14. 過去。生きて行く為に・・
あれから順調な毎日だ。
金の事・・、香奈との恋愛ごっこ・・。
詐欺グループを傘下に付け増えていくシノギ・金。
(それでも、いつか表立って大きな組織にするには・・)巻
まだまだ足りない。
正直、人の下に付きたくない・・
基本不良を突き進めばヤクザになるパターンだ。
でもくだらない上の者に、いびられ、金取られ・・
だから理想は自分で組出す事だ。
幸い、この国の裏家業のトップは理解がある。
今は金で何でも買える時代だ。下手したらこの東京さえも・・
(まず、すべての不良を押さえれば・・)巻
必然的に今ある裏家業を独占だ。
いずれ、上が死んで行けば俺の出番も・・
だが俺に足りないもの・・足りないジャンル・・
ここは絶対に落とせない物・・
(香奈じゃあ・・弱い・・バイトだしな・・まだ伸びしろはあるが・・)巻
水商売だ。
ここを押さえれば、いやっ・・ここがメインだ。
詐欺や窃盗なんて、息の長い商売じゃないし、
表立ってやる事も、やり続ける事も無理だ。
やはりアウトローで生きて行くには飲み屋に風俗。ここを押さえなければ。
だから欲しい・・今・・この時代一番の才能が・・
「潰す・・爆撃を・・
何より欲しいのは愛羅さん・・」巻
自分で自然に『さん』を付けてるのに気づいて、何か恥ずかしくなる。
ただの独り言なのに・・
たまに香奈の事も『香奈さん』って呼んで
香奈にニヤニヤされる。もう一回言ってって・・
ふと気を抜くと出てしまう。心の中での尊敬心や憧れ・・
もっとプロ意識を持たなければ・・冷酷なる不良の
まあ今の問題は爆撃だ。
前回池袋で揉めた事で抗争に火が着いたのもあるが・・
「甘い罠か・・」巻
爆撃の総長が単機で六本木に駐屯
これを潰せば・・・
くそ鳴り響く・・。
不良としての名前・格。
だが、やはり甘い罠だ。
まさかの主戦力を失った・・
池袋襲撃に来てなかった
「鉄也・・それに、初期メンバー・・」巻
鉄也と本流のメンバーが、この甘い罠の餌食に・・
勝てなかったのだ。遊軍の渋谷拳鍔本隊フルメンバーで一人を狙ったが・・
返り討ち。全員入院中だ。
圧倒的喧嘩能力。次元が違う。
(もし勝つなら猛者10人以上で・・)巻
それでもギリか・・。もし負ければ、残りはカスだけで、
爆撃の兵隊にあっという間に飲み込まれる。
やはり、爆撃の兵隊の人数も減らしておかないと・・
深夜に香奈が仕事から帰宅して・・
「ただい・・あれっ?真っ暗・・」香奈
部屋に居るのは分かっている。
今から帰ると電話したし、靴もあるし、
何より奥で月明かりに僅かに照らされた巻が居る。
「ただいまぁ。電気付け・・」香奈
「・・付けないで!」巻
「・・うん。」香奈
何かあった・・そう思う。簡単に。
バックを置き、ゆっくり部屋の隅に居る巻に近づく
「ピトっ・・」
「もうっ・・熱い・・喧嘩したんでしょ」香奈
巻の顔に触れると熱い・・
薄明かりでも分かる張れた顔・・
冷やしたタオルでやさしく巻の顔に当てる
何も言わない巻。
ただ側に居て、何度か熱くなったタオルを取替える。
まだ巻は何もしゃべらない
「・・・負けたんでしょ・・」香奈
「・・・・ぐすっ・・」巻
背中を向けた巻から鼻をすする音が聞こえる
ゆっくり背中から抱きしめる香奈。
「いいよ。二人の時くらい感情出しても・・」香奈
いつも冷めた不良を演じてる巻
それは最近香奈も分かりだした。
生きて行く為に・・
何か同じ業種のように思えた。
お水と不良・・
いつもお互い部屋を出て行くとき何か気合を入れ、
ここから仕事だ・・的に気持ちを切り替えて出て行く。
「・・聞かせて・・巻君の過去・・」香奈
「・・・・うん」巻
きっと壮絶なる過去・・・
~~~小学校時代~~~
小学5年生の巻
「・・・ねえ・・お父さん・・・」巻
「・・・・・・・・」父親
「ねえ・・お母さん・・」巻
「・・・・・・・・」母親
呼びかけても答えが無い。
学校から帰ってきた夕方。
テーブルの上に置かれた手紙と封筒・・
~~~~
これで、おいしい物でも食べて太一(巻)
~~~~
たったこれだけ書かれた手紙と、封筒の中身は・・
(千円札と・・えっと、いち、にい・・)巻
小銭まみれの、1400円。
「へへっ・・マック買いに行って来よう」巻
夢のようなセットだ。
まだ一度しか食べた事のない、てりやきセット。
「もぐ・・」
「へへっ。おいしい。」巻
自宅に持って帰りコーラで、流し込むハンバーガー
この至福の時なら、今は感情も忘れさせてくれる。
「へへっ・・最後の一本~」巻
最後のポテトを口に運びながら見る、首を吊った父と母。
「へへっ・・へへ・・ぐすっ・・」巻
食べ終えたら、こみ上げてくる寂しさ。
「お父さん・・お母さん・・」巻
それでも、愛してたはず
一緒に隣で吊った首。握った手。
子供でも分かっていた、困窮している生活、借金。
隣にある潰れた工場。
いつも仕事をしてる父親を覗きに行った。
物を叩くうるさい音と、汗まみれになって働く父親の姿。
子供にして分かった事・・
一生懸命真面目に生きても、しょうがない・・・
しばらく学校にも行けない。
たんだん匂いがきつくなる家の中
それでもまだ見ていたい。仲良く手を繋いだままの愛を・・
いや、側に居たい。
~~~~~~~~~~~~~~~~
その後、心配になって家にやって来た学校の教師
慌しく出入りする警察。
「太一、今日から太一の養父になってくれる人」教師
「よろしくお願いします・・」巻
「うん。よろしくね」養父
そして養子に出される。これしか生きていく術はないのは分かってる。
「太一、お姉ちゃんだよ」養父
「あっ。よろしく。お姉ちゃん」笑顔の巻
「・・・・よろしく」姉
唯一忘れさせてくれそうだった。
新しく出来た姉と言う存在が。
この姉もここに養子にやって来た子だ。
この巻家はかなり裕福だ。
お父さんは資産家って奴らしい。
このお母さんは微妙・・
いわゆる家政婦である。本当の家族かは分からない。
大体あまりにも歳が離れてるお父さんと・・
「・・太一、おいで・・」養父
「・・・はいっ・・」巻
生きて行く為に・・
「ジュ・・ジュ・・」
「ほう、うまくなってきたな太一・・」養父
いつも口を使わされる・・
お父さんは両方大丈夫みたいだ。男も女も・・
「じゃあ、そろそろ・・」養父
「うっ・・いっ!痛っ・・たい!」巻
メリっ・・と言うような音がして、入ってくる養父の物
これほどツライとは・・生きていく事が・・
「じゃあ、出かけてくるから」養父
「はいっいってらっしゃい」巻
「はいっいってらっしゃい」姉
お父さんが出て行けば・・
「うわああああああああん」巻
部屋に籠もり大声で泣くくらいしか・・
「ポンっ・・」
部屋に入って来た姉に軽く肩を叩かれる
「うう・・うう・・おねえちゃん・・」巻
「・・・・・・・」姉
姉だってそうだ。いつも俺か姉と遊んでるお父さん。
「どうせ忘れる事なんて出来ないから・・」姉
感情を殺して冷たく生きろ・・
「でないと、死にたくなる・・いつか見返せばいい・・」姉
「うん・・うん・・」巻
よく分からないが、それしか無いみたいだ・・
だがエスカレートしてくるお父さんの遊び
「んん?今日は弟が見てるから声も出ないか~?」養父
「・・っ・・」姉
俺に行為を見せ付ける養父
(駄目っ・・弟が見てる。声なんて出しちゃだめ・・
・・せめてクールに・・)姉
女の人の裸を見るのも初めてだ。
もう俺も中学二年。
はち切れそうな股間・・
さらに分かりだしたお父さんの力・・権力・・
この日本でも有数の資産家。
出入りする人間もその道のトップばかり。
政治家・有名人・暴力団・・
(逆らえない・・お父さんには・・せめて中学を卒業するまでは・・)巻
絶えるしかない。姉ともそう言い聞かせてる。
過去にも俺や姉以外にも養子は居たが今は行方不明だ。
圧倒的権力と金で・・・。
「ほれっ・・」養父
って、何か機械をねじ込む養父に堪らず声が出る姉
「あっ!・・くっ・・」姉
「ふふ・・ほれっ。太一も自分でしなさい」養父
駄目だと分かってるが、やらされたんだと自分に言い聞かす。
「くっ・・くっ・・」巻 (ねえちゃん・・)
自分で自分の物を手で動かす。
「こっちに来い太一・・」養父
目の前に姉が居る・・
「うっ・・痛っ・・たい!・・」巻
ずっと見てる姉に、後ろからねじ込まれてる俺
(お姉ちゃん・・痛いよ・・)辛そうな顔の巻
「冷たく・・」そう姉が小さくつぶやく
そうだ・・冷たくならなけゃ、生きて行けない。
感情が出てた・・こんなもの痛くもない・・
「ふふ・・してみろ、お前等」養父
「・・はい」姉
「・・はい」巻
「あああっ」巻
「くっ・・」姉
初めてだ・・女の人の中に・・・
こんなにも、あったかく・・やさしく・・包み込む・・
それでも、お互い声を上げたのは最初だけだ。
でないと生きて行けない・・
冷たく・・冷血に・・
ここから変わった。
涙なんて物や、やさしさなんてここで置き去りにしてきた。
姉の嫌そうな顔が俺を・・変えた。
俺を冷血な不良に・・
~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぶわあああん」香奈
「お前が泣くなよ」巻
悲しい過去だな・・
本当に・・くくく・・
~~~~~~~~~~~~~~~~
だが、ある日自宅に帰ると父が事故で死んだと聞かされた。
「あっ・・姉貴は・・!?」巻
「ちょうど卒業だったし出て行ってもらったよ」家政婦
姉は中学を卒業したので自立させられる事に。
俺はまだ中学生なので、しょうがなしにこの家に置いてもらう事に。
どうやら、この家政婦が本当のお母さんになってたみたいだ。
もう養父も居ないので俺にご飯も作らない。
ただ遺産が入ったのだろう、十分すぎる金は俺にくれる。
そして出入りする若い男の影・・
どうせくだらないセックス・・汚いセックスでもしてるんだろ
「ほれっもう卒業だし、これで帰ってくるなよ」養母
「これだけかよ?」巻
相当な資産家だった養父だが、俺に渡されたのは、200万だけ
「15のガキが、200万も在れば十分だろ!
籍があるだけでも、ありがたいと思え」養母
「ちっ・・まあ、今までありがとうございました・・」巻
あれだけの事させられて200万・・
一生忘れる事の無い心の傷・・
それでも、この巻という名前が役にも立つ・・
~~~~~~
「へ~・・あの巻家の・・」不動産屋
「・・ええ・・父は亡くなりましたが・・」巻
まあ、知ってる奴には飛び切りだ。
「ぜひ、お母様にも何かご要望があればウチを・・」不動産屋
「ええ。機会があったら」巻(会わないけど・・)
まあ、保証人なんて付けなくても大丈夫だ。
簡単に、この巻の名前が通じるところならば部屋は借りられる。
~~~~~~
巻家を出てからは、自分の才能に気づかされる
~~~過去の渋谷~~~
「うひゅう・・強ぇな」
「ひでえ・・そこまでやるか?」
「ははっ、嫉妬だよ・・男前だしな」巻
喧嘩相手を何の感情も無く殺そうとする俺。
人って殺しちゃいけないの?なんで?
抜け落ちた感情に、生まれ持った身体能力。
これほど自分が不良に向いているとは・・
勝手に付いた鬼巻の異名や、街中に広がる悪党の噂・・
それで自然と集まってくる不良達
「巻、今日何する~」
「くく・・半グレ狩りだ。最近あいつ等調子乗ってるからよ」巻
止まらない勢い・・躍動・・
大したことねえ・・渋谷の不良なんて
今はとにかくこの抜け落ちた感情で兵隊と金を増やす。
渋谷を取るんだ・・
どうだ?俺の躍動は・・見てるか?届いてるか?姉貴にまで・・




