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どこかの異世界で

くすりのりすくのそのに

作者: 浮月重月
掲載日:2026/09/28

なんとなく「くすりのりすく」の続きが書きたくなったので。

あたしは所謂「魔女」である。真の名は他人に明かしてはいけない。


普段あたしはばあちゃんやかあちゃんから教わった魔法薬を作り、

それを露店で売って生計を立てている。高額だけど売れるのよ。


魔法薬は一般の薬と違って、病気や傷に効果がある訳ではない。

その代わり、服用者に一風変わった効果を齎(もたら)すものとなっている。

例えば「どんな不味いものでも美味しく食べられるようになる」、

「語尾が必ず『ですわ』と付くようになる」など意味不明のものだ。


教わった時は正直、作っても使う人いるのかいなと思ったんだけど、

世の中にはそういうものをピンポイントで探す人も結構多かった。

ちなみに「ですわ」薬は今までに十本以上売れている。

しかも全て違う人達にである。そして男性が圧倒的に多い。


何に使ったのか気にはなるが、興味を持てば何かに負けた気がする。


そういうのに比べれば、今回はかなりまともな部類だろう。

目の前のご婦人は「惚れ薬」と「媚薬」が欲しいのだそうな。


◆


なんでも、ご婦人には結婚して数年目の旦那様がいるそうだ。

しかし最近ごぶさ…げふんげふん、愛を営む回数が激減していると。

ここいらで一度どかんと溜め込んだものを吐き出しておきたい。

なので旦那様に一服盛ってやろう、とおっしゃておられます。

一応はお上品な言葉だったが。要約すればこんな感じだ。


あたしにとっては、というか魔女にとってはどちらも初歩の薬だ。

材料が揃えばよそ見しながらでも作れそうなものである。


しかし感情を左右するような魔法薬は使い方に注意が必要である。

間違った使い方をされると結構面倒な事になりかねない。


念には念を入れて、販売する前にご婦人へは丁寧に説明する。

「惚れ薬」は、飲んだ人が最初に見た相手に惚れる事を。

「媚薬」は、飲んだ人が見境なく異性を欲する事を。

故に使用する好機を間違えないように、と。

なにせ魔法薬はどれも効果がやたら強い。


しっかし、こう言っちゃなんだけどその旦那様おかしくないか?

ご婦人はぱっと見で二十代中盤、間違いなく美人の部類だろう。

すらりとしていながら出るところはきっちり主張しているし。


背が伸びたけど胸が慎ましやかなあたしと比べるのもアレだけど、

あたしが男性だったらこんな奥様一晩でも放っておかないぞ?

浮気とかもあるかもだが、これ以上の美人ってそういないと思う。


もしかして男性の一部機能に問題が生じてしまったとか、

あるいは女性に興味が持てなくなって同性に突っ走ったとか?


…いや、人様のご家庭の問題を邪推するのはやめておこう。

あたしは注文された魔法薬を、使い方の説明して売るだけだ。


◆


ある朝、露店を出す前に借りている部屋で新聞を読んで仰天した。

領主夫人が領主様を腹上死に追いやってしまったと。


ここの領主様は七十過ぎの御方だが、夫人は後妻で初婚だった。

普通はいやいや嫁がされたのかと考えるが、実は夫人のベタ惚れ。

幼少時からの憧れで、二十年越しの恋を実らせたんだそうな。


前領主夫人が亡くなったと同時に猛攻を仕掛けて後妻に入り、

成人した孫までいる相手に日夜求め続けていたらしい。

…カマキリかジョロウグモみたいな女性だ。


最近は年齢ゆえ落ち着いていたはずが、数日前から状況は一変し、

食事も摂らずに三日間休憩なしに励んだ挙句の惨劇だったと。

いやお年寄りに対して何やってんのよ…。


あのご婦人は名乗らなかったし、新聞にも姿絵は載っていないけど、

間違いなく魔法薬を買っていった相手はこれだろう。

そりゃ愛も営めませんわ。しかもぶっ通しとか。


あたしはただ魔法薬を売っただけだし、罪に問われないはずだけど。

さすがに気まずいので今からこの町を後にする。


今度からは使用する相手の年齢も聞かないとなー…。

ご婦人は「惚れ薬」と「媚薬」をブレンドして旦那様に投与。

混ぜるなめちゃくちゃ危険。

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