食える物なら食ってみろ 加筆&改
食事を終えたミーヤ達はブラウが得意とする占いをしてもらうことになった。
初めはビーツが占ってもらえば良いじゃないかと言っていたが、ブラウからもしよろしかったら巫子様を占いたいのですがと顔を赤くして言って来た。
な、なんて可愛いの!!
この子の写真を撮って売ればどれだけ儲ける事か…
思わずブラウの手を握りしめながら、ミーヤの目がキラリと光る。
バコ!
「うぎゃ! 何すんだよ!」
いきなり後から駆け足人参で頭を叩かれたミーヤ。
人参も痛そうに足を摩っているが、ミーヤも痛そうに頭を抱えている。
「ミーヤ。お主が邪な事を考えておるから見て見なされ! ディレクやバルト達がこちらに近寄れないではないか」
言われてディレク達の方に目をやると、彼らは半径2メルモ(1メルモ=1メートル強)付近からじっとこちらを見ている。
どうも、彼らの目には、自分の事を妖しい男としか見ていない。
一応女なんだけどな…これでも…。
ビーツのお小言に寄れば、天馬と言うのは汚れを知らないらしい。
本来彼らは、処女が童貞しかその背に乗せないそうだ。
それを聞いたミーヤは、ビーツを見て指差すとグフフフと不気味な笑い声をあげる。
だが、今回は王の願いと言うよりも神の願いだから、自分達を背に乗せているんだと言われ、ミーヤは頬を膨らませると「どーせ私は耳年増の汚れですよー」と不貞腐れている。
「それに、私が考えていたのは決して邪な物じゃないんですよ。純粋なる人助けです。ちょっと!何よ!その疑い深い目は!!本当だって、ただちょっと私はチャリティーの事を考えていただけですよ」
あのビーツの目は疑いの眼差しだ。
キー!!
私の脳内花畑が一気に冬に早変わりするじゃないのさ!
「チャリティーとは、何の事かな?ミーヤ」
疑り深い三つの目玉が(まあ、ミーヤを見つめているのは、三つのうち二つだけだどね)ミーヤを見つめる。
「ちゃ、チャリティーとは、恵まれない人達に施しをすることですよ。ほら!私にだってそのような広くて清い心くらい持っているんですよ」
ビーツからの視線は痛いが、ミーヤは自分の考えを口にした。
「例えばですよ。ブラウさんの写真って分かんないよね。えっと…」
「肖像画のことですか?」
ブラウの言葉に、ミーヤはコクコクと激しく首を盾にふりつづける。
「そうそう! その肖像画よ。それをね、この掌くらいとかこうやってペンダント中に入れれたりすると、女の子って嬉しい訳なんだよ。女の子向けでバカスカ売れるって寸法なのさ!」
コホン!
ビーツの乾いた威厳尾ある籍にミーヤは熱弁を振るっていた手を思わず下げた。
「先程からミーヤの言う事を聞いてると、どうやらチャリティーよりも金勘定の話にしか聞こえないんじゃがな」
「それは、ビーツ様の気のせいですよ。儲けない事には、チャリティにつぎ込むお金がない訳ですから、それも考えておかないと…」
ミーヤの言葉に、心を打たれたブラウはパチパチと感動の眼差しで手を叩いて来る。
そんな真っ白な心で感動されても、腹の中はお金の事しか考えていないミーヤは、ただ苦笑いするしかなかった。
結局占いは出来なかった。
占う側の精神が安定していないといけないからだそうだ。
「では、お食事にしましょうか。今日はとても豪華なんですよ」
それを聞いたミーヤのお腹は、盛大に鳴り響いた。
大きなテーブルの上に置かれたのは、緑や青の目玉に足の指がついた物がデーンとナベに入れられていた。
大きさは、ホタルイカくらいだろうか。
目玉が異様に大きいから、食べようにも目が合ってしまうため、食べる気力さえもなくしそうになる。
「これって…センギャン山にしか生息しない珍味なんですよ。後は、野菜もありますよ」
そうやって出された野菜は、赤紫色と言う毒々しい色をしている。
こ、これって物言わぬ…(1つ目ウサギの肉は、悲鳴をあげるから入らないけどね)食べ物達の言葉が聞こえて来そうだ。
食える物なら食ってみろ!!
飲み物をどうぞと渡されたミーヤは中身を確かめずに飲んでみると…甘茶にとろみを着けたようなそんな味がする。
飲んで軽く咀嚼するたびに、シャリシャリと小気味の良い音がして来る。
どうやら、甘茶に似た味は、このツブツブの物から出ているらしい。
一体どんなものだったんだろうか?
興味本位ー恐いもの見たさで、恐る恐るミーヤは竹筒の中身を器に移し始めた。
見なきゃ良かったのに…思わず見て確かめてしまった自分を叱りたい。
器の中に入っているのは…
どんよりとした緑と灰色のアメーバーのようなジェリー状の液体。
そのアメーバーの中には、無数の小さなアリが蠢いている。
見ているだけで全身が痒くなりそうだ…。
顔を引き攣らせながらも、他に食べれそうな物はないかとチェックしている。
「どうしたミーヤ? 食べないのか? これはアイフィートって言ってな、センギャン山の三大珍味なのにな、勿体ないのー。これこそ売ればお金になりそうな物ばかりなのにな」
お金になりそうな物ばかり…と言う言葉を聞き、ミーヤは目を瞑りながらも目の前に出された食べ物を片っ端から食べ始めた。
目を瞑れば、食べれない物はないらしい。
でも、目と目が合ってしまうって言うこのアイフィートだけは、複雑な思いを胸に抱きながらもミーヤは次々とそれらを胃の中へと送って行った。
そろそろ出発だと言う時に、ブラウがミーヤに道案内も兼ねて私も着いて行きましょうかと声をかけてきた。
この辺りは、天馬でも迷わせる迷いの谷が存在していると言われ、ミーヤはビーツとディレク達の方を見ると彼らは構わないし、こちらの方から道案内をして欲しいくらいだと頼むつもりだったと言い出して来た。
「迷いの谷…って本当にあるんだ…」
ミーヤの言葉に、ビーツはただ頷くだけ。
「ミーヤ。お前はまだ迷っているのか?」
靴ひもをキツク縛りながらも、ビーツはミーヤの方を伺い見る。
「迷ってなどいない。男が男の花嫁になる事自体、狂っている」
「巫子どの。ビーツ様、それでは参りましょうか? お支度は出来ましたか?」
ブラウの出で立ちを見たミーヤは、言葉を失った。
か、可愛すぎるのだ。
彼の服装が鼻血ものなのとしか言いようがない!
青い髪を緩く三つ編みにしているのは、昨日とおなじだが。
複雑な文様が刺繍されている長いコートを着ている。その下は胸元にフリルが贅沢についているシャツとベスト(これも、黒地に細かい銀の刺繍が施されていて、見た目には黒地とは分からないくらいだ)にぴったりとフィットしたパンツを履いている。
こ、これって…かっこいいを通り越して、オタクの世界だよ!!
カメラ!カメラ!!
誰か私にカメラを頂戴!!
ブラウの写真集だけで、儲かること間違いない!
目を爛々と輝かせているミーヤの頭をまたしてもビーツが軽く叩く。
「ですから、邪な心でブラウ殿を見るのはお止めなさいと言った筈ですぞ、ミーヤ」
頭をさすりながらも、ミーヤはブラウの写真で大儲けのアイディアをビーツに告げると、ビーツに何かを囁かれた。
それを聞いたミーヤは途端に青い顔をすると、すでに外で待っているディレク達の元へと向う。
ーミーヤ殿。あまり羽目を外されますと、ブラウ殿にあなたが女だと言う事をバラしますよ。聡明なブラウ殿なればこそ、彼はすぐにでも王にそなたが女である事を告げられるでしょう。
あの寒イボの言葉しか言えない男に知られるくらいなら…この変態…いや高尚な趣味を少し押さえておかなくては…。
ひらりと天馬に股がったミーヤは、ここから飛んで行く物だとばかり思っていた。
だが、ブラウからここには、天馬を好んで食べる魔物も生息する迷いの森がありますから、歩きで行くのが無難でしょうと肩すかしのような返事が返って来る。
迷いの森…。
この山頂からも見える紫色の茂み。あれがそうなんだ。
一度、そこで迷えば何人たりとも外へは出れないと言われているとビーツからも聞いた。
私に邪な心があると言うならば、あのお馬鹿な王はどうするんだ。
あれこそ、迷いの権化だろうが!
一歩一歩とミーヤ達の足が迷いの森へと向かって行く。
「なあ、ビーツ。時渡り人は皆、その時の王と結婚するのか?」
「ええ。そう伝え聞いていますが。もしかすると伝説を担っているだけなのかもしれませんね」
「それは、私が男でも構わないと言うのだろうか?」
「………」
「私は、絶対に拒否する。断固としてあの男との婚姻などあり得ない」
道案内をしているブラウはミーヤの言葉を聞きながらも、空を見上げる。
怪しい雲行きになりそうだ。




