蝉時雨
今朝、一匹の蝉が空に羽ばたいた
地中から顔を出してまだ数時間だというのに、自らの殻を破り大空に飛んだのだ
実に長いこと潜っていたのに、空の飛び方なんていつ覚えたんだい
暗い土の中で、誰に殻の破り方を教わったんだい
白銀の蝉は答えることなく、真夏の太陽に消えていった
後に残ったのは、泥だらけでみすぼらしい抜け抜け殻だけ
飛んだ蝉は仲間と共に、何かを必死に叫び始めた
叫んで叫んで叫び続けて、七日間のうちに命を燃やしきる
たった一週間の灯は、誰の目にも止まらない
しかし彼らが残した魂は、決して止まない雨となる
蝉時雨よ、教えてくれ
お前が遺したかったものは、なんなんだい
答えを聞くその日まで、ボクはずっとここにいる
八日目の朝に、また会おう