29話
増田 来佳美
私はとんでもないタイミングで、高梨君に告白されたみたいだ。高梨君の目はキラキラと輝いている。マジだ。高梨君はマジで私に告白している。
「増田さんの事がずっと好きだったんだ。だから、俺と付き合って!一緒にこの世界で生きよう!」
「そうよ!雄介にお似合いのべっぴんさんよ!増田さん!」
「高梨君⋯君は⋯。」
「うん!」
「君は馬鹿なの?」
紛れもない、私の心の底から出た言葉だった。この親子はどうかしてる。この親子の存在こそ、フィクションだろ!
「馬鹿?なんで?」
「告白なんて受ける訳ないじゃん!こんな事して!みんなを傷つけて!私にまでこんな⋯暴力まで振るって!何考えてるのっ!?」
そう叫ぶと、高梨君が私の髪の毛を鷲掴みにした。イタタタっ!
「だから俺達は⋯もうキスしてるんだよ?覚えてない?」
虫酸が走る。本当にっ!
「だから、そんな事してないっ!」
「したんだよっ!母さん直伝の暗示を掛けて!俺と増田さんはチューしたの!あっはっはっはっ!」
「もう雄介ったら!」
こいつもだけど、母親もやばい!
「お母さん!オタクの息子さんどうかしてます!何で怒らないんですか!?」
私は至極真っ当なツッコミをしてしまった。
「どうかしてるのは増田さんよ!?雄介カッコいいでしょ?イケメンでしょ?」
「そういう問題じゃないでしょ!失礼ですけど!雄介君のお父様と代わってもらっていいですかあ!?」
私は大声で嫌味を言ってやった。あれ?なんか顔が怖い。あっ、もしかして地雷踏んじゃった?
「あの人のっ⋯!話しを⋯しないでっ!」
高梨マザーが凄い怖い顔をしている。むっちゃ怖い!人ってこんな顔を出来るの?ってくらい怖い。目とかどうなってんの!?口そんなに大きかった!?
「か、母さん落ち着いて!」
ははーん、分かったぞ。来佳美ちゃんは分かってしまったぞ。もうどうにでもなれ!
「分かったぞ!旦那に逃げられたんだろ!それで人のせいにして!世の中のせいにして!逆恨みしてんだろっ!現実逃避ってやつですかい!?まさにフィクションだー!って?いやいやいや!どう考えてもあんたの性格がヤバいのが原因でしょうが!笑わせないでよ!ふざけんなバーカ!」
はあ、スッキリした。言いたいことを全部言ってやったぞ。あ、これはヤバいな。高梨マザーが宙に浮き始めた。すげーホントに浮いてるわ。なんか両手をワナワナ動かしてる。何か⋯ビームでも出す気?
「殺すっ!この小娘はっ!殺すっ!」
「母さん待って!」
「私の事は、マザーとお呼び!」
「マザー!」
何だそのやり取り!
で、何かが起こった!図書室がまたさらに壊れて、私はいきなり何メートルかぶっ飛ばされた。凄まじい衝撃!爆音と爆風!辺り一面また白煙でモクモクだ!何が起こったのかサッパリ分からない!
私の頭上で、大きな何かが動いている。むちゃくちゃ大きい何か。煙が晴れてきた。
ぎゃあああああああああっ!黒い巨人が目の前にいる!多分、あの巨大特撮ヒーローくらいの大きさをしている巨人は、四つん這いみたいなボーズを取っている。巨人の手が目の前にあって、その近くに高梨マザーの首(だと思う。グロくてあんまり見れない。)が転がっている。うげええっ!
急にここに現れたのか、巨人がここに近付いていた事に、私達が気が付かなかったのかは分からない。ただ多分⋯多分だよ?巨人はコケたのだ。で、その拍子に手をついて、高梨マザーとその他黒服達を、手でぺしゃんこに押し潰してしまったのだ。
ガラガラと音を立てながら、巨人が立ち上がる。私はその存在に圧倒されて、ただその場で固まるしかなかった。気のせいかな、巨人が私の方を見下ろした気がした。
「ありがとう。」
私は、何となく巨人にお礼を言っといた。巨人はズシーンズシーンと、また向こうの方へと歩いて行った。
「うわああああ〜母さ⋯マザーっ!」
何処からともなく高梨君が現れて、高梨マザーの首にすがりついた。
「そ、そんな!そんなぁぁぁっ!マザーがいないと!俺は何も出来ないっ!どうしよう!どうしようぅぅぅぅぅっ!」
高梨君が無様に泣き喚いている。
「増田さんっ!どうしよう!マザーがっ!マザーがぁぁっ!」
「高梨君って、マザコンなんだね。」
「違、違うっ!マザコンじゃ!マザコンじゃないっ!!!」
何処からともなく人影が現れた。
「まっすー。」
制服がボロボロになったあやちゃんだ!
「あやちゃん!無事だったの!?」
「無事じゃねーよ。無事だけど。」
私は痛みを堪えて、ダッシュした。思いっ切り、あやちゃんに抱き着く。
「大丈夫!?高梨君に、乱暴されたって⋯!」
「ああ⋯大丈夫。あいつクソ下手だったから。最後までしてないよ。中折れしやがった。マジウケる。」
「てか、よく無事だったね。校舎こんなにボロボロなのに。」
「何か⋯無事だったわ。でも⋯私⋯色々失い過ぎじゃない?」
あやちゃんが目に涙を溜めている。
「私も忘れんな。」
声がした方向から誰かが現れた。しのっちだ!
「しのっち!」
「しのぴー!」
私とあやちゃんがしのっちに駆け寄る。
「しのっち!何処にいたのよ!心配したんだよ!」
「しのぴー無事だったんだ!良かった。」
「よく覚えてない。けど多分⋯。」
「多分?」
「何処かの教室の⋯教壇の下にずっと座ってた。」
「こわっ。」
「何でそんな所に。」
「⋯分かんない。」
「でも⋯だから先生達からの襲撃にも無事だったのか。ついてたね。」
「何か⋯全部思い出したわ。私、おかしかったでしょ?」
「うん、おかしかった。明らかに。」
「そっか。もう大丈夫。ごめん。」
「しのっちは悪くないよ。」
私達は、母親の生首に抱き着くマザコン野郎の事を睨見つけた。
「よう。」
「うわっ、びっくりした!中川君!」
中川君が板倉さんに肩を借りながらこちらに歩いて来た。中川君は怪我をしているみたいで、頭から血を流している。
「大丈夫!?」
「怪我してるけど、歩けてるから何とか大丈夫⋯だと思う。一瞬、死んだかと思ったよ。ちょっとだけ気を失ってたみたいだし。」
「板倉さんも!大丈夫?」
「大丈夫。ありがとう。」
中川君と板倉さんが、お互いの事を見つめ合っている。あれ、何かいい感じ?
「これからどうする?」
「多分⋯全部⋯すぐに収まると思う。」
「そうなの来佳美?」
「まっすー、何でそう言い切れるの?」
私は高梨君を見下ろした。
「死んだもん。元凶が。」
「元凶?そんなのいたの?」
「高梨君のお母さん。」
「「「「はいっ!?」」」」
「いや⋯あの⋯そのっ⋯。」
高梨君がたじろいている。私は皆に説明した。かくかくしかじかでー。
「マジ!?」
「ゴミじゃん!」
「高梨お前⋯。」
「何それ⋯。」
皆が驚愕している。そりゃそうだ。高梨君はゆっくりと立ち上がった。多分だけど、高梨君はお母さんがいないと、何にも出来ない。絶対にそう。私、分かる。
でも、高梨君の言う通りかも。この世界はフィクションの世界。例えばそうだなー⋯小説とか。だから私も皆も、小説の主要登場人物ってところ。私は、もしかしたら主人公⋯だったりして。
だって皆、ほんっとうに最高の友達だもん。これが私達の物語で、小説で、フィクションの世界だから、主要登場人物の私達は運良く助かったんじゃないかな。
そんな風に思ったら、これってなんか、ハチャメチャな映画みたいじゃない?
私の恋は、とんでもない理由で終わったけどな!




