愚かな姉妹
「うそつきなかみさま。その嘘に踊らされるのは偽物のお人形。それでもきっと許してしまうのでしょうネ」
白の大理石が一面に広がっている。
あまりにも広すぎて、空虚な部屋。
そこに置かれた二つの玉座。
その一つに座っていた少女は、立ちあがって窓まで歩いていく。
黒の髪が揺れる。
その顔はシェルリーズと酷似をしていたが、その表情はあまりにもかけ離れていた。
諦めている様な、楽しんでいる様な空虚な笑み。
「その人形にはそのかみさましかいなかったから。いや、でもそれなら……」
その足取りは軽い。まるで、羽でも生えているかのように。
無邪気な子どものように早歩きになりながらも窓へ向かう。
整った顔にはどこか歪な、愉悦の笑みが浮かんでいた。
「それなら、もしもそのお人形が他に大切なモノを手に入れてしまったら……どうなるのかしら?」
少々音を立てて窓が開けられる。
彼女の背丈よりも巨大な窓だ。
開けられた窓から風が吹き込み、黒髪を宙に遊ばせる。
そこからバルコニーにでると、少女は身を乗り出した。
くす……くすくすくすくす
その口からこぼれるのは歪んだ笑い声。
聴く者を狂わす、沈んだ声。
「どこに行くのですか?」
いつの間にかその後ろにいた青年――プルートは少女に問う。
それに対し、彼女はさも当然そうに言うのだった。
「あら、プルート。それはもちろん、『私』の妹の所よ。丁度、あの場所の近くを通りかかったらしいのヨ。ちょうどいいじゃない。あの偽物の子も回収して、私の半身も帰ってきてもらいましょう?」
もう、あの忌々しい世界樹はいない。ティルクスノートの守護下から離れた。
もともと、『私』が見つけた大切な宝物なのだ。
それがなんでシエルの元にある。
許せない。
その感情はありえないはずのもの。
「ふふっ、シャラもそう思っているようよ?」
シャラージュは、笑いながらプルートに手を差し出した。
「さあ、イキマショウ?」
「えぇ。貴方の為ならば、なんでもいたしましょう。美しい黒の姫――『スフィラ』」
くすくす……
笑い声は木霊する。
シャラージュの姿をした神は嗤う。
自分に気づかない愚かな『妹』を。
自分に影響を与えているやはり愚かな『姉』を。
そして、愚かな神と精霊達を。
「さぁ、復讐は始まったばかり。私は人間達の願いを叶えてあげるだけ」
それは、突然のことだった。
続く旅の中で、変化の無い森の中で、現れたのは私の求めていた少女。そう、シャラで。
彼女は嗤って、酷く変わり果てた笑みを浮かべて、
「久しぶりね、シェルリーズ。残念だけど、今日はアナタに会いに来たわけじゃないの。そこにある偽物を取り戻しに来たの」
そう言って、ルゥイ君を指した。




