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そして私達が世界を知るとしても −双子姫忌憚−  作者: 絢無晴蘿
きかいじかけのものがたり
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巫子の逃亡劇



たとえばのはなし


願い事を叶えてくれるかみさまがいたら……





「さて、これからどうしようか」

対して考えて居ないような様子で言うのは槻弓流夢薙。

巫五の国の巫子である。

しかし、今は囚われの身である。

目の前には鉄格子。逃げる場所もなく、暗い部屋に少女と一緒に閉じ込められていた。

「どうしようもできないよ……」

少女――ユウの言葉に、流夢薙は微笑む。

先ほど、ユウはこの檻を壊そうと魔法を放っていた。が、なにかしらが施してあるらしく壊す事はおろか傷一つつけられずに魔法は消えてしまったのだ。

「どうしようも出来ない? それはありえないわ。だって、私を誰だと思ってるの?」

「えっと、みこさま?」

「ちがうちがう」

「?」

槻弓流夢薙は巫子である。それ以上でもそれ以下でもない。

それを否定した彼女は格子の前に立つ。

巫五の国にはない技術だ。

それをゆっくりと眺め――手に触れる。

「私は、槻弓流夢薙さ。これは秘密なんだけどね、巫子になる前の二つ名は――」

途端、格子の目の前に両手を出し、何事かを呟く。


「――二つ名は破壊神」


眩い炎がその手から放たれる。

一閃。

薙ぎ払われたその場所には、白く、赤く熱され、解けた格子のなれ果てがあった。

「最初からそうすればよかったのに」

さっきまで、必死になって魔法を使っていたと言うのに、流夢薙はいとも簡単に檻を壊してしまった。

その事に口を尖らせる。

「ユウちゃんが一生懸命壊そうとしているのを見てたら、ついつい」

そう言いながら、流夢薙はそっと檻から出た。

「ところで、ここはどこなのかちょっとるむなさんとお散歩しない?」

「人を問答無用で閉じ込める相手の庭で散歩はちょっと」

流夢薙から差し出された手に、ユウはしっかりとその手を重ねた。

そして、檻から出るとあたりを見回す。

同じような格子のついた部屋が並んでいる。

隣の部屋には、ごく最近まで人がいたような形跡まである。

「なーんか嫌な感じ」

そう呟いた流夢薙は、ユウの手を握ったまま前の道を進み始めた。



暗い廊下を二つの足音が響く。

流夢薙とユウ。二人は並んで何も無い道を歩いていた。

先ほどまで格子のついた部屋が並んでいたが、上に上がった途端に一本道になってしまった。そこからは何も無い。

人がいないため普通に歩いているが、もしも誰かが来たら二人が逃げた事はすぐ分かってしまうだろう。

「なんでみこさまはシエル達の所に助けに来てくれたの?」

「ん? そりゃあもちろん、用事があったから」

「ようじ?」

「そうそう。とっても大事な大人の用事。だからユウちゃんにはまだはやいかなー」

そう言いながらユウの頭を撫ぜ、子ども扱いをする。

一応、彼女はハーフエルフで在る為、見た目と年齢が合っていないのだが……あまり気にしていないようだ。

合ってないと言っても五、六歳ほどの誤差だからかもしれないが。

「それにしても、あいつら……私の知らない間にこんな場所作ってたなんて……」

「あいつら? みこさまはここを創った人の事を知ってるの?」

「知ってるも何も……。此処を作ったのは、ずっと遠い国で争いごとを起こしてる奴らだよ」

ここ、巫五の国の周りには国は無い。なら、その「遠い国」とはどこなのか。

神域で遮られた大陸のその向こうの国の事を指しているのだとユウが気づいた頃、目の前に扉が現れた。

「さてさて、蛇が出るか蛇がでるか……」

「蛇しか出てないよ」

「それはこれ、これはこれ。あんまりつっこむのはやめて!」

なにやらそんな事を楽しそうに会話し、流夢薙はふと息をはく。

一呼吸。

落ち着いた様子で、その扉にむかって――魔法を放った。

「えっ?!」

「強行突破あるのみ!」

閃光。そして爆風。

先ほどの檻を壊した時とは段違いの破壊力。

扉の向こうに誰かがいたのなら、間違いなく重症だ。

もちろん、流夢薙はそのためにここまで無駄に高威力で魔法をはなったのだが、それでも少しやりすぎだ。

建物全体が震えているのではないのかと思うほどの揺れが収まった後、流夢薙達の前に残ったのは黒くすすけた部屋と、そこに障壁を張ってどうにか魔法から逃れたらしい男だけだった。

その男は幸運だった。たまたま、異変に気づいて障壁を張ることが出来た。しかし……不運でもあった。

「さーて、ここはどこなのかな?」

光の集まる指先。それを眼前に向けられて脅される。

彼女の魔法の威力は先ほどの扉を壊すためだけの魔法で嫌と言うほど分かっている。

土色に変色した顔で、男は呟いた。

「し、知らな――」

その後のことを、男は知らない。




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