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21話

畠中はたなか 彩菜あやな



何だ今の校内放送は!?


軽音部の部室で菊池ちゃんとダラダラしていて、さて練習でもしますかと、私のデカいケツを椅子から持ち上げだ瞬間だった。謎の校内放送が一瞬だけ流れた。女の子の悲鳴みたいなやつ。


「何今の⋯?」


「分かんない。イタズラ?」


びっくりして、思わず菊池ちゃんと顔を見合う。すると、いきなり部室の扉が開いた。


「びっくりした!何だよやめてよ!」


やっぱり予想通り、慎太郎だった。


「ヤバいって!」


「何が?」


「いいからこっち!」


慎太郎に言われて、菊池ちゃんと廊下に出てみる。慎太郎に指示されて、窓から中庭を覗いてみた。えっ、何あれ。名前は分かんないけど、先生2人が何人かの生徒達を襲ってる。文字通りの意味で。女の先生は、長い定規みたいな物を持っていて、女子生徒相手に振り回している。あ、顔に当たった!ヤバいでしょ!


男の先生は、走って生徒達を追い回している。その内の1人を捕まえると、まるでゾンビみたいにその生徒の顔を引っ掛いたり、噛み付いたりしている。中庭は叫び声で溢れていた。


「何あれ⋯どういう事!?」


「分かんねぇーよ!とにかくヤバくね?」


「先生達が皆を襲ってる⋯。」


3人で衝撃を受けていると、廊下の向こう側から、階段を誰かが駆け上がる音が聞こえてきた。私達は思わず、そっちの方向を見た。誰かが立っている。あ、滅多に部室には来ない、軽音部名ばかり顧問の長谷川先生だ。長谷川先生は口を大きく開けて、仁王立ちしている。


「長谷川先生⋯何してんのあれ。」


私がそう言った瞬間、長谷川先生がダッシュしてきた!コワっ!何なの!?


「ぶるあああああああああああああっ!」


しかも、何か意味分かんない叫び声を上げている!


「ちょっと先生⋯!」


慎太郎は何か言いかけたけど、長谷川先生は最後まで聞かず、慎太郎に蹴りをかました。ドロップキックってやつだ。慎太郎は吹っ飛んで、数メートル飛ばされた。


「慎ちゃん!」


驚きすぎて、思わず2人切りの時にしか呼ばない言い方で呼んでしまった。長谷川先生は、すぐ近くにいた菊池ちゃんに襲い掛かった!


「きゃあっ!」


「菊池ちゃん!」


長谷川先生は菊池ちゃんを凄い力で床に投げ飛ばした。そしてそのまま菊池ちゃんに馬乗りになって、首を絞め始めた!コワいコワいコワい!どうしたらいいの!?私はコワくて動けなくなってしまった。


「何やってんだよぉっ!」


慎太郎が長谷川先生の背中にドロップキックをやり返した。長谷川先生は前転するみたいに廊下に転がった。


「大丈夫菊池ちゃん!?」


「けほっ⋯死ぬかと思った⋯。」


「何やってんすか長谷川先生っ!」


「お前⋯達⋯。」


長谷川先生の低い声が廊下に響く。


「下手クソなんだよぉぉぉぁぁぁぁぁぁっ!」


なんてこと言うんだこの人!長谷川先生はそう叫ぶと、また私達に向かって突進してきた!


「うらぁ!」


私達の後ろから、いきなり堀之内君が現れて、長谷川先生にタックルした!


「慎太郎っ!」


「おおっ!」


堀之内君に呼ばれて、慎太郎も長谷川先生に飛び掛かる。2人がかりで長谷川先生に抱き着くけど、長谷川先生はそれでも暴れて、2人の背中をボコボコ殴りつけている。慎太郎がふんっと声を出すと、長谷川先生のバランスが一瞬崩れた。堀之内君が一気に体重を掛けて、長谷川先生を地面に倒した。


「うらあぁぁっ!」


慎太郎と堀之内君が長谷川先生の両腕を押さえつけ、2人で馬乗りみたいになる。長谷川先生は何かよく分かんないけど、ガウガウ叫んでいる!


「どうする!?この後どうする堀之内!?」


「分かんねぇよ!」


「たあーっ!」


菊池ちゃんはそう叫ぶと、いきなり長谷川先生に近付いて、先生の顔面を踏み付けた。マジ!?


「何やってんだ菊池!?」


「だって!殺されかけたんですよ!?」


菊池ちゃんが興奮している。長谷川先生は鼻血が出て来た。そりゃそうだ。


「取り敢えずお前達は逃げろ!」


「逃げろって何処に!?」


「いいから早く!」


「でも⋯。」


「彩っ!」


慎太郎にそう言われた私は、菊池ちゃんと一緒に走り出した。廊下を曲がって、階段を降りて、すぐ下の1階に向かおうとする。


「待って菊池ちゃん!1階って危ないかな?中庭⋯。」


「そ、そうじゃん!どうしよう⋯。」


「と、取り敢えず3階に行こう!映研メンバーとかは絶対にいるはずだから。」


「分かっ⋯きゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!」


大きく地面が揺れた!地震だ!あまりのグラつきに、私と菊池ちゃんは地面に伏せた。揺れはすぐに収まったけど、今の震度、ヤバいと思う。


「⋯地震。」


「なんちゅうタイミング⋯。」


「大丈夫?彩。」


「大丈夫!さあ、行こう。」


私達はすぐに立ち上がって、階段を駆け上がった。廊下に出ると、向こうの方で人集りが出来ている。あれは映研メンバーだ。走って近付くと、男子が1人倒れていて、皆が彼の首元を押さえたり、声を掛けたりしている。血がすごい!何があったの!?大丈夫なの!?


「あの!まっすーとかは!?」


「そこの⋯きょ、教室にいます!」


彼女は確か⋯尾崎さん。怖がってる。そりゃそうだ。私と菊池ちゃんは、ダッシュしてすぐそこの教室に入った。ドアが外れて、教室の方へ倒れてしまっている。中にはまっすー、高梨君、中川君、泉屋君、あとカメラを回している峯岸君がいた。窓ガラスが割れてる所があるし、よく見たら泉屋君が唇から血を流している。やっぱり、ここでも何かあったんだ!


「まっすー!」


「あやちゃん⋯!」


「まっすー、大丈⋯。」


えっ、何あれ。窓の向こう側。街の方に何か見える。ん?ん?は?何あれ。黒い人が歩いている。人って言っても、あのサイズ感は巨人だよ、巨人。何メートルあるのか想像がつかない。


「何あれ。」


「分かんない。」


私達は全員、窓の向こうの巨人に釘付けになった。現実とは思えない、まさに映画みたいな光景が広がっている。あと、こうして皆で静かにしていると、色んな所から叫び声が上がっているのが分かる。


「どうするの?」


私が皆に尋ねると、皆はやっと現実に引き戻されたような顔をした。


「学校から出るべきか?」


「そうだな。」


「でも、中庭で先生が暴れてたよ。」


「校庭でも暴れてる先生がいるし⋯。」


「そうだった。」


「3階にもいるの!今、慎太郎が闘ってる。」


「大丈夫なの!?」


「分かんないよ!逃げろって言われたから⋯!」


「学校が危険って事か。」


「でもあの巨人みたいなの見ろよ!学校の外もヤバいんじゃねーのか!?」


「その可能性はある。」


「救急の電話が繋がらないんだ。外の方がヤバいかもしれない。」


「だとしたら学校にいた方が安全?」


「いや、先生達が暴走してるなら安全じゃないでしょ!」


「だからって、ずっとこの教室にいる訳にもいかないだろ!」


「てか、この人何ずっとカメラ回してんの!?」


「それはほっといてくれ、畠中。」


私達はとにかく全員で教室を出て、尾崎さん達の所に戻った。首を怪我しているらしい男子生徒が苦痛の表情を浮かべている。大変だよこれ⋯。


「ごがあああああああああああああああああ!」


廊下の向こう側から、また誰かが叫び声を上げながらこっちに向かって来た!今度は全部で⋯5人!?先生達が押し寄せて来る!


「駄目だ!逃げろっ!逃げろっっ!!」


泉屋君が叫んだ。私達は先生達とは真逆の方向へ走り出した!もう逃げるしかない!


「いやぁぁぁぁぁっ!」


まさに女子みたいな声を出しながら、私は走る。


「うぅっ!」


「まっすー!」


そうだ!まっすーは足を怪我してるんだ!


「増田乗れっ!」


「中川君っ!」


「早く!」


中川君がまっすーをおんぶする。先生達は、すぐそこまで迫って来た!


「逃げろぉぉっ!」


走り出す!無我夢中だ!コワい!コワすぎる!後ろを振り返ると、尾崎さんや怪我をした男子生徒達に先生達が襲い掛かっている。まるで、ゾンビ映画みたいに。とても見ている暇なんか無かった。私達はとにかく走って、階段に辿り着く。だけど⋯。


「慎ちゃん!助けにいかないと!」


「あやちゃん!」


「私、また3階見てくる!」


「山崎先輩に逃げろって言われたじゃん!」


「だからって置いていけないでしょ!?菊池ちゃんは皆といって!」


「でも!」


「いいからっ!」






私は皆と別れて階段を掛け上がった。廊下に出て、先程の場所に戻る。いない⋯いない⋯いない!慎ちゃんと堀之内君と長谷川先生がいないっ!


私はゆっくりと歩いてそこまで近付いた。すると、部室から物音が聞こえてきた。嫌な予感がして、鳥肌が立った。私は僅かに開いているドアから、部室の中を除きこんだ。


長谷川先生と、もう2人他の先生がいる。そして先生達は、食べていた。慎ちゃんと堀之内君の事を。堀之内君は腕とか足が千切れていて、首元を食べられている。慎ちゃんは長谷川先生にお腹を食べられていて⋯内臓が⋯そんな⋯私⋯わたし⋯ああ⋯ああああああああっ⋯!


体がガクガクと震え、後退りする。慎ちゃん慎ちゃん慎ちゃん!慎ちゃんが⋯慎ちゃんが⋯!


私の目から大粒の涙がボロボロと溢れてきた。駄目だ。叫びそう⋯倒れそう⋯でも、今音を立てたら⋯。


そう思った瞬間、腕を掴まれ、口を手で塞がれた。横に目線をやると、知った顔があった。高梨君だった。高梨君はジェスチャーをして、私を誘導し始めた。私達は階段を降りず、適当な教室に入った。高梨君がゆっくりとドアを閉め、私と2人で教壇の裏に隠れるように、教室の隅の方でしゃがみこんだ。


「大丈夫?畠中さん。」


「慎ちゃんが⋯堀之内君が⋯。」


私から涙が止まらない。信じられない。だって、さっきまで⋯慎ちゃん⋯!


「声を出さないように⋯。」


「うっ⋯ううっ⋯。」


私は何とか自分を抑える。高梨君が来てくれていなかったら、きっと私も襲われていたかもしれない。


「⋯辛いね。ごめん、何て言えばいいのか。」


「⋯何が⋯何が起きてるの?」


「畠中さん⋯。」


「これは何?現実?現実なの?高梨君。」


「現実だよ。残念ながら。」


「⋯ありがとう、来てくれて。」


「さすがに畠中さんを1人には出来なかった。こっちに来て正解だったよ。」


「本当にありがとう。」


「いいんだ。少し⋯ここでじっとしてよう。」


私達は少しの間黙った。頭の中が混乱する。慎ちゃんが死んじゃった。堀之内君も。『To The Sky』に行っちゃった⋯。私の頭の中が馬鹿になる。色んな感情が押し寄せて来て⋯で、何故か分かんないけど、言葉が出た。


「⋯高梨君。」


「ん?」


「さっきの話⋯。」


「さっきの話?」


「しのぴーの話。」


「今、その話するの?」


私は今混乱してる。何を話してるのか、自分でもよく分かっていない。


「何でしのぴーは、あんな事言ったの?」


「⋯分からない。」


「本当に?」


「分からない。」


「私、しのぴーと仲良いんだ。」


「知ってるよ。」


「しのぴーは、嘘をつくような子じゃない。」


そう。それが私の本心だった。


「そんなの⋯分からないじゃないか。」


高梨君が、私の事をじっと見てきた。


「その人がどんな人かだなんて、誰も分からない。良い人そうに見えて悪い人もいる、悪そうな人に見えて良い人もいる。それが人間だよ。」


「キスしたんじゃないの?しのぴーに。」


「畠中さん。」


「しのぴーは高梨君の事が好きなんだよ。」


ごめん、しのぴー。言っちゃった。


「だから、高梨君の事を下げるような嘘をつくはずないよ。」


「じゃあ、俺が嘘ついてるって言いたいんだね?」


「⋯そういう訳じゃ。」


「せっかく助けに来たのに。」


高梨君にそう言われて、私は急に彼の事がコワくなった。


「ご、ごめん。」


「酷いね、畠中さん。」


「だから⋯ごめん。」


「キスしたよ。」


「えっ。」


「だからキスしたよ。篠宮さんに。」


「⋯本当なの?」


「うん。」


「じゃ、じゃあやっぱり⋯。」


「ごめん、嘘を付いた。」


「高梨君⋯。」


「でも正確に言うとキスじゃない。」


「じゃ、じゃあ何?」


「口移しだよ。」


足音が聞こえる。誰かが近付いて来た。ガラッと教室の後ろのドアが開いて、血だらけの先生が3人入って来た。先頭には長谷川先生が立っている。完全に私と高梨君の存在に気が付いている。


「いやぁっ!」


私と高梨君は反射的に立ち上がった。その血は慎ちゃんと⋯堀之内君の⋯。


「よくここが分かったな。」


「高梨君⋯。」


高梨君はやけに冷静に見える。3人の先生達は立ったまま体を揺らしている。何もしてこない。何で?


「畠中さん。大丈夫。彼らは襲ってはこないよ。」


「⋯ど、どうして?」


次の瞬間、私の顔に衝撃が走った。何が起きたのか分からない。私は床に倒れこんだ。


「いてて。人を殴るのって難しいね。」


「たっ⋯高梨君?」


高梨君はそう言うと、私に馬乗りになった。


「何してるの!?」


そう言うと、高梨君が長谷川先生達の事を見た。3人が一気に近付いてきて、私と高梨君を取り囲んだ。


「いやぁぁぁぁっ!」


「大丈夫。何もしてこないよ。」


「高梨君⋯何なのこれ⋯?」


「畠中さん。結論から言うと、この国はまもなく終わります。」


「何を言ってるの?」


「だから終わるんだよ。終わるの、文字通り。さっきの巨人とか見たでしょ?ここからじゃ見えないか。」


高梨君が、私の知ってる高梨君じゃなくなってる気がする。


「なんか、ウザいなあと思って、畠中さん。」


そう言いながら、高梨君は私の腕を押さえつけた。


「セックスしよう、畠中さん。そういう気分なんだ。」


「⋯何言ってるの?」


「だからセックスだよ。セックス。性行為。」


「高梨君。」


「俺は本気だよ。どうせ終わるんだ。畠中さんは彼氏がいたから、処女じゃないでしょ?今は経験者の方が色々と楽だから。」


私はまた涙が溢れてきた。


「いい?抵抗したら先生達が畠中さんの事、引き裂いちゃうからね?だから言う通りに。分かった?さ、取り敢えず制服を脱いでくれるかな?」

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