優奈出陣
部活が終わって、眠気と疲労に襲われてる中、電話がかかってきた。
「なんなのよこんな時に」
電話が来たのは、彩夏からだった。
「珍しいわね」
なんか変な気分だった。
まあ出るか
「もしもし」
すると焦った感じの彩夏は、返してきた。
「もしもし、優奈」
「どうしたの?そんなに焦って」
彩夏は、深刻そうな感じで聞いてきた。
「優奈は、仲間だよね?」
そう聞かれ、一瞬考える。
まあ適当でいいか・・
「そうね」
「じゃあー」
声を荒げた彩夏は、信じられないことを口にした。
「しおりが大変なのよ」
愉快な話ではないというのが口ぶりから伝わってきたので、それを聞いて私は、ゾクっとした。
「何があったの?」
「龍翔が急に人が変わったようになっちゃって、しおりが元気なくて・・・」
「あいつ・・」
あの馬鹿・・何考えてんのよ・・・
「それでしおり、最近バスケもやる気なくしちゃって」
「何よそれ?あのクソ龍翔何考えてんのよ」
せっかく今年戦えるかもしれないのに、あんな凡人なんかに私の野望を邪魔されてたまるものですか!
「いいわ、私があいつにわからせてやるわ」
「ありがとう。期待してるね」
「ええ」
電話は切れた。
そして次の日の放課後、私は早退までして龍翔が校門に来るのを待った。
もうだいぶ人が校門から出てきているのに、龍翔の姿は未だに見えない。
「あっ・・」
その時龍翔ではないが、山田の姿が見えた。
私は、すぐに山田に近寄り、手を掴み人気の少ないところまで連れてきて聞いた。
「龍翔どこにいるかしらない?」
すると山田は暗い感じで言った。
「今のあいつには関わらないほうがいい」
深刻そうな顔でそういうので、ちょっと気持ち悪かった。
いつもの変なテンションとは、真逆すぎる・・・
「その理由は?」
山田は、首を横に振って、
「聞かない方がいい。」
「教えなさい」
胸倉を掴んで言ったが、山田は首を横に振り、
「やめておけ。今のあいつは、誰も止められない。」
その言い方に腹が立った。
なのでハッキリ言ってやった。
「バスケなら勝てるわ」
山田は、ため息をついていった。
「無理だ」
「は?」
私は、カチンと来た。
胸倉を掴んでいた手を離し、山田に指をさしていった。
「この私が負けるわけないじゃない。あんな素人に」
「いやいや、そういうのじゃないんだよ。」
「何なのよ・・」
山田は、力なく図書室と言い残して、去っていった。
私は、もやもやした頭を振り払って図書室に迷いながらも向かった。
そしてなんだかんだすんなりと図書室にたどり着いた。
誰もいない図書室の中、奥のほうに龍翔が本を読んでいた。
龍翔は、こちらのほうを振り返る。
その顔はやけに憎たらしかった。
「お前、随分荒れてるみたいね」
すると、鼻で笑って龍翔はこういった。
「お前みたいに他校に乗り込む野蛮人には言われたくない」
「くっ・・・」
嫌なところをついてきた。
こいつ悪知恵働くじゃない。
龍翔は、本を閉じこちらに近づいてくる。
「っ・・・」
近づいてくるたびなんか変な感じの空気が漂ってくるのを感じる。
すごい不気味。
近くにいたくない・・・
人が近寄りたくなくなるような空気。
私の目の前まで来ると、龍翔は笑みを浮かべて言った。
「俺と戦いにきたんだろ?」
「そっ・・そうよ」
怯みながらもそういった。