16. 六本木の雨
中根が体中を自分の手で触りながら・・
「くそっ・・まだカチ痛ぇよ・・」中根
「よっぽどだな・・」
「だな、総長ばっかりに無理させすぎだ俺等も」
拳鍔のナンバー2にヤラれて結構経つが、
まだ体中があちこち悲鳴上げてる。
だから、しばらく喧嘩もしてない。
やったって、この体じゃあすぐやられるし。
その間に情報収集だ。
「やっぱ資金面では、ぶっちぎり下位だな」
「俺なんか、今六本木までチャリで来てるんだぞ・・」
ウチは硬派でカツアゲとかもしないからいつも貧乏だ。
メンバーが簡単に作って来てくれた表を眺める
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資金
渋谷拳鍔 SS
六本木喧嘩歩兵連隊 S
六本木非行少年喧嘩夜芸 A
六本木飛鬼 C
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切ない・・ちなみに、SS・S・A・B・Cランクらしい
唯一、兵隊喧嘩能力平均値がSだ。
あとは、カリスマ性や個人能力、なんだかんだ大体B・・
「いやっ・・もうちょっとヨイショしろよ・・
自分のチームに大将も・・」中根
「女帝もCだしな・・いや、Dか・・」
「怒られるぞリオに・・」
意外に楽しいもんだ情報戦も。
実際六本木の路上で毎日たむろしてるのは飛鬼くらいだ。
他はキャバクラかオシャレなバーで遊んでる。
だが、毎日路上に居るから実態がよく見えてくる。
「非行少年・・やっぱりメンバー入れ替わってるな・・」
「ああ。きっと二班に分かれてるのか?」
「分散か・・拳鍔みたいだな」
どうも非行少年は毎日人数は同じ位だが、
メンバーがちょいちょい違ってる。
まあ、未だに謎の多いチームだ。
「でも、前の東京ナンバー1から直接代目受け継いだんだろ?」
「ああ・・だから頭は絶対相当なはずだ」
ぶっちゃけ、これがエースオブドラゴンだってのは、
みんな薄々気づいている事だ。
まあ、こんな事よりもっと大事な事が・・
「んで、あの件どうすんだ・・中根・・」
「本当バカヤロウだよ・・俺は・・」中根
本当バカヤロウだ俺は・・
「正直、まだ走りだしたばっかりなのに、止めさせたくねえ・・」中根
「じゃあ、おろさすのか?」
リオが妊娠。
せっかく女帝目指してがんばりだしたのに・・
最悪俺も引退・・いや引退せねば・・父として・・
「16でママじゃあ、相手の親も承知しねえか?」
「店も辞める事になるな・・」
わかってる・・そんな事は・・
何より、リオの夢潰す事になる・・
「でも、いいきっかけかと思ってよ・・」中根
「うん。そうだな。がんばったよ総長」
「ああ。恥じる事ねえよ。」
「ああこれくらいのがないとお前は結婚に踏み切れねえぞ」
「はは・・・・すまねえ・・・」中根
終わる・・俺の不良人生が・・
正直悔いが残る・・まだやっとチームも形になったばかりなのに
少し想像もしてみた
自分が汗まみれになって働き、リオが出迎える。
昔は夢もあったって、酔ってしゃべるのかな・・
分かってる・・責任がある・・
だけど・・
「・・・・・・」ただうつむき無言の中根
「・・・やっぱ、よく二人で相談しろよ・・」
「ああ・・もし向こうの親が認めなかったら、おろす事にもなるし」
「別に子持ちの不良でも問題はねぇし・・」
~~~キャバクラレーザー~~~
「おろしなさい」愛羅
「えっ・・」
「愛羅さん、いきなり・・」
「・・・・・・」リオ
まだ歳が16ってのもあるが・・
「・・・ある人が、
次の時代のトップを担う人に言った言葉がある・・」愛羅
「はいっ・・なんて・・」リオ
『きれいなまま東京が取れるほどこの世界は甘くない・・』
『お前、上に上がって行く為に何人殺した?』
「・・・・・」リオ
「色んな捉え方があるわ・・ある意味それも死・・」愛羅
「たとえば・・」リオ
「男の夢を潰すのも、それは殺したのと一緒・・
貴方の夢を潰すのも・・。
そして、おろすのも・・・」愛羅
「・・・ええ。
・・あの人は不良でしか輝けない・・
しかも・・才が有る・・人を引き寄せる・・」リオ
私には無い・・
私は、ちょっと早い段階から、
何を見られたのか、上の人から認められただけ・・
「私は、おろして貴方が走れって言ってるの・・」愛羅
「・・・もし、愛羅さんなら?」リオ
聞いておきたい。この人の考えが一番女帝に近い・・
いや、女帝そのものの考えだと思う。
「産むわ。惚れた男を走らす。」愛羅
「愛羅さんじゃあ・・」
リオにも産めと言えば・・
誰もがそう思う。
「男による・・」愛羅
「はいっ・・分かります」リオ
中根じゃあ、
爆撃の総長とは違う・・
「一番の近道は、中根を使って拳鍔か非行少年を潰す事ね」愛羅
「えっ?どういう意味です?」
話が飛びすぎて、他のキャバ嬢はついて行けない・・
(そう・・そこまでしないと女帝にはなれない・・)リオ
裏切るのも、一つの考え・・
うまく中根を使い・・・
どうせ子が出来たとなれば、あの男は引退する。
最後の炎は強力だ・・
爆撃・・拳鍔のどちらかを焼き尽くすほどの物が出るはず・・
「私の次が、一番近道だって言ってるの」愛羅
「・・・・」リオ
そう・・愛羅さんが女帝になって・・
その次に私・・
私に鳳凰を託した前の女帝もそうだった。
回り道をしたが、結局は先の女帝の近くに居たから女帝になれた・・
愛羅さんの爆撃に付けば、最低でも女のナンバー2にはなれる
そして引退すれば次は私・・
いや、愛羅さんが東京のすべてなら、
私の夢六本木の女帝くらいならすぐに・・
「かわいいのよ。私も前の女帝の人も貴方が・・」愛羅
「・・・正直、私に何があります?
私には分からない・・私に人より秀でた物があるとは・・」リオ
何もない・・夢くらいしか・・
「夢と信念」愛羅
その答えに
ぶわっ・・と、涙が出てくる。
ただそれしかない・・
でも、言い切れる自身がある。誰よりも・・
「女帝に・・なりたいっ!・・ぐすっ・・」リオ
「なればいい・・」愛羅
長い夜だ今日は・・
ずっと愛羅さんの胸で泣いている。
たまに、へら~っとした、バカ娘(香奈)の顔が浮かぶ
「愛羅さん・・ご指名ですが・・」ボーイ
「忙しい・・」愛羅
「・・・はい・・」ボーイ
「・・いいから・・」店長
「あっ・・はい。」ボーイ
ずっとやさしく撫でてくれる。
たまに顔を覗いたらやさしく微笑んでくれる。
別にそういうあれじゃないけど・・
「ヌチャ・・」
欲しがれば、キスもしてくれる。
でっかい人だ・・
~~~六本木の路上~~~
「うひゃ~、降り出した降り出した。俺等帰るぞ、中根~」
「ああ・・」中根
「居るのか?まだ?」
「もう少しな・・」中根
軽く降り出した雨にメンバーは退散
だが俺は動けずに居る。
いや、動きたくない。
「おい・・異様だな・・」
「ああ・・特攻服着て雨の中微動だにせず路上に座ってる・・」
「かっけーな、飛鬼の大将。」
売名か・・そんなんじゃなかったけど、
ただこの六本木を、一分一秒でも長く感じたいだけだ。
「ポッ・・ポッ・・ザーーーー」
最悪・・
大雨だ・・
それでも空を見上げれば、雨に夜のネオンがよく似合う街だ
それに響きもいいな・・六本木の雨・・か。
目を閉じて、この六本木を感じる・・
音・・匂い・・風・・
すべて詰め込みたい・・俺の青春・・この六本木を・・
「ザーーーーーーっ・トトトトトトト・・」
音の変化に雨が落ちてこないので、誰かが居るのはすぐに分かる。
目の前で俺に傘出して、てめえが濡れてるバカが居る。
「止めろっ・・お前が風邪引いたらどうすんだ!?
子供に迷惑掛けるな・・」中根
リオだ。
「・・大丈夫・・・・・もう・・おろして来た」リオ
「はあ!!?何勝手な事してんだ!」中根
立ち上がり・・
「くっ・・・」中根
この上げた手をどうするつもりだったんだろう・・俺は・・
「・・・何で!?どうして・・」中根
その手で濡れた自分の髪をかき上げ顔をおさえる。
よかった・・感情に流されて手を出さずに。
「責任取ってよね・・」リオ
「ああ!?だから、責任取るつもりで俺が不良引退して、
仕事と育児してお前を走らす。そのつもりだったのに!」中根
「違うっ!」リオ
「リオ・・」中根
リオの眼からは大量の涙が溢れてくる・・
だが、空を見上げ雨に打たれごまかそうとするリオ
泣きはしない・・。
「責任取れっ!・・もう、絶対負けるなぁ!」リオ
「くっ・・バカヤロウが・・」中根
二人で・・いつかこの六本木を・・
どちらも欠けずに・・
取ってやる。責任。
俺がトップになって、
お前もいつか女帝になって・・
「うん。それからでいい・・幸せなんて・・ぐすっ・・」リオ
へっぽこじゃねえ・・DランクでもCランクでもねえ・・
Sランクの女帝だ。ウチの女は。
もう迷わない。俺が突き抜けるんだ。
この六本木を・・
決心・・いや、最初から死ぬ気で行ってやる。
チャチな勲章なんてもう要らねぇ・・
狙うは・・
「六本木飛鬼だぁ!コノヤロウ!」中根
「・・・聞いたことないよ・・じゃあまた・・」巻
「はは・・今日忙しいから」進藤
軽く受け流す二人
(くううう!このっ・・)中根
「新時代のバカヤロウがあぁ~!」中根
「なんだ?あいつ?」進藤が振り返って
「ヤダヤダ・・古臭い不良って・・」巻は見向きもしない
(へへ、がんばれっ飛鬼っ!)リオ
誇り高く靡く特攻服に新たに刺繍を追加した。
『六本木夢想』(六本木無双)
鬼が夢想い、飛んで行く・・・
「六本木飛鬼だぁああぁこのやろう!」
さあ・・
この六本木に・・・・響き渡れ・・。
次の章は、六本木非行少年喧嘩夜芸です。




