55. いつから始まっていたのか・・
「新宿ね・・」巻
「ありゃ、もう結構近い・・」亜美
亜美の単車の後ろに乗る巻。
自宅に戻れば今日最後の修羅が待っている・・
「キュ・・」
「んっ?どうし・・」亜美
後ろから軽く抱きしめてくる巻を振り返って見ると・・
「ごめん・・」亜美
「ぐすっ・・いや・・見なかった事にして・・」巻
大笑いして元気かと思ったら、目に一杯涙を溜めて・・
「ここでいいの?」亜美
「・・・ありがと・・・・」巻
不思議な時間・・夜明け前の街は一番静かだ。
この二人以外は、すべて時が止まっているかのように。
「・・クイっ・・クイっ・・」
っと、亜美が服を直す仕草
何か巻からもう一言有りそうだったので、時間調整というか・・
いや、何かまだ声を掛けて欲しかったから・・
「・・そういえば、亜美って男居るの?」巻
「トクンっ・・」
「・・いや、しばらく居ないね。」亜美
というより『あれ』以来、男に抱かれた事は無い・・
勇気を振り絞って、エースの三代目に抱かれようとしたものの
服を脱いだだけで、『うん。ご馳走様』と、笑顔で返された。
「・・抗争終わったらさ・・」巻
「何?」亜美
「トクンっ・・」
大きく揺さぶられる・・
誰だってこの状況なら・・
「・・・・・・・・・」巻
長い、間・・
こちらの方も見ない巻
「・・・いや・・終わってからか・・」巻
「・・・・じゃあ別れてよ。」亜美
先に亜美の方から・・
もちろん・・・嫌いじゃない。
だけど言える立場では無い。
ここ最近で口付けたのも巻だけだ。
「・・・・・彼女と?」巻
「・・・それはどうせ別れるでしょ・・」亜美
そうなのかも・・
「・・・いやっ・・聞かなかった事にして・・」亜美
「ふふ・・チャラにしとこうね」巻
先ほどの巻の涙と、
亜美の先走った言葉を。
「・・・またね・・」巻
「・・うん・・じゃあ」亜美
「・・んんっ!!」亜美
単車のエンジンを掛けなおそうとした亜美の隙を狙う巻
だが巻の唇が僅かに震えているのが分かる。
勇気を振り絞ったからなのか・・
悲しみで震えてるのか・・
それでも・・
「・・後悔するから・・しないでよ・・」亜美
「・・そうだね・・」巻
この丸く治まる案もあったのでは・・
「・・勝つよ・・横浜が」亜美
「ふふ・・かっこいいよね・・」巻
横浜爆撃は、亜美だけは特攻服じゃなく・・
「オシャレだね・・ギャング系?」巻
「特攻服、特攻服したのはちょっとね・・」亜美
黒のズボンと黒のパーカーに刺繍も背中の真ん中ではなく、
右下に入れられた刺繍は、派手ではなく渋さが目立つ
刺繍に触れる巻・・
「音速喧嘩無頼部隊か・・良い響きだよね・・
もしかして格好も前の東爆の総長に憧れ?」巻
「そうね。」亜美
女でかわいくオシャレで、単車の腕も歴代最高で・・
東爆コールを奏でながら
東京の繁華街を切り裂いていく残像が今でも忘れられない。
「私が勝ったら、街中に東爆コール響かせてあげる」亜美
「ふふ・・」巻
東爆の総長に挨拶に行っていた亜美。
そう、亜美が勝てば亜美が次の東京爆撃隊総長に・・
「巻は・・渋谷で生きていくの?」亜美
「・・・・渋谷だね。」巻
ここで始まり、ここで死にたい。
いや・・守りきりたい・・
「そう・・」亜美
「うん・・」巻
もう一度だけ自然に唇が触れる・・・
「どうしてだろうね・・・」亜美
「本当ね・・・」巻
いつから始まってたのか・・
この恋は・・
同じ歳の二人。
それにこの東京の現役で今すでにベスト3に入る者同士
街の大将と、街の大将同士・・・
同じ歳の有名な不良同士・・が一番しっくりくるのか・・
「・・じゃあな・・・」亜美
「・・おう・・」巻
口付けの後のテレ臭さもあり、プライドもあり、
だから言葉をどう使えばいいのか・・
とりあえずは一番無難な強がりで済ます二人
「ウォンウォ・・」
遠くなるまで亜美の背中を見つめる巻
亜美も視線を感じてるのか・・
「スっ・・」
最後このカーブを曲がれば見えなくなるであろう場所で、
軽く手を上げる亜美。
亜美が走り抜ければ、何か残像が残るような感じだ。
オーラが何か香りと色を付け拡散されていくような・・
それともオーラが亜美に追いつこうとしてるのか・・
巻には、薄紫色の香のように見える。
薄い紫色の煙が・・色と香りを残し・・
(俺も乗ろうかな・・単車・・)巻
不思議だ・・
普通かっこいい男の先輩に憧れて単車に乗り始めるのに・・
「前の東爆の総長に、亜美に、千夏さん・・」巻
前の東爆の総長は赤色に見え・・
千夏さんは・・
(銀色・・・かっこいい・・)巻
俺が乗ると何色に残像するんだろう・・
やっぱり、この三人が飛びぬけてて、
女性としても、不良としても魅力たっぷりだが・・
「・・三割り増しだな単車乗ると・・かっこいいや」巻
まだ亜美の残像に酔いしれていたいが・・
(さて・・会うのが恐いけど・・)巻
それでも、ゆっくり自宅で眠りたい・・
今日ほど疲れた日も無い。
「・・ただいま・・」巻
「・・・・・おかえり」香奈
すべて悪いと思ってるし、ありがとうと思ってる。
それ以上の会話もなく、ベッドに滑り込めば・・
「キュ・・」っと、後ろからやさしく抱きしめてくる香奈
「・・ごめん・・抱いて貰えなかった・・」香奈
「・・・えっ?」巻
こちらも服を脱げば、それで、『ご馳走様』と・・
「・・・いや・・よかった・・」巻
「・・でも、死んだんでしょ?」香奈
いや、貴方のせいじゃない・・
殺させたのは・・俺。
俺・・
・・
「・・はよ・・おはよ、巻くん」香奈
「・・んっ?んん?」巻
あっという間に寝てたみたいだ。
もう14時・・
「・・・着替えてっ早く。審議だって・・」香奈
「・・ああ」巻
当然だ。
進藤の死に、昨夜の池袋騒乱
いや待て・・誰から香奈に審議だって連絡?
「渋谷の本部事務所だって。」香奈
「あそこか・・」巻
こないだの不良指定されたヤクザ事務所だ
急いで着替えて渋谷に向かう。
東京のドン達や女帝達。
それに、千夏・愛羅・総長のお三方に長山
「・・・お前はどうして、いつもギリギリ・・
いや、ほぼアウトの所で勝負するんだ?」
「そうっ。ギリアウトで審議でセーフ的な・・」
「アウト、アウト。今回は。」
俺の事だ・・進藤の死に、池袋騒乱
「・・・んで、まず進藤の件は?」
「・・・抗争相手ではない・・が三人の結果論です」総長
あくまで身内、いや抗争相手ではない他人を
巻の子飼いの若者が殺した・・
「じゃあ、ギリセーフにしよう・・」
「人殺してセーフはないでしょ・・」
「問題は、その動機だけどね・・」
言うな・・知ってても・・
「進藤だけだ・・知ってるのは・・」
「実行犯?・・」
「くそ、トリッキーだよね・・」
アウトロー史上最高だって・・
何が進藤だけだ・・『知ってるのは』って。
てことはそっちも知ってるって事だ・・
「まあ、それは置いといて・・」
「・・・・・・・」巻
「池袋騒乱か・・」
「巻君は拳鍔脱退ね・・これについてお三方は?」
この抗争のルールを決めた千夏・愛羅・総長の見解は・・
「・・・残念ですが・・」総長
「ちょっ!ちょっと総長~!」長山
爆撃紅蓮・二代目拳鍔、脱落。
「ルールはルール・・・」愛羅
「巻はすでにあの時拳鍔脱退。
殴り合ってたって証言も有るけど一般人の目撃者も無し」千夏
「すげえな・・五十嵐(亜美)の時もそうだったが」
「ギリアウトをセーフにするよね」
「アッパレ・・それでも」
「・・・どうしたの?目閉じて・・」千夏
堪えているから・・・
無にならないと、笑い声が出そうで・・
そして・・
「なんなんだ!?この抗争は!」長山
そりゃそうだ完全に不完全燃焼だ。
だが問題がある。
どっちが勝ったも無いし、
この不完全だからこそ・・
「残った兵隊は、どうするんだ?」
「そうよね・・」
「まだバリバリだし・・」
不参加?もしくは、どこかに吸収?
「拳鍔は抗争離脱するそうです」千夏
「まあ食っていけるしな、拳鍔は」
拳鍔はこれでいい。。
何ももう抗争する必要はない。
だが、池袋は・・
「じゃあ、誰にも付かなかったら?」長山
「・・ただの地元の不良・・」
「もしくは上に上がるか・・」
不良引退・・ヤクザか、半グレに・・
終わる・・不良人生が・・
まあヤクザになって仕事次第で出世もあるだろうが・・
「やっぱ若い頃の地盤が大事よね」
「いや、そうとも限らんぞ・・」
「ああ・・若い頃すげえ人数連れてても・・」
ヤクザになって貧乏した連中はいくらでも居る。
「だから若いウチに名前売りまくって・・」
「その名前で商売して・・」
「上に気に入られて・・」
まあ、この上に気に入られてってのが一番大事だ。
何より、このひどい巻でも気に入られるのは・・
「結局結果を出す奴だ」
「結果論だからね」
「そう、勝てばいい・・」
勝つ奴の魅力・・・
「どんなに巻が悪党でも、私はかわいく思える」
「悪党でも華は咲く」
「いや、悪党じゃないと突き抜けられない・・」
時代を・・
はは・・
すっげ~テレる・・高評価だ・・
「・・・・・巻ぃ!」長山がすごい形相で・・
「何?てか・・誰?」巻
もう、長山は目から血が吹き出そうなくらいの形相だ。
「・・・止めろよ・・闇討ちとか襲撃は・・」総長
「もう負けたのよ・・貴方は・・」千夏
「そうっ・・潔さが大事よ」愛羅
「・・・・・・・・」長山
「にっ・・」っとただ笑う巻
何も答えない両者に変な間を打開する為に・・
「・・・ああそうだ巻、あの件了承取れてるぞ」総長
「んっ?」千夏
「何?」愛羅
「・・・」長山(まだなんか企んでるのか?)
「・・・・ふふ・・」ただにっこり笑う巻
まだここで言うなよ・・。
ふふ・・
止めれるもんなら止めてみろ・・・
悪漢無双のこの俺を・・
何色に・・輝く・・
この悪漢は・・




