空席に
シエル達が去った後の大和城――巫子の間。
大きな円卓。
その周りには、四人の巫子が座っていた。
天之御中主神の巫子。
伊邪那岐の巫女。
天照大神の巫子。
月読命の巫子。
天之御中主神の巫子である流夢薙の後ろには、タガエが控えていた。
空いている椅子は二つ。
「シェルリーズ・ブルーネル……彼女を大和城に招いておきながら、なぜ留めなかったのです?」
天照の巫子は責めるように流夢薙に言い募る。
「そうですね。彼女は、確実にこの国に何かをもたらす。彼女は監視をした方が良い」
天照の巫子とそっくりの月読の巫子もまた、流夢薙にきつく問うた。
「しかし、『彼』が彼女を視つけたと」
伊邪那岐の巫子がその間を挟むように口を出す。
その様子を、流夢薙は他人事のようににこにこと聞いていた。
「流夢薙様」
タガエがあきれ顔で注意を促す。
「だって。ねぇ? 夜月、いるんでしょ? 入っておいで。君の席はきちんと用意されているんだから」
がらり。
扉が開けられ、不機嫌そうな少年が入って来た。
「夜月、何か言いたそうだね」
「流夢薙殿!! なにを言っているんですか! 彼は、ここに入ることは許され――」
「伊邪那岐の巫子、君は……いや、君達は思い違いをしているようだね。彼もまた、この国を支える巫子だってことを、きちんと理解しているの?」
その言葉に、伊邪那岐の巫子同様、異論を唱えようとしていた、天照の巫子と月読の巫子は無言になる。
「なぜ、言ってやらなかった。お前らなら、神域を無事に通らしてやることも可能だろ」
「そうだよ。私達なら可能だ。でもね……私達はこの国の巫子なんだよ。須佐之男命の巫子が居ない今、使える者は使わないと」
「……」
「君だってそうだよ。ところで、紅夜月、君はどうしてここに来たんだい?」
「知るかよ」
「シエルちゃんのことが、気になったとか?」
「黙れ」
流夢薙がからからと笑うと、夜月は彼女を睨みつけてその部屋から出て行った。
夜月の姿が完全に見えなくなると、流夢薙はタガエに話しかける。
「あの子、可愛かったからね。どう思う? タガっち」
「知りません。それよりも、会議を進行してください」
かなり淡白なタガエの反応に、流夢薙は笑いながら言った。
「酷いっ。夜月君の人生相談より、会議の方が重要って言うのね!」
「そっちの方が重要でしょう」
「まあ、そうなんだけどね」
流夢薙は、もう一度夜月の出て行った扉を見た後、やはり笑いながら他の三人を見る。
「さて、どうする?」