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「そこから助けてあげようか?」


黒一色の服をまとい顔も暗くて見えなくて、後ろに浮かぶ月がその人で一層大きく明るく見えた。

「何から助けてくれるの?」

その人の少し低い声は、男であることを感じさせる。


「君の今の環境からだよ。」

彼の落ち着いた口調は、まるで誘拐するようには思えずに。ちっとも怖くなど感じなかった。


「あなたが?どうやって?」

分かっていた、どうするのかは。


「わかってるだろ?誘拐さ」

そういって差し出される手は真っ白にきれいで。

ふと思った、“誘拐”。それはこんなにも穏やかで暖かく、美しいものではない―――――


「はいっお願いします」


―――――――――――――――――――――――――普通の家庭だったなら。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「そこのカップルさん、買ってかないかい美味しいよ~」

「すまないなちょっと用事があるんで」

屋台のおじさんは最後に少し残った焼き鳥を売り切りたいようで、


「そう言わずにさ。値段も下げとくから買ってってくれよ。」


「アリシア~、食べてみるか」

「えっ・・・・と、はい。ではいただきます。」

そう答えると少し笑い、そうかと屋台のほうへ話を戻していく。


「じゃあ三本もらっていいか。」

「おぅ、まいど!」


「うし!行くか。」

手に櫛を持ちながら先を歩いていく。

「ほいこれ。」

そういって焼けたての櫛を差し出してくる。


「ありがとうございます。」

鳥を口に入れてみると、とても熱くて、口が開いてしまうのを何とか抑える。噛むほどに肉汁が出て予想以上に美味しくてすぐに平らげてしまった。

「もう一本要るか?」


勢いよく食べてしまったので、ばれてしまった。


「い、いいんですか。」

「いいぞ。そのために三本かったから」

彼が笑うのを見て少し頬が少し熱くなっていくのを感じながら櫛はもらうことにした。

「ありがとうございます」


ふと横を見ると、彼が楽しそうに私のほうを見ていることに気付いた。

また頬が赤くなるのを感じたけれど気に留めないように心掛け鳥を食べ切った。


「これからどうするんですか」

思い切って肝心のことを聞いてみた。

「そうだなあ、とりあえず今日は宿に泊まって明日君の冒険者登録をしたら王都を出るつもり。」

「王都出るんですか!?」

「うん、そうだね」


王都を出たことがないので驚いたが確かに王都にいては見つかってしまうのかと、思い直して納得した。


そこまで言うと彼は前を指さして、

「今日はあそこに泊まろう」

昔ながらの冒険者が泊まるような宿屋のほうへ歩いて行った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「いらっしゃい」 

宿に入ると優しそうなお姉さんが受付に立っていた

「ご宿泊ですか」

「ああ、二部屋分頼む、」

そういうと袖をアリシアに軽く引っ張られた


「・・・いっしょの部屋にしてくれませんか?」

弱弱しくそんなことを言われては否定できるものもできない。


「・・・。ではベット二つの部屋を一つお願いできますか」

「仲がいいんだね。二階の一番端の部屋にしとくよ」

微笑みながら言ってくるが絶対に勘違いをしている・・・


「あはははは・・・はは・・・」

思はず苦笑いで返してしまう。


気を取り直してとりあえずさっさと行くか。

後ろをアリシアがちゃんとついてきているか確認しながら部屋へ向かった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


部屋は思っていたよりも綺麗で設備もしっかり整っていて驚いた。

「どっちのベットがいい?」

「じゃ、じゃあ手前のベットがいいかな、でももう少しベット寄せてもいいですか?」


「・・・ぉ、おう」

だからその顔止めてぇ~、断れないから・・・


まあそれは置いておこう、

「取り合えず、そこに座ってこれからどうするか話そうか。」


「わかりました」

小さくうな姿は相変わらずきれいだった。


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