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カラスの恩返し  作者: 緒仲庵次
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本屋

 昼ごはんは買ってきたお弁当にした。


 そもそも義弘は自炊などできない。

 ちょっと考えてみるとおかしいのだが、自炊こそ本来ならいい大人ができないとおかしいのではないのだろうか。にもかかわらず、教育課程で自炊のやり方を教えてもらえないのは教育制度の最大の欠点ではないかと思う。正確には女子は家庭科でやっているのだろうけど……男子はやらない。

 これがおかしいのだ。

そもそも社会に出たところですぐに結婚するわけでもないし、男子が自炊してもいいではないか。必要か不必要かと言われれば間違いなく必要な技術だ。


 そんなことを考えながら、義弘は買ってきたお弁当を食べた。

テレビをつけて、午後からどうしようか考える。


 そうだなあ…。


 まずは買ってきたお米だけは焚こう。それはかろうじてできる。


 その後……本屋をさがさなければ……

堀本が言うには戸塚ならもう少しいろんな店があるとのこと。

 東戸塚から戸塚までは横須賀線で一駅だ。

いちいち駅に行くのも面倒だし…原付ぐらいは購入した方がいいのかな…と義弘は思った。

とにかく新生活は始まったばかりだし、早急な判断はよそう。


 駅までの往復は案外めんどくさい。

午前中に行ったときはそうでもなかったが、1日2回となると少し面倒に感じる。

好きな音楽を聴きながら歩くとそんなに苦でもないが、何が問題かと言えばやはり時間がもったいないのだ。

 片道15分、往復30分。

今日は2往復だから1時間。

これだけの時間があれば他のことができるような気がする。

時間のことを気にしなければ、特にこの往復は苦にならないが、時間がない時は嫌かもしれない。

これから仕事を始めるにあたって、休日の過ごし方にも関係する問題だ。

連休の初日などは、特に大きな問題もない。

むしろあえて時間をかけてこの街の季節感を肌で味わうのもいいだろう。

しかし連休の最終日や普段の土曜日はそんな余裕はない。

買い物をさくさく済ませたらすぐに家で好きなことをしたいのだ。


 そもそも義弘はインドアな人間である。

外に出て何かを楽しむということがあまりない。

飲み物と食べ物、本、パソコンがあれば、基本的には家で物事を完結することができる。


 実家にいたときなど、休みの日は家から一歩も外に出ないということも日常茶飯事だった。

そのせいで親からは『外に行け』と随分うるさく言われたが…。


 大体……外に出て何かいいことでもあるのだろうか。

特段、楽しいことなどないではないか。


 義弘が外に出るときは大抵、本かゲームを買いに行く時だけだ。さもなくば親がうるさいから本を持って公園に行く時ぐらいだ。

外に出て良いことというのは、季節感を感じることができるぐらいで他には何もない。

だから、普段は出来る限り家にいたい。


 駅のホームは閑散としており、あまり人もいなかった。


 東戸塚から戸塚までは一駅なのだが…

東戸塚の駅には横須賀線しか停まらない。

何回も東海道線のオレンジと緑の車体が通過していくのを見送った。


 確か…あれは戸塚で停まるのだ。


東海道線を見送るたびに、なんだかひどく損したような気分になる。

昼間と言うこともあり、電車が来るまでに結構待たされた。


 やはり原付は必要かもな……。

 義弘は心の中でつぶやいた。


 戸塚につくと駅前に大きな本屋があった。

本屋は駅の周りに数あるビルの一つの中に入っていた。

 大きな川が流れており、橋が架かっている手前にあるビルの5階だった。

都会にしては風光明媚な街だな…と思いつつビルに入った。


 本屋には文房具も一緒においてあって、義弘好みのお店だった。

書店員が忙しそうに何やら仕事をしている。

書店員も面白そうだな……ふとそんなことを考えてみたりもする。本が好き……というだけで続けられる仕事ならやってみたいと思うのだが……世の中そんなに甘いものでもなかろう。


 戸塚の本屋は気に入ったし、駅の案内板を見る限りでは本屋とは逆方向に降りて商店街を抜けると図書館もあるということだから、これはしょっちゅう来ることになるかもしれない。


 義弘は本を5冊ほど購入して帰途についた。


 図書館はまた今度来よう。


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