073 『嘆きの地下墳墓』④
「ちょっとアベル! 早く立ちなさいよ!」
ジゼルがオレを庇うように残り二体のゾンビと向き合っていた。
立たなくちゃいけないことはわかっている。オレだってすぐにでも立ちたい。
だが、オレの体は痺れて上手く力が入らず、もぞもぞと動くことしかできなかった。
なんだこれ?
何が起こってるんだ?
「アベル、麻痺治しを使うんだ!」
フェルディナンの麻痺治しという言葉で思い出した。『嘆きの地下墳墓』のゾンビの攻撃を受けると、確率でバットステータス麻痺になることを。
これが麻痺なのか。どおりで体が思い通りに動かないわけだ。
初めてのことだったので、オレが麻痺に侵されているなど考え付かなかった。
だが、仕組みがわかれば問題ない。
「ナオ、パラいず」
その瞬間、オレの体を緑の光が包み込み、光が晴れた時には、オレは自由に体を動かせるようになっていた。
「しゃっ!」
気合いを入れて立ち上がると、オレは残る二体のゾンビに向かって駆け出す。
「バーニングブレイド!」
片手剣の第三のスキル、バーニングブレード。火属性の斬撃ダメージを喰らわせるスキルだ。
オレの持つ片手剣に炎が渦巻き、ゾンビを真っ二つに切り裂いた。
ジュワッと蒸発するような音が響き、腐った肉の焦げたような臭いがした。
これであと一体。
「コンボ!」
振り返ると、ジゼルが果敢にゾンビに殴りかかっていた。
ゾンビの腐った肉が弾け、腐肉と汚らしい汁がジゼルを汚していく。ジゼルの顔には嫌悪感が強く出ていて、本当に気の毒になる。
だが、その甲斐あってか、ジゼルはゾンビを倒すことに成功した。
ゾンビを倒すとボフンッと白い煙になって消え、ジゼルを汚していた肉片や汚汁も白い煙となって消えた。
そのことにホッとしているジゼル。
「ジゼル、助かった。ありがとう」
「どういたしまして。あなたはお貴族様でもちゃんとお礼言えるのね」
ジゼルが意外なものを見るような顔でオレを見ていた。なんだか心外だな。
「オレは助けられたらちゃんと礼くらい言うぞ?」
「そう? お貴族様の男の子ってお礼言えないんだと思ってた」
なんだかうちのクラスにもジゼルたちを平民と見下すやつがいるみたいで悲しくなるよ。
「……礼というわけではないが、なにか困ったことがあったらオレを頼るといい。力になってやる」
「そう? なんだか大袈裟ね。頼むことがあったらよろしく頼むわ」
「ああ」
ジゼルと話していると、後ろからフェルディナンたちがやって来た。
「アベル、ジゼル、よくやった」
「あの、フェルディナン殿下、さっきから戦っているのがオレとジゼルだけなのですが……?」
手を貸してくれてもよかったんじゃない?
それが無理でも、せめて麻痺に関して注意喚起してほしかったところだ。
そんな思いを込めてフェルディナンを見つめると、フェルディナンが苦笑して口を開く。
「すまんな。我々二年生、三年生は、極力手を出さないことが通例になっている。できる限り、一年生で攻略したまえ」
「できればアドバイスくらいはいただきたいのですが……」
暗に麻痺を注意するくらい教えてよと言うと、フェルディナンが首を横に振って答える。
「ダンジョンに入るのは一週間も前に決まっていたことだろう? なぜその間に情報収集をしていない?」
「それは……」
痛いところを突かれたな。たしかにその通りなのだが……そんな厳しくしなくてもよくない?
「私は指示を出すが、攻略の経験を積むのはあくまで一年生だ。積極的に取り組みたまえ。反省は次回に活かせばいい」
「はい……」
ということは、また上級生の援護なくゾンビと戦う羽目になるのか……。
そのことに思い至ったのか、ジゼルも嫌そうな顔をしていた。
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