデルハイト』の死後に一国の王となった存在を思い、クラウディアは目を細める。


「欠けていたはずの君の魔力が、あるべき形に満ちたらしい。本当に、喜ばしいな」


 暗い笑みを浮かべたジークハルトが、その手をクラウディアの方へと伸べた。


「……これで君を、手に入れることが出来る……!!」

「!」


 そこから現れた無数の影が、手の形となってクラウディアに迫り来る。

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