表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

遭遇と変異


シャラは、嗤っていた。

ルゥイ君を、指して、偽物と言って――


どういう、こと?


そもそも、なぜ神域を越えた国にシャラがいるのか、なぜルゥイ君を知っているのか、なぜ……。

なぜ、私は何も知らないの。

これまで、ずっとそうだ。

知らないからとずっと振り回されて来た。

「で、どうするのかしら?」

何も答えの無いこちらにしびれを切らしたのか、シャラが聞いて来る。

ユウちゃんが心配そうにこちらを見上げ、後ろに隠れる。

キースさんがちらりとルゥイ君を見て、シャラに応えようと――

「キサマっ、ふざけるなっ! 取り戻しに来た? お前が、何を取り戻すって言うんだっ!!」

――その声は、キースさんでは無かった。

ルゥイ君をシャラから隠すように立ちふさがる、ヴィランちゃんだった。

その顔には怒り――では無く、恐怖があった。

「ヴィラン、だめ、逃げてっ」

それに、ルゥイ君は慌てて止める。

ヴィランちゃんも、ルゥイ君も、シャラを知っているのだ。

巫五の国にいる二人がセレスティア王国に居るはずのシャラに会う事はありえない。

それなのに……。

私は何も知らないのだ。

それに今さら後悔しても、意味は無い。

あの時――シャラと別れたあの日に、戻れるのならどれだけ幸せか。

「一体全体、どういう事なんだろうね、これは」

呆れたように首を振り、キースさんはぶっきらぼうに言った。

「あんた、あの時の子だね。シエルのなんなんだい」

「あら、シエルは何も言って無かったのかしら? ワタシは、シエルの、おねえさまヨ」


くすり


くすくすくすくす


耳障りな笑い声。

何時からシャラはこんな笑いをするようになってしまったのだろう。

解らない。悔しい。

「シャラ……」

思わず、名前を呼んでいた。

もう戻れない過去が辛くて。

今と昔の違いを見せつけられるのが辛くて。

そこまで……そこまで憎かったの、シャラ?

裏切った私が、そこまで。

でも、今はそんな事を問うている時間は無かった。

無理やり感情を押し込んで、聞く。

「シャラ、どういう事なの? ルゥイ君が偽物って……」

なんだ、それも知らないの。

そんな、あざけりの笑いが一つ響いた。

「だって、ソレは、偽物だもの。偽物を偽物と言ってなにが悪いのかしら?」

「この子は偽物なんかじゃない! お前が、それを言うのかっ」

間髪いれず、ヴィランちゃんの叫ぶような否定の声が上がった。

「お前がそれを言うのか、ねぇ。それはこちらが言いたいわね、消えかけのカスが今さら何を言っても無駄でしょ? ソレに依存して、何をのたまうつもりなの?」

「五月蝿い煩いうるさいっ! お前がっ、言うなっ……」

くつくつと笑う声が聞こえる。

ヴィランちゃんの必死な様子を見て、嗤っているのだ。

「……シャラ」

こんなに、人は変わってしまうモノなの?

私は、彼女に会うために旅をしていたはずなのに。

謝る為に、どうすればいいのか考えるために旅をしていたはずなのに。

訳が分からなくなって来る。

いきなりすぎて、どうすればいいのか解らなかった。

言わなくちゃいけないことが沢山あったはずなのに。

言葉が、出てこない。

ルカ様の言葉を伝えたいのに。リア様との話をしたいのに。どうしてあんな馬鹿な事をしたのか問い詰めたいのに。

なにより、謝りたかったのに。


「まったく、しょうがないわネェ。返してくれないのなら、力ずくでも返してもらおうかしら」


眼の前に居るはずなのに、立っている場所が違う。

私にとってのシャラが、どんどん遠ざかっていく。

「やめてっ、シャラージュ!」

一歩足を踏み出した時、一陣の風が舞った。

「ふせてっ」

小柄なユウちゃんが、思いもしない力で押し倒す。

頭上で、風が唸った。

はらはらと散るのは、避けられなかった金髪の髪。

体勢を立て直した時見たのは、知らない青年だった。

「シャラ様、およびでしょうか?」

「えぇ、呼んだわ、プルート。そろそろあのカミサマ達に自分たちの犯した罪を思い出させてあげましょう」

「了解しました、麗しの姫君。貴方が望むのならば全てを賭けてでも」

おどけたように、まるで台本を読んでいるように。

最初から決まっていたセリフを読んだ彼は、どこから出したかも知れない剣を、こちらに向けていた。

さらに、その後ろには見覚えのある兵士たちが数十、待機していた。

「う、そ……なんで」

全て同じ容姿、同じ装備、まったく変わらない量産された兵器。

私にとっては知っている、見慣れてしまった兵士。でも、ここには居ないはずの存在だ。

何故なら、シャラと同様、神域の向こうにしかいないはずだから。

シャラの嫁いだ国、セレスティア王国で開発された物だから。

自動戦闘機兵(オートマタ)

そう呼ばれた、人の形をした魔科学兵器。

人ではないがゆえに戦場に駆り出され捨て駒にされる兵士たち。

生身の人間ではない有利さ、痛みを感じず主人の言うことだけを聞く機械という便利さから多用されている物。


最悪だ。


彼等の凶悪さは良く知っている。

完全に起動停止に追い込まない限り、彼等は止まらない。

さらに、正体不明の青年プルート。

彼はいったい誰なのか、実力のほどは、何も知らない相手だ。

わたし達は、彼等と完全に対立しようとして。


空から、それは舞い降りた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ