088 紹介状
思えば、ゲームの主人公は無限に近い量のアイテムを持ち運んでいた。ゲームだからそれは当たり前だと思っていたし、この世界ではそれは不可能だと思い込んでいた。
だが今、その常識が覆ろうとしている。
マジックバッグ。ゲームでは登場しなかったアイテムだが、中には大きな屋敷が丸ごと入るようなマジックバッグも存在するらしい。まったく非常識なアイテムだね。ムラムラするなぁ。
マジックバッグがあれば、今まで諦めていたダンジョンの攻略が可能になるかもしれない。少なくとも、物資面で不安を覚えるような状態からは解放されるだろう。
もしかしたら、ゲームの主人公もマジックバッグを持っていたのかもな。
欲しい。オレは今、強烈にマジックバッグが欲しい……!
是が非でも入手しなくては!
「そのマジックバッグってどこで手に入るんだ?」
「あらッ!?」
オレはバルバラに肩を掴むような勢いで質問した。
オレに気迫に圧されたのか、バルバラは一歩だけ下がると、すぐに柔和な笑顔を浮かべて口を開く。
「この王都には、ダンジョンで見つかる不思議な力を持った道具、宝具の専門店がございますよ。そこでならきっと見つかるはずです。よろしければ、私の贔屓にしているお店をご紹介いたしましょうか?」
「ぜひ頼む!」
宝具か……。たしかにゲームでは火を噴く剣とか、ダメージの一部を反射する盾とか、不思議な力を持ったアイテムがたくさん登場した。
それこそ一昨日の『嘆きの地下墳墓』攻略でジゼルが手に入れたナックルダスター、ワイトズネイルも攻撃した相手を確率で麻痺状態にする不思議なアイテムだった。
宝具というのは、それらのアイテムの総称だろうか?
「あら、あら、あら! では、すぐに紹介状を準備いたしますわ。御前、失礼いたします」
そう言うと、バルバラは優雅に回れ右をして店に戻っていく。きっと紹介状を書いてくれるのだろう。
紹介状を持っていると、もしかしたら安く買えるのだろうか?
まぁ、なんにせよ助かるな。
「アベルはマジックバッグが欲しいのかしら?」
「うん! マジックバッグがあれば、もしかしたらオレの夢が叶うかもしれないんだ!」
オレはシャルリーヌに力強く頷く。
今まで諦めていたダンジョンの踏破。それが叶うかもしれない。
「でも、マジックバッグはとても高価と聞くわ。お金は大丈夫なの?」
「……どうだろう……?」
一応、初デートで失敗したくないし、何があるかわからないので、今日は全財産持ってきた。それこそ、テオドールから根こそぎ受け取ったお金も持ってきてる。
テオドールは、さすがに腐っても辺境伯の嫡子なのでかなりの額を持っていた。だが、マジックバッグは王都でも富豪で知られるブラシェール伯爵家の娘がとても高価というくらい高いらしい。
まぁ、そうだよね。こんなヤバいアイテムが安いわけがない。
なんだか不安になってきたな……。絶対欲しいのだけど、買えるかな?
「お待たせいたしました。こちらが紹介状になります。店の者にお渡しください」
「ありがとう!」
オレはバルバラの用意してくれた紹介状を受け取ると、シャルリーヌと共に馬車に乗り込んだ。
馬車に乗り込むと、さっそくシャルリーヌが口を開く。
「次はアベルの行きたい所に行きましょう」
「え? いいの?」
今はシャルリーヌとデート中だ。だから、バルバラの紹介してくれたお店にはまた日を改めて行こうと思ったんだけど……。
「いいのよ。わたくしは、アベルにこの王都を好きになってもらいたいの。だから、アベルの行きたい所がわたくしの行きたい所よ。それに、わたくしも宝具には興味があるもの。ちょうどよかったわ」
そう言ってちょっとぎこちなくウインクをするシャルリーヌ。
でも、オレは知っている。出発前に、シャルリーヌが今日のデートコースを一生懸命考えてくれたことを。
「ありがとう、シャルリーヌ。オレはキミが婚約者でよかった」
オレはしばらく考えたが、シャルリーヌの提案に乗ることにした。
シャルリーヌがせっかく提案してくれたからね。
それに、やっぱりマジックバッグは今すぐにでも欲しい。
紳士を目指すなら、やっぱり断るべきなのだろう。だが、紳士と最強のどちらかしかなれないとするなら、オレが選ぶのはもちろん最強なのだ。
幼い頃に立てた誓いに嘘はない。
まぁ、できれば最強かつ紳士になりたいんだけど、紳士の道は遠いっすね、師匠。
「ッ!?」
シャルリーヌは息を吞むような音を立てると、少し顔を赤らめてもじもじと体を動かしていた。
トイレかな?
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