096 注目の的
明けて次の日。三連休も終わり、授業が始まったのだが、オレは注目の的になっていた。
「ほら、あいつじゃないか?」
「ほう? 一年生なのに大したものだ」
今もすれ違った上級生がオレを見ていたような気がする。
なんでも、『嘆きの地下墳墓』のソロ攻略自体はそう珍しくもないが、それを学園に入ったばかりの一年生が成し遂げたというのが珍しいらしい。
「すっげー見られてるな。よ! 有名人!」
「すごいんだな!」
「ああ……」
エロワとポールの二人は喜んでくれるが、前世でもあまり注目されることのなかったオレとしては、ちょっと恥ずかしいようなむず痒い気持ちだ。
まぁ、これもそのうち慣れるだろう。
「アベル」
「シャルリーヌ?」
声に振り向けば、シャルリーヌがいつものようにアリソンとブリジットを引き連れて立っていた。
「昨日も言ったけど、ソロ攻略本当におめでとう。一人で攻略しちゃうなんてすごいわ」
「ありがとう」
シャルリーヌのキラキラした瞳で見つめられると、オレの心は舞い上がりそうだよ。
「それでね。マルゲリット様が、アベルと話してみたいと仰せよ」
「マルゲリット殿下が?」
シャルリーヌは、マルゲリットのいわゆるお友だちってやつだ。普段は主にクラスメイトとマルゲリットの仲介のようなことをしている。それでオレを呼びに来たのだろう。
「わかった。行くよ」
「じゃあ、付いて来て」
「ああ」
シャルリーヌに付いて行くと、マルゲリットがニッコリとした笑顔で迎えてくれる。
オレはすかさずその場に跪くと、頭を垂れた。
「アベル・ヴィアラット、お呼びと伺い只今参上いたしました」
オレとしてはかっこよく決めたつもりなのだが、なんだかマルゲリットからは困ったような気配を感じる。
なんでだ?
「アベル、今は正式な場でもありませんし、わたくしたちは同じクラスメイト。以後この教室でそのような礼は不要ですよ」
「もったいないお言葉です」
マルゲリットに許しを貰ったオレは、すくっと立ち上がる。
「シャルリーヌより聞きました。アベルは『嘆きの地下墳墓』をたった一人で攻略したようですね。おめでとうございます。さすがアベルですね」
「ありがとうございます、マルゲリット殿下。お褒めに与り恐悦至極に存じます」
「お兄さまもいたく感心しておいででしたよ」
マルゲリットの兄ということは、あのフェルディナンだろう。フェルディナンも感心していたのか。それはいいことを聞いたな。
オレはべつに貴族としての栄達はあまり求めていないが、やっぱり権力者の印象はいいものにしておきたいからね。ただ強いだけでは生きていけない。人間って面倒な生き物だね。
「わたくしも先日『嘆きの地下墳墓』に潜ったので、それを一人で攻略することがどれだけすごいことなのかわかるつもりです。挑戦する勇気だけでも素晴らしいのに、まさか攻略してしまうだなんて。さすがはあのガストン・ヴィアラットの息子だとお兄さまもおっしゃっていました」
「ありがとうございます!」
オレは必至にポーカーフェイスをしているつもりだけど、オレが父上を尊敬していることなんてマルゲリットたち王族には筒抜けなんだろうな。まるでオレがどう言ったら一番喜ぶのか熟知しているみたいだ。
そう。オレはヴィアラットの家名を背負ってこの場にいる。オレの些細な言動一つで、みんなのヴィアラットへの評価も決まるのだ。たしかに緊張するが、心の鍛錬にはもってこいだね。
「やはりお父上に手ほどきを受けたのですか?」
「はい。父上は天才肌というか、人に教えるのはあまり上手くないのかもしれませんが、それでも、父上との訓練で得たものはたくさんあります」
父上は、武に優れるという辺境の貴族の中でも最強の男だ。オレは今までかなり贅沢な環境にいたんだなと実感する。
強者と直接剣を合わせる機会はそれだけ貴重なのだ。
「ご家族の方と良い関係を築けているようですね」
「はい!」
父上も母上も、オレの誇りだ。
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