if 白雪姫 もし話の展開が少し変わったなら
昔々のお話です。とある国にそれはそれは美しい白雪と呼ばれている姫と美に執着する王妃様がいました。王妃様は自分の持っている魔法の鏡に毎日聞きます。
『鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?』
いつもの鏡であれば
『この世で一番美しいのは王妃様でございます』
と答えますが、ある日の鏡答えました。
『この世で一番美しいのは白雪姫でございます』
それを聞いた王妃様は怒り世界で一番美しいとされた白雪姫をお城から追い出しました。白雪姫は森に逃げ込み、動物たちの助けを受けながら7人の小人が住む家へとたどり着きました。そこで白雪姫は小人たちに頼み彼らの家に住まわせてもらいました。
白雪姫は死んだと思った王妃様は魔法の鏡に聞きます。
『鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?』
鏡は答えます。
『それは、貴女が城から追い出し今森で生活をしている白雪姫でございます』
怒った王妃様は国一番のイケメンをお城に呼びつけ言いました。
『森に行き白雪姫を惚れさせ、尽くさせてから盛大に振りなさい。そうしたらきっと彼女は絶望してあの美貌を失うはずよ』
国一番のイケメンは森に入り小人たちと暮らす白雪姫を見つけました。イケメンは彼女が想像以上の美少女であることに驚きました。雪のような白い肌、黒檀のようなツヤのある黒髪、アメジストをはめ込んだような瞳にぷっくりとした真っ赤な唇。
こんな美少女は相手にできない、と思うとイケメンは隣国へと逃げていきました。もし、この国に居続けると王妃様に殺されると思ったからです。イケメンはナイス判断をしました。実際に王妃様は作戦が失敗した時は処刑するか王妃様専属の使用人にしようとしていました。
イケメンが旅立った数日後王妃様はまた魔法の鏡に聞きました。
『鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?』
鏡は答えます。
『それは、森に小人たちと一緒に暮らす白雪姫でございます』
王妃様は作戦が失敗したとわかりその日1日荒れ狂いました。そのおかげで魔法の鏡は少し割られてしまいました。
〝イケメンに玉砕される計画〟が失敗した王妃様は自ら仕掛けることにしました。リンゴ売りの老婆に変装して白雪姫に毒林檎を与えようと思ったのです。
数日後、王妃様は小人たちと住む白雪姫の元へ行きました。もちろん老婆に変装し毒林檎も準備して。
小人たちの家に着くとノックをしました。
トントントンっ、
「ごめんくださーい。リンゴ売りでーす。リンゴいかがですかー?」
返事はありません。居留守か?と思い、またノックします。
トントントンっ、
「ごめんくださーい!リンゴ売りでーす!リンゴいかがですかー!」
今度こそ はーいと、やる気のない返事がありました。ガチャっと、ドアが開き白雪姫が顔を出しました。
老婆はよっしゃ、かかった。と思い、白雪姫に問います。
「可愛いお嬢さん、リンゴはいかがです?」
白雪姫は嫌そうな顔をして答えます。
「リンゴ?いらねーよ。嫌いだし。買わないからさっさと帰んな」
老婆は固まってしまいました。まさか白雪姫がこんな乱暴な言葉遣いをするとは思ってもいなかったこと、そしてつい好きだと思っていたリンゴを拒否られたためです。
「どうして、リンゴが嫌いなんだい?」
つい、といったような疑問がぽろっと口から出てしまいました。白雪姫はさも当然といったように答えます。
「私を追い出した義母がリンゴ好きだったから」
簡潔にそういい、もういいでしょ?といった顔をしてドアを閉めました。愕然とする老婆。もとい王妃。
あの出来事から数日後、前回とは違った老婆に変装した王妃様がまた白雪姫のもとに来ておりました。
ドアの前に行くと意を決してノックします。
トントントンっ、
「こんにちは、イチゴ売りです。いかがですか?」
イチゴっ?!という歓喜の声とともにドアが開きました。白雪姫は問います。
「イチゴを売ってくれるのですか?」
老婆パート2は答えます。
「ええ、もちろん。1つ味見をしてみますか?」
白雪姫はそれはとても嬉しそうに答えました。
「はい、食べたいです。あ、試食はタダよね?」
と言い、老婆パート2から真っ赤に熟したイチゴを受け取りました。老婆パート2はほくそ笑みます。
(白雪姫よ、それには毒がたっぷり塗られてるとは知らずに食べるとはね。これで世界一の美貌は私のものよ)
白雪姫が毒の塗られたイチゴを食べようとした時、小人たちがちょうど仕事から帰って来ました。
「「「「「「「白雪ー!ただいまー!」」」」」」」
「あら、おかえりなさい」
「白雪ー何食べようとしてたのー?」
「あのばあさんだれ?」
「白雪!知らない人から食べ物をもらってはいけないと何度もいったでしょう!」
「イチ、ゴ?おいし、そう」
「白雪、仕事から帰って来て君から向けられる笑顔で僕の疲労は吹き飛ぶよ」
「イチゴ買うのか?やめとけ、絶対高いぞ」
「ふーん、ま、どうでもいいけど?」
個性的な7人が集結し、それぞれに口走りました。
白雪姫はイチゴを手に持ったまま、小人たちの額にキスを落としながら「おかえりなさい」とそれぞれに言いました。
ある一人の小人が白雪姫の手にあるイチゴを見て老婆パート2に言いました。
「俺たちの白雪に何する気だったのかな?」
老婆パート2はその小人から向けられる殺気に怯え、お城に逃げかえろうとしました。が、白雪姫と小人たちに捕らえられてしまいました。
老婆パート2から王妃様へともとに戻り、白雪姫殺害未遂事件の発端からの流れを言いました。
小人たちは口々にサイテーだな!とか、あの物語の継母みたいに熱した鉄の靴を履かせて死ぬまで踊らせようぜ、など過激な事を言う者までいました。が、心優しい白雪姫は王妃様の肩に手を置きにっこりと微笑み、王妃様の肩に置いていた手に力を込めました。
「テメエのしたことは人道に反しているってわかる?そんなに美に執着するもんなの?あのね、美しさってのは内側から溢れ出る者なの。心が醜いと顔も醜くなんの。あんなの持ってる美容本に書いてあったでじゃんよ」
確かに、白雪姫が言ったことは王妃様の持っている美容本に書かれてあったのです。王妃様は自分が恥ずかしくなり泣きそうになりましたが、白雪姫はそれを許しません。
「泣くんじゃねーよ?あんたにはまだやるべきことがあるんだからな。まず始めに、私への謝罪。次に彼らーー小人たちーーへの謝罪、ならびに彼らにかけられた魔法を解くこと。最後に国民への謝罪。わかった?わかるよね。子供じゃないんだし。あ、忘れてた。魔法の鏡さんの魔法も解きなさいよね」
凄みのある声音に王妃様は恐ろしくなりました。もしや私は敵に回してはいけない人種を敵に回したのでは、と。ーー実際に回してしまいましたが。
その後、王妃様は白雪姫に謝罪をしました。ーー白雪姫は王妃様の謝罪に3回ほどやり直しを命じましたが。そして、7人の小人にかけられていた魔法ーー呪いーーを解きました。
魔法を解いた途端、彼らの姿が普通の成人男性の大きさに変化しました。もともと小人の時でさえ顔が整っていたのですがさらに際立っておりました。
あの隣国に逃げたこの国一番のイケメンよりもかっこいいと王妃様は思いました。そして顔をよくみてみると、隣国で行方不明となっている王子たちでした。王妃様、顔真っ青。動揺している王妃様に白雪姫、容赦しません。小人たちーー王子たちの魔法が解けた後は、魔法の鏡の魔法を解かせました。
なぜ魔法の鏡が魔法をかけられているのか白雪姫が知っているのかというと魔法の鏡が昔一度、白雪姫に対して言ったことがあるのでした。
「白雪姫、実は私人間なんですよ。びっくりでしょう?私が一番びっくりしているんですけどね。もともと予知とかの能力が高くて王妃様に気に入られたのですが、人だとどこかに逃げてしまうと考えた王妃様は私を鏡に変えたのです。これだけは覚えていてくださいね、白雪姫」
と。
お城でいきなり魔法の解けた鏡は最初は驚きましたが、白雪姫が解いてくれたのだろうと思い急いで白雪姫のもとに駆けつけました。
白雪姫への謝罪、小人と鏡の魔法を解いた数日後、王妃様は国民たちに謝罪をしました。素直に自分の犯してきた罪を認め、どんな処罰も受け、国民たちに処罰は決めさせる、といいました。が、国民たちは王妃様が再び罪を犯さないのならば処罰はないと決めました。
国民たちの好意を王妃様は真摯に受け止め、公務にあたりました。その結果、賢女王として他の国々に名を轟かせました。
白雪姫たちはというと、7人の王子たちが白雪姫と元魔法の鏡を連れて隣国に帰りました。
その後7人の王子と白雪姫は結婚しました。隣国では王族の血が引き継げればいいよね、という考えなのでした。7人の王子は、白雪姫を愛していたので7人で愛し合ってもいいよね、的な考えの持ち主たちなのです。さすが7人の王子たちの国です。
白雪姫は、このままでは身が持たなくなるぞ。と思い、それぞれの側室希望者を世界中に募集しましたが、応募者ゼロという結果になり仕方なくこの状況を受け入れました。応募者ゼロの結果となった理由に王子たちが色々な場所で白雪姫は世界一可愛く、美しいと豪語していたため誰もが躊躇したという結果になったのですが。
さて、元魔法の鏡はというと、占い師として様々な年代の女性たちから重宝されました。特に王妃様の影響で美容に関する知識が豊富だったためか、占い師の仕事をしながら美容アドバイザーとしての仕事を始めがっぽがっぽに儲けた後、心の優しい村娘と結婚したそうな。
ある日元魔法の鏡、現占い師兼美容アドバイザーが白雪姫にといました。
「なあ、白雪姫。今お前は幸せか?」
「もちろん、義母を更生できて私のことを愛してくれる人たちに出会えたもの」
「ふーん。じゃあ、もしお前の幸せを崩そうとしている者がいたら?」
少しの沈黙。その後、白雪姫は告げました。
「もちろん、そいつを叩き潰す」