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夜中の散策


その夜。

物音で目が覚めた。ような気がした。


なんだろう。


起き上っても、なにがあるのか最初はよく見えなかった。

周りが暗くて誰かがいるのかも見えない。

少しずつ目が慣れていくと、寝る前とあまり変わっていなかいようで。

たぶん、気のせいだろうと横になろうとして、隣にいたはずの人がいないのに気づいた。

ユウちゃんは布団にもぐっている。ヴィランとルゥイ君はすぐそこに二人で寝ている。でも、キースさんがいない。

「……キース、さん?」

どこに行ったのだろう。

そういえば、この町に来てから様子がおかしかった。

子ども達の寝顔に微笑ましさを感じ、起こさないようにと音を立てないように気をつけながら外へ向かった。


あたりは闇に包まれていた。

雲がでている。そこから時折顔を出す月の光が明るかった。

物静かな町中。

いったい、どこにキースさんは行ったのだろう。

宿の中にはいなかったけど……。

夜風に結んでいなかった髪がもてあそばれる。

「……むこう、かな」

あてずっぽうに、町の中心にあるという鐘楼の方角へと向かった。

でも、鐘楼へ向かった訳じゃない。そこを通り過ぎて、町のはずれへ。

そして、キースさんを見つけることに成功した。

人目をはばかることなく、キースさんは堂々と歩いていた。

夜中に散歩する人が少ないからだろう。

いったい、どこに行くのだろう。

ちょっとした好奇心から……私はキースさんの後を追うことにした。


町のはずれ、あまり大きくない細道。キースさんが行かなければ見逃してしまうような、わざと隠されたような その場所は町の外へと続いていた。

外に出ると、踏み固められた道が続いている。

この道は……わざと隠されているようにみえる。

この町が出来る前から知っているというキースさんはこの道を知っていて当然だろう。

けど、どこに向かっているのだろう。

進むうちに……()が見えてきた。

「――え?」

なんで?

その町に人はいない様子。

……夜だから居ない訳じゃない。人のいる気配が無い。

その町は、死んでいるようだった。

そして、町に入らせないようにとバリケードが築かれている。

そこでキースさんは立ち止まって、近くにあった抜け穴から中へと入って行った。

なぜ、抜け穴がそこにあることを知って?

そんな疑問を感じる。けど、たぶんキースさんはこの町がなぜ立ち入り禁止になっているのか知っているのだろう。

なぜ先ほどまでいた町が出来たのか、それはこの町に関係しているに違いない。

『この町が出来る前から知っている』、とは、こちらの町を知っていたという事なのかもしれない。

理由は解らないけどこの町に人が住めなくなって違う場所が必要になり、あの街が出来た。

だから、知っている……。

「シエル?」

と、たまたまキースさんが振り返る。

「はうっ、あ、そ、そのっ」

考え事をしていたせいで、姿を隠すのが遅れてしまった。

驚いた顔のキースさんは、バリケードの向こうで苦笑した。

怒ってないのだろうか。

その顔を見る限り、別に何とも思っていないようだ。

ただ、そう見せているだけかもしれない。

「なんだ、抜け出したのがばれたのか」

「そ、その……すみません」

「別に、気にする事じゃないよ。……むしろ、丁度いいのかもしれないね」

「……?」

ちょうどいい?

なんの事だろう。

キースさんが手招きをするので先ほどキースさんが通った抜け穴を通って町の中へ向かう。

一見しただけではわからないその抜け穴は、かなり狭かった。

「シエル、ちょっとだけ昔話をさせて欲しいんだ」

合流すると、キースさんは歩きだす。

少しだけ早歩きで、どこか急いているようだった。

それに少し小走りになりながら問いかけた。

「むかしばなし、ですか?」

前を行くキースさんの顔は見えない。

ただ、その声はあまりにも明るくて……。

「あぁ。とある……」


その昔話はきっと――


「人間に恋をした臆病な人魚の話さ」


――キースさんのお話し。




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