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僕の休日 その1

 ゴーレム戦でコロシアムの一部が破壊されたため第三試合が中止になった翌日。


 僕は、机の上に積まれた金貨を見ていた。


 ――15枚。


「すげぇ……」


 思わず声が漏れる。


 こんな金、見たこともない。


「だから言っただろ」


 おっさんが笑う。


「勝つ側に乗れば、こうなる」


 コロシアムで俺が勝つことに賭けていたらしい。

 その分け前が、これだ。


「これ全部、僕のか……?」


「取り分だな」


 その瞬間。


 嬉しさが一気に込み上げてきた。


「やった! やったぞ!!」


 思わず飛び跳ねる。


 手の中の金貨が、じゃらじゃらと音を立てる。


 ――その時だった。


「おいジョン」


 マクダフが声をかけてくる。


「その持ち方、やめとけ」


「え?」


「金貨ってのはな、“枚数が多いほど損する”」


「……損?」


 聞き返すと、マクダフはため息をついた。


「旦那ぁ……分かってない…まだ分かってないね」


 呆れたような口調。


「この町、ギャンブルの町ですぜ旦那ぁ……数えるだけでも手数料かかる」


「えっ、そうなのか!?」


「当たり前ですよ旦那ぁ。だからみんなまとめるんですぜ」


 そう言って、俺の手の中の金貨を指で弾く。


「ほら見ろ。バラバラだと管理もできねぇ」

「あんな銀行にも預けたくはないでしょう旦那ぁ……」


「う、うん……」


 確かに、数えるのも大変そうだ。

 こんな大金は持ち歩きたくもないが、大金を銀行に預けたとしてもまたお金を盗られてしまう。


「しかも子供がそんなに持って歩いてみろ」


 声を落とす。


「確実に狙われる」


「……!」


 思わず周りを見回す。


「いいか、金は“見せない・分ける・預ける”が基本だ」


 やけに説得力があった。


「ここは御主人様の奴隷である俺がまとめますよ」


 自然な流れで言う。


「端数は俺が持っときます。どうせまた使うだろ」


「端数……?」


「ここでは金貨…5枚ですね。細かいのは回しづらいしバラバラになってるほら」


 即答だった。


 迷いがない。


「それに――」


 マクダフは少しだけ笑う。


「旦那ぁ……あればあるだけ一気に使うタイプでしょ……?」


「……」


 否定できなかった。


「だったら持たない方がいいですよ旦那ぁ…みたいな人は」


 完全に正論に聞こえた。


「必要な時に俺が出してますよ。子供が大金を持っているより安全ですぜ」


「……そっか」


 自然と、そう口にしていた。


 言われるままに、金貨を渡す。


 5枚。


 ほんの少し減っただけのはずなのに――


 なぜか、かなり整理された気がした。

 金貨十五枚を一気には持てないけど10枚程度であれば持てるしまとまってるし、枚数もわかりやすい。


「よし」


 マクダフは満足そうにうなずく。


「これで無駄が減りましたぜ旦那ぁ……」


 そしてそのまま、何事もなかったように懐に入れた。


「じゃ、俺は行ってきます。」


 軽く手を振る。


 向かう先は、言わなくても分かる。


 ギャンブル施設だ。


(……ちゃんとしてるんだな、マクダフ)


 なぜか、そんな感想が浮かんだ。


(あれ…なんか……、まあ、いいか……)


 まだ10枚もある。

 10枚だ。


 それだけで、十分すごい。


「じゃあ、僕も今日は好きにしていいんだよね」


「今日は休みだジョン。ゆっくりしてくれ」


 おっさんはそれだけ言ってどこかへ行ってしまった。


 完全に自由だ。


 ――急に暇になった。


 とりあえず、持ち物を整理することにした。


 袋の中には、使わなくなった物が山ほどある。


 蛇肉のステーキを作るために狩りまくってそのままだった腐りかけた蛇肉。

 ボロボロになった壊れかけの木剣。


「これ、どうするんだ……?」


 町の処分場を思い出す。


「お金がかかる」


 ――そう言っていた。


(……もったいないな)


 少し考えて、すぐに答えが出た。


(バレなきゃいいんだ)


 町の中で処分してもらうとお金がかかってしまう。

 でも町の外ならタダだ。


 僕はさっそく町の外へ向かった。


 人気のない森の中まで、一人でやってきた。


「ここなら……」


 誰もいない。


 見られていない。


 袋を開ける。


 腐った臭いが、一気に広がった。


「うっ……くさ……」


 顔をしかめながら、蛇肉を地面に放る。


 ぐちゃり、と嫌な音。


 木剣は遠くのほうへ投げ捨てた。


「よし……これで終わりだ」


 お金もかからない。


 怒られもしない。


 完璧だ。


 そう思った。


 ――その時。


 ガサッ


 背後で、音がした。


「……?」


 振り返る。


 森の奥、何かが動いた気がする。


 だが、よく分からない。


「気のせいか……?」


 少しだけ不安になりながらも、その場を離れた。


 数時間後。


 森の様子は、明らかに変わっていた。


 腐肉に群がる影。


 一体、二体ではない。


 ゴブリン。


 さらに別の魔物も集まってくる。


 普段より、明らかに多い。


「魔物の数が異常だ!」

「周辺を調査しろ!」


 竜騎士団が動き出していた。


 だが――


「ほらっ!ケムトレイルの影響だろ!」

「やっぱりなっ!上空散布が原因だ!」

「竜騎士団反対!竜騎士団反対!」


 原因は、別の方向へと向かっていく。


 本当の原因は。


 森に捨てられた腐肉だ。


 だが、誰も気づかない。


 もちろん――僕も知らなかった。


 その頃。


 森の中。


 一体のゴブリンが、壊れかけた木剣と新品の木剣を拾い上げていた。


 それは、さっき捨てられたもの。


 握る。


 振る。


 ぎこちないが、確かに“使っている”。


 武器として。


 その光景を、少し離れた場所から見ている影があった。


 ジョンだ。


「……あれ?」


 思わず声が出る。


 見覚えのある木剣だ。


 間違いない。


 自分が捨てたものだ。


 それを――ゴブリンが使っている。


「なんで……」


 ただ拾っただけじゃない。


 構えている。


 狙っている。


「……」


 背筋に、少しだけ寒気が走った。


 懐に、違和感。


 じん、と。


 触ってみると懐の中の指輪が、わずかに熱を帯びていた。

ステータスのスキル一覧と所持金とアイテム袋内アイテム

武器スキル類

刀剣スキル 18

盾スキル 3

戦闘技術スキル 11

生産スキル類

料理スキル 13

その他

鑑定スキル 0.3


所持金

2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚) ???のスクロール6枚 武器破損した剣 ???の指輪(バンステ金策で入手) ゴブリン(テイム)


装備品 

水トカゲの手袋(呪)骨護札の首かざり 

奴隷のマクダフ

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