表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/38

おっさんと僕とマクダフ ポーシャの町で その1

騒ぎは、あれだけ激しかったのに、引く時はあっさりだった。


竜騎士団反対だの、ケムトレイルだのと叫んでいた村人たちは、いつの間にか散り散りになり、門の前には何事もなかったかのような空気が戻っていた。


「……終わりかよ」


御者が呆れたように呟く。


「こんなもんだ」


おっさんは興味なさそうに言った。


「騒ぐだけ騒いで、気が済めば解散だ」


門の兵士たちは疲れた顔をしていたが、検問自体はすぐに再開され、僕たちの馬車もようやく中へと通された。


門をくぐった瞬間、空気が変わった。


「うわ……」


思わず声が出る。


町の名前は――ポーシャ。


僕がこれまでいたアーデンより、明らかに大きい。


道幅も広く、人の数も多い。

露店だけでなく、しっかりとした建物の店が並び、看板の数も桁違いだった。


「すごい……」


「田舎から来た子どもみてぇな反応してんな」


マクダフが笑う。


「う、うるさいよ……!」


でも実際、その通りだった。


さらに目立つのは――兵士の数だ。


王国の紋章をつけた兵士たちがあちこちに立ち、巡回している。

その中には、明らかに装備の違う者たちもいた。


「あれが竜騎士団だ」


おっさんが顎で示す。


重厚な鎧に、どこか異質な気配。

普通の兵士とは明らかに違う。


「……さっきの人たち、あれに文句言ってたんだよね」


「そうだな」


「でも、なんか……強そうだね」


「強いぞ」


短い答えだった。


しばらく進むと、さらに賑やかな一角に出た。


音が違う。


笑い声、怒号、歓声、ため息――

いろんな感情が混ざった音が、建物の中から溢れている。


「……なんだここ」


マクダフがにやりとする。


「来ましたぜ旦那ぁ」


おっさんも少しだけ口元を上げた。


「ここだ」


建物の看板には、大きく装飾された文字が刻まれていた。


王国最大のギャンブル施設――その小規模支店バッサーニオ。


アーデンにはなかった類の場所だ。


「ギャンブル施設……?」


僕は思わずつぶやく。


「ここで金策するの?」


「そうだ」


「え、でも……運じゃないの?」


おっさんは首を振る。


「“運だけ”の場所なんてねぇよ」


マクダフが続ける。


「むしろ逆ですぜ旦那ぁ……ここは“仕組み”を知ってる奴が勝つ場所だ」


中から歓声が上がる。


「当たったぁ!!」


その直後、別の場所では怒鳴り声。


「ふざけるな!全部持ってかれたぞ!!」


僕はごくりと喉を鳴らした。


さっきの銀行とは、また違う――

でも同じくらい“危ない匂い”がする場所だった。


「ジョン」


おっさんが静かに言う。


「次はここで稼ぐ」


僕はもう一度、その建物を見上げた。


(……また、新しいやり方か)


さっきの“バンステ金策”のことが頭をよぎる。


思ったより簡単だった。

そして――思ったより、あっさり慣れそうだった。


「……うん」


気づけば、迷いはあまりなかった。


「やるよ」


マクダフが笑う。


「いいですなぁ旦那ぁ……どんどん染まってきてますぜ」


おっさんは何も言わず、先に歩き出した。


僕たちは、そのままギャンブル施設の中へと足を踏み入れた。




ギャンブル施設の奥へ進むと、空気が一変した。


熱気と、獣の臭い。

そして――歓声。


「いけぇぇぇ!! 噛み砕け!!」

「押し切れ! 押し切れ!!」

「外れだクソがぁぁ!!」


円形の巨大な闘技場。

その中央で、魔物同士がぶつかり合っていた。


「……これが」


僕は思わず息をのむ。


「モンスターコロシアムだ」


おっさんが答える。


檻の中で戦う魔物。

それを囲む観客。

そして、その勝敗に金を賭ける連中。


アーデンでは見たこともない光景だった。


「ここではな」


おっさんが低く言う。


「冒険者や、金持ちが抱えてるテイマーが魔物を戦わせる」


マクダフが続ける。


「勝てば大金。負ければすっからかん……分かりやすい世界ですぜ」


「じゃあ……僕たちも?」


「出る」


即答だった。


「一攫千金を狙うぞ。」


僕は闘技場を見つめる。


(……すごい)


単純に、そう思った。


でも同時に、違和感もあった。


「……あれ?」


一方的すぎる試合が目に入る。


片方の魔物が、明らかに動きがおかしい。

避けられるはずの攻撃を受け、反撃も遅い。


観客は気づいていないのか、それとも気にしていないのか――ただ騒いでいる。


「気づいたか」


おっさんが言う。


「え?」


「“出来てる”」


「……なにが?」


マクダフがニヤリと笑った。


「勝ち負けですぜ」


一瞬、意味が分からなかった。


「え……?」


「八百長だ」


おっさんが淡々と言う。


「ほとんどの試合は、最初から決まってる」


「……え?」


僕はもう一度、闘技場を見る。


さっきの魔物。

たしかに、わざと負けているようにも見える。


「でも……なんで?」


「金だ」


即答だった。


「仕組みを知ってる奴だけが勝つ」


マクダフが肩をすくめる。


「知らない奴は、ただの養分ですなぁ」


観客席からまた歓声が上がる。


誰かが大当たりしたのか、飛び跳ねている。


その横で、別の誰かが頭を抱えていた。


僕は小さくつぶやく。


「……じゃあ、勝てるってこと?」


おっさんが少しだけ笑った。


「やり方次第だな」


「どうするの?」


「まずは駒がいる」


「駒……?」


「魔物だ」


マクダフが言う。


「旦那ぁの魔物を用意しないと、そもそも舞台に上がれませんからね」


おっさんが続ける。


「だから――捕まえに行く」


僕は目を丸くする。


「え、僕が?」


「他に誰がいる」


「でも……僕、まだそんな強い魔物とか――」


「強さはいらねぇ」


おっさんははっきり言った。


「“使えるかどうか”だ」


その言い方が、少し引っかかった。


「……さっきの八百長と関係あるの?」


マクダフが笑う。


「勘がいいですなぁ旦那ぁ……」


おっさんは短く言う。


「勝ち負けが決まってるなら――」


一瞬、間。


「そこをズラせばいい」


「ズラす……?」


「決まってる流れを、崩す」


その言葉の意味は、まだ完全には分からなかった。


でも――


なんとなく、嫌な予感がした。


闘技場では、また一匹の魔物が倒れた。


歓声が上がる。


でも僕には、それがただの“戦い”には見えなくなっていた。


「……ねぇ」


僕は小さく聞く。


「これってさ……」


おっさんが先に答えた。


「ジョン次の金策はこれだ。」


それだけだった。


僕たちは、そのままコロシアムを後にする。


次の目的は――


魔物を捕まえること。


そして――


決められた勝敗を、壊すことだった。

ステータスのスキル一覧と所持金とアイテム袋内アイテム

武器スキル類

刀剣スキル 18

盾スキル 3

戦闘技術スキル 11

生産スキル類

料理スキル 13

その他

鑑定スキル 0.3


所持金

671g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚) 蛇肉たくさん ???のスクロール6枚 武器破損した剣 木剣2本 ???の指輪(バンステ金策で入手)


装備品 

水トカゲの手袋(呪)骨護札の首かざり 

奴隷のマクダフ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ