失ったもの
朝、目が覚めるとキースさんは戻ってきていた。
良かったと思う反面、声をかけづらい。
どこか、近寄りがたい雰囲気があったのだ。
あのあと、一体何があったのだろうか。
そう思っても、昨日の話を思い出して聞けない。
でも、私の考えがあっているのなら……もしかしたら。
結局、この町にこれ以上とどまることなく私たちは旅立つこととなった。
ふと、後ろを見る。
あの新しい町ははるか遠くに見えた。
キースさんは町を出てから一度も振り返っていない。
寂しくは無いのだろうか。
あの石像になってしまった男性は、キースさんにとってとても大切な人だったはずだ。
胸に痛みが走る。
忘れていたはずの、忘れようと無意識のうちに話題を避けていたはずの事が、蘇る。
「しえる、痛いかお、してる?」
袖が、ひかれた。
見ると、ルゥイ君が心配そうな顔でこちらを見上げていた。
いけないいけない。こんな小さい子に心配されてしまうなんて。
「大丈夫よ」
「ほんと?」
「えぇ」
ぱっと、ルゥイ君は花が綻ぶように笑顔を見せる。
可愛らしいなんて思っていると、なんとなく視線を感じる。
「ヴィラン、ちゃん? ど、どうしたの?」
それは、少し離れた場所に居る、ヴィランだった。
気のせいかもしれないけど、仇敵を見るような、怨敵を見るような目つきをしているような気がする。
いや、きっと気のせいに違いない。
「別になんだっていいでしょっ。うらやましいとか思ってるわけじゃないからっ!」
どうやら、怒らせてしまったようだ。
微笑ましいというか、なんと言うか、明らかに拗ねている。ルゥイ君を私に取られてしまったからかもしれない。
ヴィランちゃんは、本当にルゥイ君が大切なだろう。
ルゥイ君はヴィランちゃんが怒っている理由が解らなくて首をかしげている。
「二人は仲が良いよね、どうして?」
「ヴィランと? あのね、あのねっ、ヴィランは、ルゥイの友達だから、なの」
「そうなの?」
ヴィランちゃんに聞き返すと、そっぽを向かれてしまった。
元々私の事を良く思っていない様子だったのが、さっきので加速してしまったようだ。
「ヴィランはね、ルゥイを見つけてくれたの」
本当に、嬉しそうにルゥイ君は笑顔を見せた。
それに、ヴィランちゃんは顔色を変える。
「ルゥイ」
「ん?」
「……なんでもない」
首を振って否定する。
その姿は、どこか落ち込んでいるようで。
ころころとよくいろいろな顔をする子だ。
願わくば、この二人の関係がいつまでも続いて欲しい。
「シャラ……」
私は、失ってしまったけれど。




