嘆いたってどうにもならない
別に、新撰組が、試衛館の仲間たちが嫌いになったわけじゃないんだ。
むしろその逆で、みんなのこと、俺大好きだから。
ただ伊藤さんを連れてきたのは俺で。
伊藤さんは隊を割いて分離することを企んでいるらしい・・・・・・。
伊藤さんを連れてきたら、隊の雰囲気が随分と変わってしまった。
だからこれは俺の責任。
ちゃんと、最後までついていかなければいけないと思った。
俺だって、できることならここから離れたくない・・・・・・
初めて出来た居場所だから。
こんな俺が守れるなら、って思ったんだ。
「伊藤派が離隊を考えてるらしい、何人かの隊士に声をかけているようだ」
土方さんの言葉は俺の返事を鈍くする。
「もし伊藤派の連中が、新撰組に何かを仕掛けてくるようなら容赦はしねえ」
「でもいいんですか?離隊なんてさせちゃって、碌なことになりませんよ」
その話は、俺の前でしていい会話なのかな。
俺は仮にも、伊藤一派なのに。
「あっ、わりぃ・・・・・・ちょっと俺、体調悪くてさ・・・・・・部屋、戻ってるな」
そういって足早にその場をさった。
別に後ろめたいことがあるわけじゃない。
伊藤さんについていくって決めたのは、俺だし。
自分が決めたことに後悔はしてないはずなのに・・・・・・
しばらくしてから、一くんに呼び止められた。
「平助」
「ああ、一君か・・・・・・珍しいじゃん、こんなところで」
ここは伊藤さんの部屋の近くだから。
幹部のみんなは寄り付かない。
「俺も、伊藤さんについていくことになった」
その言葉、信じられない気持ちもいっぱいだたけど、
一くんも一緒だって聞いて、すこし安心した。
俺、情けねえよな。
「なんで、一くんは土方さんしか頭になかったじゃん」
「伊藤さんの話しを聞き、俺の意思にそぐうと感じ、ついていくことに決めた。他意はない」
まっすぐな目をしていた。
もう決めたんだなって、そんな一くんがすこし羨ましい。
「そっか、よろしくな」
そして、離隊することが決まった。
数名の隊士を連れて早朝に屯所を出た。
「これで、よかったのかな」
「わからぬ」
でも何が正解かなんて、結局誰にもわからないんだとおもう。
俺馬鹿だからさ、難しいことはわからないけど今回はこれが正しいと思ったから、それでいいんだ。
伊藤さんが作った御陵衛士。
新撰組の隊士と御陵衛士が話しているところが見つかったら、切腹。
土方さんの決定はきっと、正しい。
でも俺やっぱりまだ左之さんや新八っつあんともっと馬鹿やってたかった。
みんなありがとう、それから・・・・・・ごめんな。