【コント】偉大なる身内
机を挟んで二人が向かい合っている。片方は教師役(A、ツッコミ)で立っている。もう片方は学生役(B、ボケ)で椅子に座っている。
A「おい田中、先生あんまりこういう事言いたくないが、進路調査はふざけちゃだめだぞ~」
B、ふて腐れながら答える。
B「ふざけてないっすよ、俺は真剣です 」
それを向けてA、心配な口調で言う。
A「本当か?進路調査の第一志望、犯罪者で出す奴なんて真面目なわけないだろ」
B「・・・本気です。俺にはこの選択肢しかないんです」
B、そっぽを向く。
A、ため息をつき、客席の上の方を見て困った口調でいう。
A「やれやれ・・・それはあれか、中二病?っていうのか?あとで恥ずかしくなるだけだぞ。」
B、Aをにらみつけて怒鳴る。
B「それは、先生が俺の一族のことを知らないから!!」
B、しまったという顔をする
A、その言葉に不思議がる。
A「おい田中、どういうことだ?」
B「・・・俺の人生は、全部一族に先回りされてるんです。」
A「・・・どういうことだ?」
B「先生、何か一つ好きな職業言ってみてくださいよ」
A「んー・・・じゃあ、医者」
B「・・・うちの親父は"ゴッドハンド田中"と呼ばれてる凄腕の心臓外科医っす。世界中で手術の予約が引っ張りだこなんす」
A、納得する。
A「あ~・・・なんとなくわかったぞ。例えば田中が将来医者で成功したとしても、「流石ゴッドハンドの息子」って言われるわけか」
B「さすがですね、」
A「お、おう・・・ありがとう」戸惑うA。
B「他にも何か言ってみてくださいよ」
A「そう?じゃあ、弁護士」
B「母親は今まで裁判では無敗の弁護士っす。交番の前で自ら露出した変態すら無罪にしました。またの名を「裁判女王」」
A「カッコいい名前つきだしたじゃん・・・ 警察」
B「一番上の兄が警視庁の幹部やってます。万引きくらいならもみ消してやるって言ってました」
A「モラルのかけらもねーなお前ん家。 シェフ」
B「二番目の兄がフランスで修行した後、店を出しました。店の名前は「めしざんまい」、最寄りは蒲田」
A「経歴の割にえらい庶民的~! 政治家」
B「叔父が県知事やってます、愛人はチリ人」
A「昔聞いた事あるやつ! アナウンサー」
B「姉が目覚ましテレビ出てます。あだ名はヒモパン」
A「どういうこと?エロいの?名前が紐美的な?」
B「どっちもです」
A「へー。・・・なんだそれ。」A噛みしめる。
A「アイドル」
B「妹」
A「モデル」
B「妹」
A「女優」
B「妹」
A「多い!何人家族なんだよお前んち!」
B「20人っす」
A「思ってたのと桁が違う!親も張り切りすぎだろ!ビッグダディじゃん!」 リアクション。
B「一応うちでは親父をビッグファーザーって呼んでます」
A「・・・それは違う意味のファミリーじゃない?」
B「どうしました、もう終わりですか。」
A「なんかノってきてない?・・・じゃあ、歌手」
B「叔父が」
A「ダンサー」
B「甥が」
A「キャバ嬢」
B「いとこが」
A「AV女優」
B「母が」
A「母・・・母!?」
A、二度見。
B「ええ、2番目の」
A「・・・なんかごめん。 社長」
B「祖父が」
A「アスリート」
B「姪が」
A「スパイ」
B「祖母が」
A「だぁぁあ!」パニック。
A「がんじがらめじゃねーか!なんも出来ねーよ!先回りされんのがこんなにつれーとはな!」
B「でしょ?・・・だから、俺に残された道はもう、犯罪者しかないんですよ。」
A「うーん。」
沈黙が流れる。
B「・・・先生、これは相談なんですが、一緒に犯罪やりません?」
A「えっ?」
B「うちの一族の力を使えば、兄の力でアリバイ捏造。つかまっても母の力で無罪。
銃で打たれたら父に治療してもらえばいい。旨い飯が食いたきゃめしざんまいへ。
高跳びもパイロットやってる人がーまあいるはず。なんとかなるでしょ。あ、会ってみたい芸能人いますか?」
A「・・・石原さとみ」
B「女優やってる妹の友達です。会えますよ?先生、好きなAV女優は?」
A「・・・たくさん」
B「二番目の母のツテがありますが?」
A「・・・お願いします。」
B「どうです?こんなに豪華な進路、選ばない理由がありますか?」
A「・・・」
B「先生の第一希望は?」
A「・・・共犯者」
B「何か言う事は?」
A「・・・よろしくお願いしまっす!」
A、お辞儀して握手。
B、不敵な笑みを浮かべて握手をしようとして暗転。
おわり