僕とバンステドロップ金策 その2
「いらっしゃいませ… 本日はどのようなご用件でしょうか?」
「い、今すぐにこの装備とアイテムを預けたい… いい、今すぐにだ… 」
どうやらすごく急いでいる人のようだ。これはチャンスかもしれない。まだ自分の順番ではないのに一人の大人の人が騒いでいる。
どんな装備やアイテムを銀行に預けたいのか僕には分からないけどこの人ならもしかしたら床に装備品を落とすことはないかもしれないが、アイテムであれば落とす可能性がある。
姿は消せるが、動いたら即ポーションの効果は切れるしにおいは消せないようだ。
僕の飲んだ逆さまポーションの効果も1小瓶目が切れそうだ。
ポーションの効果が切れたらすぐに姿が透明ではなくなり周りのみんなにバレてします。そうなった場合はどうすればいいのかおっさんに聞いたところ、ただあわてずすぐに二本目を飲めと言われた。姿が見えた子どもがまた消えるのだ僕はバレるだろうと思ったが、意外とみんな銀行のカウンター下は見ておらずむしろ子どもがこんな場所にすわってずっと待機していると考えるほうがおかしいのだといわれた。
銀行の中は思った以上にこんざつしてきた。
冒険者や商人さんたちが列を作り、自分の預け入れる番を待っている状態だ。
僕の心臓の音がやけに大きく感じる。誰にも聞かれていないことをいのる。
もし失敗したらどうなるのだろうか、子どもだから間違えたで許してもらえるだろうか。
僕はずっとこのバンステドロップ金策の練習を朝から晩までしてきたのだ。僕なら余裕だ。
チャンスは一回のみ。成功しても失敗してもこの一回が勝負なのだ。
「は、はやくしてくれ… こここ、これだけは持って移動したくないんだ頼む… 」
「お客様、少々お待ちください。お客様の順番になりましたら、こちらでお客様の預け入れ品を確認しましてから、当中立共栄大金庫にてしっかりとお預かりいたしますので。」
この人だ。この人しかチャンスはなさそうに僕は思える。
あわてて僕は二本目の逆さまポーションの小瓶を飲んだ。一瞬並んでいる奥の人と目が合った気もするが、たぶん大丈夫だろう。あわてていたため変な姿勢での透明姿になってしまった。この姿勢での透明になってずっと待機する練習はしていない。早くしなくてはならない。チャンスは一度しかないのにこれはまずい。
ようやく僕が狙っていたあの人の番になった。
あわてていた大人の人は銀行のカウンターに装備品とアイテムを置いた。
よし。第一条件はクリアだ。
「こ、これだ。これを預けたい。いいい、急いでくれ… 」
「はい、ありがとうございます。ではこちらでまずお預けする装備アイテム3点と消耗品アイテム4点のご確認をいたしますので少々お待ちください。」
「そ、そうだ。ここ、これらを預けたいと言ってるだろ!!はは、はやくしろ!!」
銀行カウンターを手で思いっきり叩いたようだ。ドンという音と手の装備品と銀行カウンターの当たる音が銀行内に響いた。
落ちろ!落ちろ!落ちろ!
僕は願うしかない。心の中で何度もそう思った。
カツン。カラン、カラン。
みんな音が大きいほうへ顔を向けている。ここにいるみんなが見ているのは、もめている人とその人を対応している銀行の人だ。
今だ。今しかない。ここしかない。これしかない。
僕は迷わなかった。多分、銀行カウンターから床に落ちたモノの音と一瞬みえた形からして硬貨ではなさそうだ。装備品だとしても小さすぎているめ武器の類ではないだろう。ではアイテムだろうか。こんな小さな音のするアイテムはあっただろうか、いっしょうけんめい思い出す。僕の冒険者をやっていたまだ少ない期間の出来事すべてを思い出す。
わからない。結局この銀行のカウンターから床に落ちモノの正体を結局僕は一瞬で判断することはできなかった。でも確かに、床に落ちたのは事実だ。それも銀行のカウンターに一度置かれたモノが落ちたのは間違いないだろう。
僕は気が付いたら変な姿勢からすぐに動いて、体が前へ出ていた。カウンターから床に置いたモンはゆっくりと床から一度弾んで床を転げまわっている。少し落下した場所から動いてゆっくりとカラン、カランという音を発しながら動かなくなっていく。
それが何かなんて僕にはわからなかった。確認しているひまなどなかった。
急いで拾う。とにかくつかんだ。もう手を開くことはない。
小さな指輪のようなモノだ。真ん中に穴が開いていたから指輪のようなモノだと僕は思った。後で確認すればいいだろう。今はそんなことを確認しているひまも僕には余裕もない。
そして、ダッシュする。すごい速さで銀行を飛び出るために走る。何度も何度も練習した最後の場面だ。
後ろで誰かが何かを言っていた気がしたが、僕にはだれが何を言っていたかわからなかった。
ここで止まってはだめなのだ。ちょっと走っただけなのに息切れがひどい。だがとても興奮状態であることにも気づいた。今の状態であれば今まで狩ることができなかった魔物であっても僕は狩れるかもしれないと思うほどだ。
僕が入ってきた銀行の出口が目の前に見える。あと少しだ。あと少し。頼む。
誰も僕が銀行から出ていくのを止める人はいなかった。
銀行からでてすぐに曲がって銀行の横の路地に入る。路地に入った瞬間に、頭の中で何度も何度も練習したランダム転移スクロールを取り出しす。
「ランダム転移スクロール発動!!」
スクロールが光る。急いでその光ったランダム転移スクロールを破って発動させる。
発動して僕が転移する前に僕を追いかけてきて銀行横の裏路地にやってきた人と目が合った。
一瞬だが僕が消える前に僕と目が合ったと思う人はあの急いでいた人だった。目は血走り、まともに呼吸ができているのか心配するほどの見た目だったとハッキリと僕は一瞬であったが覚えている。
「お、おおお、おいいい、そそ、そそそれは… 」
ここまであの人の声が聞こえてから場面が切り替わったように感じた。
視界がゆがんで体が引き裂かれるような感覚が僕を襲った。
僕は初めてランダム転移スクロールを使ってみたが、こんな感じで転移することができるのか。
初めて使ったからだろうか僕は気持ちが悪くなりその場で吐いた。息がとてもあらくなっている。
急いで転移した場所を確認する。
僕が転移した場所は町の西に位置する西門を出て少し行った場所だった。
ここは、おっさんと初めて会ってドブネズミ狩りをした場所の付近だろうか。
知らない場所に転移したらどうしようかと思ったが、これについては僕は運がよかったようだ。
おっさんやマクダフとは北門から出て少し行った場所で待ち合わせとなっている。
北門から出て続く道の先に次に行く必要性がある場所があるようだ。僕は北門からは出たことがなかったため、詳しくは知らない。
この西門が遠くのほうで見える場所から自分のいる地点を確認する。
歩いて北門の待ち合わせの場所までは少し時間がかかるが向かえそうだ。
走って待ち合わせ場所に向かう。息が切れて続かないが僕は走った。もうそんなこと今はどうでもよかったのだ。まだ興奮状態が続いている。この興奮状態は一生続くのではないかと思えたほどだ。
また、頭の中にあの人の顔と声がひびいてくる。だめだ、考えるな。考えるな。
走っていると頭の中がゆっくりとだがクリアになっていった。少しずつだが僕でも考えられるくらいには興奮状態から抜けていっていた。
こんなものが金策と言えるのだろうか。確かに、銀行から持ち出すことはできた。ルート権は誰のものでもないというのはおっさんの言った通りだった。今、銀行や町の中ではどうなっているのだろうか。何事もなかったかのようにいつも通りの日常が進んでいるのだろうか。
走ったり、歩いたりして十数分ほどかかったが、やっと待ち合わせ場所についた。すでにおっさんとマクダフはその場で僕を待っていた。
「旦那ぁ… 遅いですぜ。さぁこんな場所さっさと行きましょうよ。待ってますぜ。トリポリオの旦那と旦那の活躍を世界が!」
「よぉ、なまくさジョ~ン… その顔色を見たら上手くいったようだな。さぁ乗り合い馬車がそろそろここを通るころだ。乗せてのらうぞ。話は乗ってからだ」
ここから先がおっさんと僕と奴隷のマクダフとのすごい冒険の始まりだった。
ステータスのスキル一覧と所持金とアイテム袋内アイテム
武器スキル類
刀剣スキル 18
盾スキル 3
戦闘技術スキル 11
生産スキル類
料理スキル 13
その他
鑑定スキル 0.3
所持金
671g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚) 蛇肉たくさん ???のスクロール6枚 武器破損した剣 木剣2本 ???のモノ
装備品
水トカゲの手袋(呪)骨護札の首かざり
奴隷のマクダフ




