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プロローグ 人違いに遭うだけの体質


 瞼を開く。視界内には満天の星空が見える。

 背にした草原も相まって、そのシチュエーションに幻想的な思いに耽る。


「あれ、お前もしかして……」


 ふと、声をかけられた。

 俺は思わず空を睨みつけ、続く言葉を遮り、言いなれた言葉を冷たい口調で口にする。

 

「いえ、人違いです」


「そ、そうか? だってその髪色も瞳の形もあの時と同じーー」


「いえ、俺は空谷です。人違いです」


 口調を強めて、否定する。

 

 なんだってこの俺、空谷(そらたに) 新居吾(にいご)の風体に似ているやつがいるんだ。


 上向き寝癖のように跳ねた髪は白く、下向きの髪は黒く、二つの瞳は雌雄眼。左右に一重と二重で違う。

 襟は常に片方が立ってしまい、裾は反対の片方が出てしまうこの俺の姿が。

 

「そ、そうか……? な、なら悪い……」


「いいんですよ。いつものことですんで」

 

 目を合わせずにその人を待つも、待てもしない喧騒が俺の耳元で響き渡る。


「あっはははぁっ! まただなニーゴ! また間違えられてらっ! まっじで面白ぇ!」


「うっせーやい……」


「俺もなんなら間違えてやろうか! 初めて会った時みたいに!」


「ざっけんなぶっ飛ばすぞテメェッ! 倉本、テメェが初見で女と間違えたの、まだ根に持ってんだからなッ!?」


「でもマジで似てるんだって! ……本当はお前が女装してたんじゃないか?」


「は? 気色悪いこと言わないでくれます? 吐くぞここで? 声にして吐くぞ!?」


「うおおい! やめてやめて! 私もらい吐きしちゃうから!」


「わかったわかった、悪かったって笹下」


「俺にはッ!? 俺への謝罪はッ!?」


「あるか、んなもん」


「んなもんって言ったかッ!? おおッ!?」


「おーい、大郷さんもう待てないんだけど」


「話切り出したお前が飽きんなよッ!?」


 ……本当に騒がしい連中だ。

 だが、楽しい。俺も含めて、大人しさを感じさせない四人衆だ。


 俺の特異体質も笑い話に変えてくれる。

 こうしてはしゃいで済ませてくれるほど、彼らは優しい。


 昔は勘違いが争いに変わり、関係性の溝を大量に作ってしまい、忌み嫌ったこの体質。

 今では仲間同士との話の種になり、笑い合えている。


「さて、もうそろそろ始めますか」


「そうだな。今度は上手く行くといいけどなぁ」


 そんな俺たちが今からするのは、とある掲示板に書かれた、オカルトチックな移動手段。


『異世界に行ってきたんだけど、質問ある?』

 

 という掲示板書かれた異世界転移への手段をこれから試すのだ。


「メモあるか?」


「あるよー、ちゃんと五芒星入りの魔法陣も書いたし」


「文字は書き漏れてないな?」


「あるある。イセカイ、イカセテだろ? ちゃんと二行の文にしてカタカナで真ん中で書いたぜ?」


「頭の上に置いてるな?」


「置いてんよー! グラグラで今にも落ちそうだけどねぇー!」


 大郷の確認に、全員が間違いないと答える。

 その反応に、「うし!」と頷くと、


「おし! 行くぞ、みんなおやすみ! 良い夢見て、望んだ異世界で落ち合おう!」


 と、掛け声を合図に、瞼を閉じた。

 行けると信じる、異世界を思い浮かべて。

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