体育祭
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうなな。
いつもより少し強い風が吹いている。
校門沿いに植えられた桜はきっと靡いている事だろう。
緑の青々とした葉を揺らしながら、久しぶりの青空を満喫しているんだろうか。
「……」
薄い雲が空を覆う。灰色ではない、白い雲。
水色の背景に、白い色鉛筆でうっすらと塗った程度の、薄くて白い雲。
昨日までは雨が降ったり止んだりしていたのに、それが嘘のように晴れている。
……まぁ、雨が降って延期にでもなったりしたら面倒なので今日しっかりと開催できてよかったとは思う。
「……」
しかし視界の端にある空には、巨大な雲が浮かんでいる。
モンブランみたい……なんて可愛いことは思わないが、あの雲が大雨に変わらないことを願う。日差しを遮るくらいでいい、雲は。
「……」
目の前では2年生が学年競技が始まろうとしている。
入場門で準備をしているのは1年生から3年生までで次の競技に出る人たち。
……体育祭当日の今日だ。
「……」
日差しこそさほどないものの、暑いものは暑い。
今はテントの下にもいないので、尚更暑い。
写真部としての仕事をしないといけないもので……。
「……」
少し離れた位置に1年生の部員が座っている。
少し前までは色々と会話をしていたが、もう始まるので位置についた。
今はそれぞれカメラの設定をいじりなおしたりしているところだ。
「……」
一応、さっきいじっておいたが始まる前に確認しておこう。
……帽子をかぶらないといけないのも分かるが、この状態で写真を撮るのはまぁ、面倒。つばが当たるし暑いし。なんというか……。
カメラを構えたせいで浮いた帽子をかぶり直しながら周りを見渡す。
「……」
トラックを挟み、テントが並んでいる。
学年ごとに固まっているため、今、2年生のテントは空っぽである。
もう既にばらけ始めている椅子が並び、その上に水筒やらタオルやら置かれている。
他の学年のテントも、これも案外、人が居ない。次の競技の準備だったり、係だったりがあるから仕方ないのだけど。
3年生は比較的いる方かな。
「……」
ちなみに、目の前には、あの子のクラスのテントがある。
そしてまぁ、当然、そこにいるんだけど。
ポニーテールを揺らしながら、ニコニコと笑って、ひらひらと手を振っている。何かいいことでもあったんだろうか。可愛いな。
「……ちょっとあっち側行くね」
「あ、はい」
1年生に声を掛け、トラックを挟んだ位置にあるテントに向かう。
まだ始まりそうにないので、少しはいいだろう。
それにこの競技は走ったりするわけではない。始まってすぐ移動すればいいだろうし、何ならこちら側から撮ったっていい。
「暑いねぇ」
「ね」
テントについて早々。
そんな会話が始まる。
私は体裁を保つために、一応地面にしゃがんでおく。
隣には椅子に座って、前かがみになって言うあの子。
「暑いしか言えない」
「ほんとにそれ」
なんともまぁ、頭の弱そうな会話である。しかし実際そうなので勘弁してほしい。暑くて脳みそが溶けそうなのだ。その上、どこかジメジメともしているのだ。
ただ暑いだけじゃないあたりに、自然の悪意を感じる。
「この後何だっけ」
「この後は~」
答えながら1枚の紙をどこかから取り出す。
なんとなく分かってはいるのだけど。
「……あぁそれかぁ」
「それも撮るの?」
「ん~、」
一応、担当が決まってはいるが、準備はしていた方がいい感じだろうな。
確か、2年生が担当だが、終わってすぐというのも難しいだろう。顧問も酷なことをする。
「まぁ、一応、ここからでも撮っとくかな」
「じゃぁ、あとで水筒もってきなよ」
「うん」
時間が許す限りは、ここに居させてもらうとしよう。
「あ」
いよいよ、2年生の競技が始まる。
お題:桜・色鉛筆・モンブラン




