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変わり果てた兄の姿

あれから3時間経ち、今は昼休み。

私は、龍翔に聞きたいことがあったので、声をかけた。

「龍翔、話があるわ。ついてきて」

龍翔は何も言わず、私の指示通りにした。

私が向かっているのは屋上。

誰もいないし、情報漏えいも避けられる唯一の場所。

後ろから、少し俯きかげんで無言のままついてくる龍翔はすごい不気味で怖かった。

まるで幽霊が私のすぐ後ろをついてきてるみたいで・・

「ねえ、なんか怖いんだけど・・・」

「・・・・」

返事はない。

私は不安になる。

なんでよ・・・

どうして無視するの・・

胸が痛んだ。

せっかく手に入れたはずの幸せが壊れていくのを見ているみたいで、辛かった。

でもとりあえず早く屋上に行かなきゃ。

痛む胸をこらえて、なんとか屋上までたどり着いた。

私は龍翔と50cmくらいの近距離で向かい合った。

その理由は、龍翔がどういう行動や言動してそれの意味をいち早く感じ取るため。

私は、怖かった。

聞いたらダメなんじゃないかって思った。

でも聞いた。

「ねえ・・」

ここで一旦途切れた。

曇りの空と風のない空気は、あまりにも静か過ぎて、それもまた不気味だった。

それを今感じてしまったから・・・

でも続けていった。

「私の敵になるってどういう事?」

龍翔は、淡々と答えた。

「言葉通りの意味だよ」

何なの、もったいぶって・・

ついケンカ口調で言ってしまう

「それがわからないから聞いてるの」

不安と恐怖は、私をかなり苛立たせた。

龍翔は、相変わらずの冷たい口調で話す。

「俺は、もうお前にとって不要な存在なんだよ」

「急に何なの?意味わかんない」

「お前は、人間でありながら人間じゃないんだよ」

「ねえちょっと・・ねえ・・」

何が言いたいの龍翔・・・

私は、ひどく困惑した。

これが私の兄の龍翔・・・

何かの間違いでしょ・・・

私は、龍翔の肩を揺さぶって、

「ねえ、あんた誰なの?あんた龍翔に似た違う何かでしょ?そうなんでしょ?」

龍翔は、何も言わない。

それが余計私を不安にさせる。

「ねえ答えて。なんで無視するのねえ」

パシッ

両肩にかかっている私の手を振り払う。

龍翔とは思えない何も感じられない瞳をこちらに向けて言った。

「お前は、一人で何でも出来てしまう。お前は完璧すぎる。だからお前は、周りから特別な視線を向けられていた。それは蔑み同じ類の冷たい目」

「それが何だって言うのよ?」

龍翔は、「まだわからないのか?」と呆れたように言った後、冷たく吐き捨てた。

「完璧すぎるような人間は、機械だ。お前は、この世で、一番いないと思われていた人間になってしまったんだよ」

「ひどいよ・・。どうしてそんな事言うのよ・・」

もう私の心は、ズタズタだった。

なんでよ・・・

どうしてこうなってしまったの?

どうして・・・

私の力がそんなに人をつき放すの?

そんなに私は、機械みたいなの・・・

「しおり、覚えておけ・・・。人は常に自分の能力を嫌悪し、他者の長所に嫉妬する。お前は、それを知らなさ過ぎる」

「そんなの努力すればー」

そこまで言いかけたとき、龍翔は鬼のような形相で怒鳴りつけてきた。

「誰でもお前のようにストイックにこなせたら凡人なんて、いないんだよ!!」

私は、あまりの迫力に体が震えた。

龍翔は、さっきの冷たい顔つきに戻ると、

「ごめん。今のは悪かった。」

何なのこれ?

悪い夢だよね・・・

きっとそうだよ・・

そうでしょ・・・

涙がぼろぼろ流れていく。

龍翔は、私の事を軽く抱きしめた。

そして普段の龍翔の声で呟いた。

「現実の悪夢は覚めない」

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